羽田空港は国際線と国内線で駅名やとうの名前を分けている。

 今回は国内線という事もあり翠は国内線側のビルのマップを最初に調べようとしたのだが、資料を読んだ結果、マップの情報は早々そうそう破棄ほうきした。


 今回の荷物は余程よほどの警戒を必要とするらしく特別便で発着場すら通常のものを使用しない事になっていた。

 そんな訳で封筒ふうとうに入っていたUSBに保存されていたマップ情報を頼りに朱夏あやかが事務所でバックアップ、みどりが現場でフロントを担当する。


「こちら翡翠騎士ひすいきし、運送は予定通りだよな?」

『こちら焼鏝やきごて、計画は順調みたいよ』


 翠はスマホで周囲から浮かない一般的な単語で会話をし、朱夏はイヤホンマイクから具体的な単語で情報共有を図っている。

 空港ビル内の休憩コーナーでテイクアウトのサンドイッチとコーヒーを片手に時間調整をしている客の偽装ぎそうも欠かさない。という建前たてまえで経費なのでちょっと高めの食事を楽しんでいる。朱夏から不公平だと抗議こうぎが上がっているので一応の土産みやげは買ってある。


……居候いそうろうなのに物怖ものおじしない嬢ちゃんだ。


 サンドイッチをコーヒーで流し込みながらそんな事を考えている間にフライトの時間が近づいて来た。

 要人ようじん用の特別な離着陸場りちゃくりくじょうを使う為、普通の空港ビル内では警備が難しい。今回は依頼人が用意した社員証を使って搭乗口近くのフロアへ侵入が可能だ。


 翠は適当に仕事場へ向かって歩いているフリをしながら搭乗口へ向かう。

 護衛の四鬼しきらしい武器を持った黒服の者たちがり他のスタッフと同様にチラチラとめずらに四鬼へ視線を向ける。


『観察する理由が有るって楽ね』

「そろそろ現場だ」


 ガラス張りの搭乗口から既に着陸した飛行機は見えている。

 現状で翠や四鬼にも妨害者ぼうがいしゃの姿は確認できていない。四鬼の権限けんげんでは犯罪の実行前でも多少の兆候ちょうこうを確認すれば実力行使が許されている。そんな四鬼たちがまだ周囲を観察しながら談笑だんしょうしているという事は妨害者は確認されていないのだ。


 基本的に現場ではペア行動の四鬼だ、武器を持った黒服のペアなど空港では非常に目立つ。

 適当に歩き回る翠は6ペアの四鬼を確認した。


「結構大変だ」

『事前情報通りよ』

報酬ほうしゅうが良い仕事ってどうしてこうなのかねぇ」

『報酬が良いからでしょう』


 正論で返されては何も言い返せない。

 翠は皮肉気ひにくげに小さく短く笑って飛行機へ視線を向ける。


 既に荷物を降ろすために後部ハッチが開きタラップや大型フォークリフトが飛行機に群がっている。四鬼が警護する荷物も丁度ちょうど運び出されている最中さいちゅうのようでタラップの足元で2ペアの四鬼が周囲を警戒している。手錠てじょうでジェラルミンケースを手首に繋いだスーツ姿の男が合流していた。


「こっからが本番かな」

『盛り上がってまいりました』

「どこがかな?」


 溜息を吐いて翠はイヤホンマイクを起動しスマホとリンクさせる。

 ここからは一般人の擬態ぎたいよりも即時対応力が優先される。左手に翡翠の宝石が仕込まれた手袋をめ、四鬼に感づかれないよう常に軽く拳をにぎった。


 荷物の運び屋は四鬼に警護されながら飛行機から少し離れた位置に停まった車へ乗り込んでいく。そのまま敷地外へ出て行けるようになっているのか車は敷地外へ向けて徐行じょこうで発進した。

