参拾肆
元々、妖魔とは負の感情の集合体であり、完成した姿である事で最も能力を
その為、
獣の様に
その為、本来の姿を
右半身の攻撃手段は逆関節の脚のみとなった灰燼妖魔は灰燼鬼の拳を後退して避けながら何とか左半身を前にした。
左腕1本で灰燼鬼の放つ拳を防ぎ、追い立てられるように闘技場の
このままでは背後の逃場が無くなると判断した灰燼妖魔は大きく後退した。身を低くして
通常の生物は
灰燼妖魔は
着地した灰燼妖魔は2本が残る左足で
左
灰燼鬼は左肘刃を振った直後で背後からの攻撃への対応は限られる。
「やっぱ、灰燼鬼の
静かな声と共に上から灰の
刃の
あと半歩深く踏み込んでいれば首を切られていたかもしれない。
しかし、上から首を切断する為には左胴体から切り始める必要が有る。狙って腕だけを切られた可能性も有る。
床に左腕の鎧が落ちるのを音だけ聞いて、灰燼妖魔は黒い肉を
両腕は失った。4脚有った足も1本が切り飛ばされた。蹴りはリーチも戦術も通用しない。
残された見せていない攻撃手段は
灰燼鬼は左拳を思い切り
灰燼妖魔も牙を生やす。
刃と同じ
全力で方向転換の
薄く鋭く積まれた灰は細かく振動して小型のチェーンソーと
内部から黒い肉によって破壊された兜に妖魔の肉体を守る機能は無い。牙以外の満足な抵抗が無い灰燼妖魔の頭部は
床を
……体積としては5割も削ってねえ。頭に弱点でも有ったか?
灰燼妖魔の鎧から支えが失われた様に力が抜け、脚や鎧の
その消滅に合わせる様に闘技場の
闘技場の入口の魔法陣が消滅し、
そこまで確認して灰燼鬼は拳を打合せ、魔装を解除した。
灰が崩れる様に魔装が解除され、その中から裂が姿を現す。
何とはなしに
▽▽▽
最後のステルス妖魔の
それを見て全員が
中央に居た
その指示に従って竜泉が1度手を叩いて注目を集める。
「さて、最後のステルス妖魔討滅、お疲れ様。ただ、ここに
そこに
これが本当に何の
そんな竜泉の意図を読み取って麻琴も潤も顔を見合わせて竜泉に向き直った。
「すみません、トイレを探していたら迷い込んでしまって」
「あの、申し訳無いのですが出口を教えて貰えませんか?」
「ああ、この通路を行くと一本道で出口だよ。そこまでは案内するから一緒に行こうか」
そう言って出口に向けて歩く竜泉に素直に麻琴と潤が続き、斧前は裂に顔を向けて逆の通路を
裂も素直に来た道を戻り始める。
「ああ、悪いが少し待て」
歩き始めて直ぐに斧前に止められて意味が分からずに裂が振り返ってみれば斧前はスマートフォンを取り出して
「ああ、青山か。ああ、戻って来れた。そうだ。犠牲者は居ない。今は竜泉が通路の外に案内している。後で会議室で灰山から
そう言ってスマートフォンの通話を切って手振りで軽い謝罪をする斧前の
さっきは指示に従って歩き始めてみたが考えてみれば道が分からないのだ。
斧前も直ぐに場所が分からないのを察して前に出た。
このまま無言で会議室に案内されるのかと思っていた裂の不意を打つ様に斧前が話し始める。
「妖魔との戦闘を押し付けて悪かったな」
「……アレは俺を見ていた。
「そう言って貰えると助かる。しかし、これで司法取引は終了か」
「それはアンタ達次第だろ。俺としては早く開放されたい」
「正直だな」
「
「同意だ」
「それに司法取引が終わったとして俺たちへの
「それは俺にも分からん。だが、まあ上層部が監視を完全に外すとは思えんな」
「さって、今後の
「それこそ四鬼に来てはどうだ? 高校2年なら今から四鬼訓練校を目指しても間に合うだろう」
「俺に組織的な行動が可能に見えるか?」
「安心しろ。俺に可能に見えるか?」
「……
「そうか。
「どーも」
本当に
鬼は基本的に感情の何かしらの方法で
だがやはり裂には巡回のシフトを決められるような生活は
裂の本音にまで興味は無い斧前は取り敢えず仕事を
数分で会議室に着き、斧前は竜泉と合流したり
