弐拾漆
ステルス妖魔の4体目を
呼び出し人は
「
「どーも」
年末の13時30分なので社会人はほぼ居ないが学生客やバイトが居る。
その為、霞は
霞の前には
「今日は何で呼ばれたのか知っているかしら?」
「いや、聞いてない。知らない奴から呼び出しの連絡が有っただけだ」
「まとめ役の佐右ヱ門さんね。後はそっちの人が確認用で1人来ます」
「知らない所で接触してるんだな」
「私達も充分に接触していると思うわ」
「ああ、必要以上だな」
裂の珈琲が運ばれてくると霞の言った通り雷電佐右ヱ門が現れ、その直後に
喫茶チェーン店では有るが少々高額に設定されているので4人席は広い。4人分のドリンクと軽食を並べても余裕が有る程度だ。
佐右ヱ門の体格の良さに警戒する裂だが本気でこの店で問題が起きるとは思っていない。霞も佐右ヱ門も
「で、俺以外が直接会うのって良かったのか?」
「良いんです。と言うか貴方より先に接触していますよ。この2人とは仕事では初見ですが」
「そうね。潤がまさかそっち側だったなんてね」
「霞にはあと2年はバレないと思ってたんだけどね」
「青山に教えるには立場上は問題が有るからな。こんな仕事が無ければ俺から教える事は無かっただろうな」
「なあ、何で俺はこんな面倒な
裂としては敵対組織の
しかも佐右ヱ門の体格、霞の胸、潤の
今直ぐに帰って良いと言われたら素直に帰る。
「まあ簡単に言えば顔合わせだ。状況は進んでいるのに
「そこに共通の知り合いが居るじゃないか」
「青山だって休みは有る。複数の顔見知りが居ると対応の速さが違う事は分かるだろ」
「分かった。ならもう良いんじゃないか? 珈琲を飲み切ったら帰らせてくれ」
「
「有ったら有ったで意外に思うんだろ?」
「……感想を持つ事が間違っていると?」
「そっちの女には言ったが、俺はアンタ達に付き合う為に今は友人との接触を断っている。そんな状況で協力も何も無いだろ?」
「お前が最初からそんな立場に成らなければ良かった話だろ。人のせいにするな」
「俺にはこれ以外、生きる術が無かった。ああ、アンタ達は職業的に仕事以外での人の生き死にには興味が無いんだったか」
「……何を
「教えるはずが無い。あんまり怖い顔するな。他の客から注目されない内にさっさと解散にしよう」
「……良いだろう。今後も呼び出した時には出て来い」
「了解」
それだけ言って裂は佐右ヱ門の自己紹介を聞く事もせずに席を立った。会計は事前に霞から四鬼側が持つと言っていたので払う気は無い。
潤は残る様だが霞と知り合いだと以前に言っていたのを思い出して話が有るのだろうと
喫茶店の近くに居て後で
霞が居ても妖魔に巻き込まれないタイミングが有るのでステルス妖魔に襲われる状況が分からない。
今までの状況から裂は自分か霞が狙われているのは確定として、霞よりも自分がメインの獲物にされていると思っている。
……ステルス妖魔が迷宮に引き込む時はいつも俺を見ていた。巨乳黒子が居る時が多いのは偶然だと思いたいが、4回は流石に多い。それに恐竜妖魔の時は俺より先に四鬼が数人で巻き込まれてる。
ステルス妖魔の出現条件は
面倒な事に成ったと家で頭を抱えていればスマートフォンに
裂の4体目が思ったよりも早く出たせいで万丈の
……
影鬼の人間に合わない様に指示が有ったが、逆に向こうから声が掛かる事は想定していなかった。
今日も昼間にまさか図書館の職員が出て来るとは思っていなかったくらいだ。それも本気で顔合わせだけなのか早々に席を立っても止められなかった。
あんなにも簡単に開放されると不気味だという感想しかない。
▽▽▽
裂が万丈に指定されたファミレスに着くと万丈は既に到着しており、4人席の正面には