 その様子を視界のはしとらえながら翠は搭乗口から車の進行方向へ向けて進む。


『その先の扉を抜ければ一般棟へ出て車の進行方向に行けるわ』

「了解」


 朱夏の指示にしたがってスタッフ用のICカードを使用して複数の扉を開き一般棟へ戻る。

 扉を抜ける為にクセで周囲を見渡し不審者が居ないかを確認するが専門の訓練を受けた訳でも無い。

 多少の見落としは有る前提ぜんていで最後の扉を開き、周囲を軽く観察しながら車を追う中で翠は3人の男に視線を止めた。


「男、3人。中国系2人とインド系1人だ」

『んっと、候補こうほに居るわね。全員魔装使いかも』

厄介やっかいな」

『鬼なら大陸の魔装3体なんてくだして見せなさいよ』

「正しくは鬼じゃないんだって」


 泣き言を言いながら翠は3人が自分と同じ様に車を追う方向へ歩き始めるのを確認し、方向が変わらない限り追い掛ける事にした。

 他に不審者も居るかもしれないが四鬼だって数を揃えている。翠が1人で複数の略奪者りゃくだつしゃを正面から相手にするのは無理が有るので出来る範囲は自分で適当に決める。


……本職の鬼なら魔装3体相手に立ち回れるんだろうけどな。


 日本の鬼は他国の魔装まそう使いと発祥はっしょうから異なる為、同じ魔装のくくりに在りながら全くの別物だ。


 妖魔1体を相手に魔装使い3人で討伐とうばつに当たるのが世界標準だが、物資や人的資源にとぼしかった日本では単独で妖魔を討滅とうめつできる能力を有する必要が有った。

 リスクをかかえた魔装ではあるが性能はがみきで文字通り世界標準の魔装3体を相手に1体でわたい、魔装使いの練度れんど次第では圧倒する事も可能だ。


 世界的に異常とも言われる性能を持つ鬼、それが6体も投入されている時点で今回の仕事に対する力の入れようは翠にとっては不気味ぶきみだ。

 足早に男3人との距離を詰め、左手の手袋に意識を集中する。


……魔装、左腕、限定展開。


 隠密性おんみつせいを重視した魔装の限定展開。

 それにより左肘ひだりひじから先だけを装甲に包み、指先に仕込まれたスリットから爪先に向けてナイフが展開される。

 周囲にさとられないよう、男達に気付かれる事は無視して腹へちがざまに爪を立てていく。

 直前まで左腕を自分の身体で隠し相手ではなく周囲から何が起きているのかを隠す。


 狙い通りに男達は腹に切傷を負うが仕事の都合つごうだろう、彼らは周囲に助けを呼ぶ事も無く早々に人目の無い場所に移動していく。

 多少の血痕けっこんは残っているが騒ぎを起こさない為だろう、男達は可能な限り血液が落ちないよう傷跡を何かしらの方法でふさいでいるようだ。


『積荷は順調に敷地外へ移動中よ』

「さあて、鬼共は仕事してくれてるかな?」

『真面目にお仕事中よ。あれだけガッチリカバーされてるとどうにもならないでしょうね』

「積荷の奪取だっしゅが目的なら爆撃や狙撃じゃ手が足りない、か」

『まだ安心は出来ない?』

「ああ。面倒な仕事ってのは最後まで面倒なもんだ」

『納得だわ』


 最初から反論する気も無い朱夏の様子に関心しつつ翠は魔装を解除し怪しまれない速度に歩をゆるめて空港の建物から出る。