適当に席に着いた裂はスマートフォンを取り出して影鬼へ5体目のステルス妖魔を
この連絡先を麻琴や潤がどの様に確認しているのかは知らないが、今回は2人も巻き込まれているし裂が影鬼に報告するのに苦労する事は無いだろう。そんな気楽な気持ちで
……
裂が使う灰燼鬼の魔装は万丈の実家である
当時も相当に怪しんだモノだが親から離れたい中学生にとって無茶をしてでも1人暮らしが出来るというのは魅力的だった。
その代わりに麻琴とのペアを組まされた時には驚いたが、お陰で得られた物は多い。
こんな事なら魔装の写真を取っておけば良かったと思うが、後悔先に立たずを実感しつつ後で万丈に聞く事にして大きな溜息を天井に向けて吐く。
何はともあれ、当面の目標であったステルス妖魔の
そろそろ学期末試験が近く、麻琴の卒業式も近いが裂にとってはどちらも適当に済ませれば良い事だ。
それでも時間を取られる事を面倒に感じつつ、裂はそのまま目を閉じて調書が始まるまで寝てしまおうと決めた。
▽▽▽
麻琴との
「何か有ったの?」
「あ~、その、あの3人以外に私の知り合いも追って来ていた様で、心配とも怒っているともつかない連絡が来ています」
「あら、良いお友達じゃない」
「あんな仕事をしていてスレていないのは凄いと思いますけどね」
「前に言っていた人ね。そんな素直で大変な人なのね」
「ええ。あ、車がそろそろ着きますね」
「じゃ行きましょう」
喫茶店を出て池袋駅前のロータリーで車に合流し、前に護衛を担当した
静かに発車する車内でやっと大きく溜息を吐いた2人だが麻琴が直ぐに
「お腹、大丈夫? 妖魔の打撃を生身で受けたんでしょう?」
「ええ。踏み込みの無いジャブの様な攻撃でしたから。受身も取れましたし大丈夫ですよ」
「妖魔のジャブはヘビィ級ポロボクサーのストレートより重いでしょうに」
「まあ図書館に着いたら医務室に行きますよ」
「そうしなさい。さて、迷宮の話はどうしましょうか?」
「ちょっと
「そうかしら? そもそもステルス妖魔を探索する現場の近くに私達を
「誰かの
「思い付くのは、
「……有りそうですね」
「何か心当たりでも有るの?」
「考えてみれば
「そういえば居たわね」
「はい。私も実は名前が思い出せません」
「
「他に候補者が居なければ自動的に候補者に成るのでは?」
「ま、他に居なければそうかもね。でも中学生じゃどれだけ頑張っても幹部候補にしないって分る筈だし予想でしかないわ」
適当に車に備え付けの小型冷蔵庫からオレンジジュースを取り出した麻琴は視線で潤に何か要るか
「ミネラルウォーターをお願いします」
「はい。痛むなら開けて上げましょうか?」
「ここぞとばかりに楽しそうですね」
「普段は世話を焼いてもらう側だもの、
「ありがとうございます。もう痛みも引きましたから大丈夫ですよ」
ペットボトルのキャップを開けて2人はそれぞれの飲み物で喉を潤し少し息を吐いた。
そのタイミングで潤のスマートフォンに着信が有り、発信者を見れば影鬼本家だった。
恐る恐る潤がメッセージを開くと迷宮に取り込まれた事、妖魔討滅に
「お嬢様、ご当主様が図書館にお
「あら、お爺様もいい歳なのにお元気ね」
「もっと緊張感とか有りません?」
「ほら、仮にも祖父だから」
「凄い説得力が無いですよ」
「まあお爺様が動いているって事は、もうこの件は終わりでしょうね」
「……そうなりますか」
「ええ。恐らく、龍牙君の行動とか私が裂の近くに配置された辺りについて当主としての対応を決めて終わらせるんでしょう。私が当事者に成ってしまったから義理で呼んだ、なんてところじゃなかしら」
「身内の
「そうそう。それと鋼牙さんもそうかしらね」
「あの方は
「あら
「事実です」
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