 積荷に張り付く事は出来ないが一般の駐車場なら積荷は遠目に視認する事が出来る。

 即応そくおうは難しいが鬼が影鬼と共闘するはずも無い。

 出来る範囲で対応が可能な場所に移動する。


『それにしても、こんな位置情報が私たちに筒抜つつぬけで良いのかしら?』

「ハッキングされるって? それもみだろ」

『マジで?』

「なんならこの会話も敵味方両方にモニターされてるかもな」

『うっわ、大人って怖い』


 全くの正論に翠は小さく笑い駐車場から発着場へ目を向ける。

 事前に通達されていた特別便からの運び屋は肉眼にくがんとらえるには距離が有り過ぎる。


「いやー、やっぱ見えないか」

『モニターは続けてるわ。移動速度的に車かしら』

「敷地内か?」

『そろそろ出るわ。あ、出た』

「……異常無し。仕事はここまでか」

『そうね。撤退てったいする?』

「ああ。さっきの連中に追われるのも面倒だ」

『了解。切る?』

「ああ。後で会おうぜ」


 通話を切ってその場を後にする。

 ハッキングされている場合、蒲田の事務所が襲撃される可能性も有る。

 翠からすれば朱夏はおとりなのだが本人には伝えていない。


 念の為に適当に土産物屋みやげものややかしたり喫茶店きっさてんで時間を潰したりして羽田から電車に乗って移動する。

 蒲田ではりずに品川まで移動して適当にラーメン屋に入り腹を満たす。


 時刻は14時半。

 遅めの昼食も済んで満足した翠だがスマホが着信で振動しんどうした。

 連絡主は依頼人だ。


「はい?」

『仕事完了、お疲れ様』

「ああ、報酬ほうしゅう待ってるぜ」

『ええ。全く、ハッキング対策は全部コチラ任せだったわね』

「ああ、やっぱりハッキングされてたのか」

『そりゃね。貴方から積荷の情報がれないか心配だったからモニターさせて貰ったわ』

「ハッカーでもPCの専門家でも無いんだ。俺に依頼するならそれくらいは考慮こうりょに入れておいてくれ」

『ええ、だからハッキングさせて貰ったのだも。可愛い助手じょしゅちゃんにもよろしくね』

「もしかしたら今頃、事務所はボロボロかもな」

『助手ちゃんは拷問ごうもんすえ薬漬くすりづけ?』

「有り得るよな」

『クズね』

「仕方ねえ。完全に非合法なんだぞ」

『ま、関わっちゃいけない人種なのは確かね。報酬は約束通り振り込んでおくわ。また仕事を振る事が有ればよろしく』

「今後ともご贔屓ひいきに~」


 定型句ていけいくで通話を切って時刻を確認し、今度はタクシーで蒲田駅に移動する。街を適当に歩きながら事務所付近を通って報復ほうふくされたような跡が無いかを横目で確認し、何も無い事を確認しつつ散歩を続ける。


 区役所に寄ってボランティアの情報が無いかを探し、特に無いようだったので駅ビルの本屋に入る。

 雑誌を物色ぶっしょくするかたわらスマートフォンでボランティア情報に目を通し、目ぼしいモノが無い事を確認して事務所へ戻る。


 特に襲撃された様子も無く、しかし今夜襲撃されたら面倒だと思いながら事務所の扉を開けると朱夏あやかの姿は無かった。


……席を外している? それとも拉致らちされたか?


 普段はみどりが座っているノートPCの置かれた事務机の上に朱夏のスマートフォンが置いたままになっている。

 映画やドラマなら着信が有って誘拐犯から連絡が有るシーンだ。

 しかし特に連絡が有る事も無く、ノートPCは普通に立ち上がり動画配信サイトで普通に映画も見れる。


……依頼人の防御が優秀だったか。事務所の移転いてんも考えてたんだがな。


 鬼が6体も投入される仕事というのはそれだけリスクの有る仕事だ。

 知るだけでもリスキーで、相手も相応そうおうに危険。

 しかし意外にもここまで警戒した甲斐かい無く何かを仕掛けられる様子も無い。


 朱夏と合流する事も無く前から見たかったスパイ映画を2時間堪能たんのうし、夕食を考える時間になった頃に朱夏のスマートフォンに着信が入った。

 念の為に連絡相手だけ見ると依頼人だ。

 いつ連絡先を交換したのか不明だが仮にも個人のスマートフォン、勝手に通話に出るのも如何いかがなモノと考え出るのをしぶっていると着信は切れた。

 直ぐに翠のスマートフォンに依頼人から着信が入る。


「え、何、どうした?」

『いや、少しはお嬢ちゃんの事を心配してあげなさいよ』

「いやいや、ただの家政婦だぞ。仕事以外で干渉かんしょうする気は無いっての」

『人で無しね』

「仮にも犯罪者だぞ」

『まあ良いわ。朱夏ちゃんの部屋に来なさい』

「年頃の娘の部屋に入るのは気が引けるんだが」

『何を配慮はいりょしてますみたいな事を』

「いや、セクハラとか言われたら嫌じゃん?」

『……嫌な時代になったわね』

「それな。まあ良い。朱夏の部屋だったな」

『ええ。さっさと行きなさい。それじゃあね』


 意味深いみしんな言草の依頼人を面倒に感じながら事務所を出て上の階に移動する。

 本来は業者向けのテナントビルだが個人で借りて住居として扱う事も可能だ。


 依頼人の指示通りに部屋に入ろうとドアノブに手を掛けると鍵も無いので抵抗無く開いた。背後から襲われてはたまらないので扉を閉めておき侵入者が有れば音で分かる様にする。

 改装かいそうして玄関げんかんとリビングを仕切っているのでリビングへの扉を開いて彼女の私室をのぞく。


「……え~」

「んんっ!? んん~~~!!」


 部屋の中は普通の単身者用マンションの1室のようにベット、机、椅子、テレビが有る程度だ。

 朱夏はその椅子に手足を縛り付けられ、さるぐつわをまされて座らされていた。


 長時間拘束こうそくされているせいか小便しょうべんらしているらしく尿にょうの匂いと共に半脱げのズボンから足元がれている。

 服ははだけて胸が見えておりバイブが取り付けられている。ショーツで隠れたまたも似た様な物で刺激されているらしく不自然な盛り上がりをみせている。


 ただ電池切れなのか特に振動している様子は無い。

 顔は鼻水、涙、涎でグチャグチャになっており、その上で発情したように赤面せきめんしている。


……そんな簡単にここまでになるか? 薬でも使われたか。


 そんな風にめた目で観察していると依頼人から改めて電話が掛かってきた。


『見た?』

「見た見た」

『優しく介抱かいほうしてあげなさい』

「おたくは介錯かいしゃくされんじゃね?」

『可愛かったから、つい』

「この変態レズビアンめ」


 それだけ言って通話を切る。

 話の内容を理解して朱夏あやかが明らかに怒りを目に浮かべている。

 まずは猿ぐつわを外してみると荒く息を吐く。


「あの、女! 殺、してやるっ!」

「いや、スゲーな」


 呂律ろれつは怪しいが殺意を隠しもしない。歯がくだけるんじゃないとか心配になるくらいに食い縛っており次に会ったら依頼人を殺しても可笑おかしくない様子だ。


「薬でも盛られたか? オモチャだけじゃここまでグシャグシャにならないだろ?」

「薬、盛られ、たっ」

「へぇ」


 電池の切れたバイブを胸から外してやり、悪戯心いたずらごころで胸を軽く突いてみる。


「んんっ」


 面白いように反応して背筋をらせみどりの手からのがれるように身体を横にらせるが、椅子に拘束されておりあまり遠くには逃げられていない。

 にらまれるのも構わずに追い掛けて突く。


「ちょっ、止めて!」

「船での続きでもするか」

「はあっ!?」


 これ以上は後が怖いので悪戯は止めて椅子に縛り付けているなわいた。

 足腰に力が入らないのか立ち上がろうとして直ぐに倒れる。


「あの、女っ!」

「まあ、止めないから次に会う時に好きにやれ」

「言われなっ、くても!」

「あ~、1人にした方が良い?」

「……風呂。部屋、掃除そうじ、して」

「……まあ、いっか」


 このテナントビル、トイレは各部屋に有るのだがシャワールームは3階の共有ブースだけだ。

 元々がテナントビルなので居住者ではなく時々使う事を前提としている。一応鍵は掛かるが男の筋力なら強引に壊す事は可能だ。


 翠に襲われる可能性はゼロではないが、朱夏の見立てでは翠は自分に性的な興味が無い。その為、余程よほどの事が無ければ襲われないだろうと腹を決めてシャワールームに入る。


 朱夏が部屋を出て行くのに合わせて翠は2階の事務所からバケツ、雑巾ぞうきん、部屋用ワイパーを持ってくる。

 ワイパーと雑巾で適当に床をいてパッと見ただけは普通の部屋に見えるように整えた。


 臭いだけは直ぐに取る方法が無いのでずっといでいるとキツイが仕方が無い。

 30分ほどで朱夏が私服姿でれたタオルを持って戻ってきた。


「……ありがと」

「まあ知り合いが迷惑かけたみたいだしな」

「殺すけど、良いんだよね?」

「ああ。あの女は俺にとっても味方って訳じゃない。からみは少ない方が安心なんだ」

「そう。良かった」


 まだ薬の抜けていないのか顔は少し赤いし呼吸も大きい。

 それでも鬼の訓練で習得した鬼技きぎを再確認するように左手をにぎったり開いたりしてその手にマグマをまとわせる。

 その割に近くに居る翠は熱を感じないが、彼女のかわききっていない髪が目に見えて乾いていく。


「おお、焼土鬼しょうどき面目躍如めんもくやくじょ

「魔装は実家に置いて来たけど鬼技は魔装に関係無いからね」


 確認出来ただけで充分なので左手に纏うマグマを適当に手を振って消し朱夏は翠に向き直った。


「今日はもう寝たいんだけど」

「はいよ。お疲れさん」


 夕食もまだだろうが疲れ切ったのだろう。

 殺意に満ちた目を隠しもしない朱夏を刺激するのは面倒だったので翠は直ぐに部屋を出て近所の牛丼屋で夕食を済ませる事にした。

 丼をはしでかき込み、スマホで銀行の残高確認アプリで今日の報酬ほうしゅうが振り込まれている事を確認する。


……一応は忠告ちゅうこくしておくか。


 依頼人の連絡先を開いてメッセージを送る。

 下手に朱夏に遭遇そうぐうすると焼き殺されると忠告ししばらくは仕事を持って来ないように牽制けんせいした。


 直ぐに既読が付く事は無かったので適当なタイミングで読むだろう。

 仮に読まずに朱夏に溶かされても翠は特に困らないので放置する事にした。

 シャワールームに行けば最近の常で朱夏が愛用するシャンプーやボディソープの甘い匂いがする。

 あまり好きではない匂いなのだが我慢がまんしてさっさとシャワーを済ませる。

 スウェットで事務所の奥に有る自室に戻り特に何をするでもなくベッドに寝転んだ。


……影鬼からの依頼じゃなかったが、影鬼には把握されてるだろうな。


 特に影鬼側に隠す気は無い。

 そもそも影鬼からの仕事に支障ししょうが出ないなら行動に制限は無い。

 極端きょくたんな話、警察に所属していても文句もんくは言われないだろう。


 ただし、それは影鬼本家からの文句が無いというだけだ。

 恐らく分家や影鬼本家に取り入りたい連中からすれば恰好かっこうえさに見える。

 というか数年に1回はそういうヤツが出てくる。


……朱夏が切っ掛けで面倒が起きたら見捨てよう。


 人で無しだが所詮しょせんは犯罪者、映画の主人公のように女子供は絶対に見捨てないなどという信念も無い。


 考えるのも面倒になってきたのでもう寝る事にして目をつむる。

 21時。

 成人男性が寝るにはかなり早い時間だが寝ると決めたら寝られる時間だ。

 翠は無駄に何かを考える事も無く意識を手放した。

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