それよりも現状の裂に影鬼家の龍牙が直接会う事に驚きが
「よう、早かったな。今日はお兄さんの
「晩飯には早い時間だけど
「ははは、今日は
「ちっ」
舌打ちして万丈が開けた隣に着くと龍牙が相変わらず
裂が席に着いたのを待ってストローから口を離して裂に話し掛けて来る。
「お久しぶりです、灰山さん」
「ああ」
「……え、それだけか裂?」
「他に何を言うんだ?」
「マジかよコイツ。龍牙
「まあまあ、片影さん。灰山さんはこういうメンタルである必要が有りますから」
「何でこんなに人が出来てんだ」
「まあ、家が家ですから」
「おい、呼んだんならさっさと本題に入れ。どうで他の客は仕込みだろ」
席は窓際だが
また裂の見立てでは
「何だよ、ちょっとボヤかした話し方してんのに
「昼間に呼び出されて遠回しな単語で話してて疲れてんだ」
「おいおい、
「あはは、僕はどちらでも構いませんよ。何ならここの店長は協力者ですし」
「おいおい、坊ちゃんの方がよっぽど大人じゃねえか」
「面倒だ。早くしろ」
「はいはい。ま、今日は俺は用は無いんだよ」
「じゃあ龍牙の方か」
「はい。僕が直接連絡すると面倒ですし、
「
「そうそう。お得意様なの」
「万丈さんには細かい
「いやいや、俺は面白い魔装が扱えるなら何でも良いんでね。これくらいはお安い
軽い口調の万丈と
「おいおい、まだ晩飯には早いって言ったのはお前だろ」
「話が長く成ったら追加するからな」
「マジか。流石高校生」
「中学生、お前は良いのか?」
「僕は家に夕食が用意されているので」
「んじゃ話は短めか」
「いえ、両親は不在なのでレンジでチンです」
「そうかい。なら本題に入らねえか?」
「そうですね。では、こちらを見て貰えますか」
そう言って龍牙は自分のスマートフォンを取り出すと何かの写真を表示して裂の前に置いた。
穏やかな笑みを浮かべる龍牙から
研究施設の様で先日の学習塾の様な
写真のデータは荒く最近のスマートフォンやデジタルカメラで撮ったにしては解像度が荒い。
裂の記憶ではテレビで見る少し前のガラケーで撮影された写真の解像度に見えた。
「何の写真だ?」
「先日、灰山さんが調査した研究施設の写真です」
「培養槽が割れてないぞ」
「はい。実はこれ、家のデータを
「部屋のレイアウトは同じに見えるな」
「写真のデータ名が同じでした。名前なんて
「そうだな。で、お前は何を考えて俺にこれを見せたんだ?」
「四鬼にリークしてみませんか?」
「……それ、俺に言う話じゃないだろ」
「そうですね。本来なら本家に言うところですね」
「お前は何がしたいんだ?」
「麻琴さんの話は聞きましたか?」
「は?」
「実は幹部候補に成ったんですよ」
「へぇ」
「なので僕が彼女に協力すればポイントが上がると思いませんか」
「あ~、ん~?」
「あれ、分かりません?」
「いや、お前の
「え、まさか、幹部、嫌がり、ますかね?」
「嫌がるかどうかは知らないが、積極的に
あくまで裂から見た麻琴を想像した発言なのだが龍牙は相当に衝撃だったのか今までの余裕の有る表情は崩れ目を見開いている。
口が思い切り開かないのは育ちが良いなと思いつつ裂は自分のスマートフォンを取り出した。
「仮に四鬼にリークするとして、そのデータはどう受け取る? 俺のスマホはどっちにも監視されている。それに
「素直に僕から
「それに、写真だけじゃ確証としては弱いぞ」
「そうですね。ディープフェイクなんて画像処理技術が有りますし、CGソフトで解像度が
「今気づいたのか」
「実はそこまで情報に対して
「考え無しなのは確かだし情報の精度は他人
「では今回は
「話すのが俺だって言われたら気にもする。お前が話すなら好きにしろ」
「はは、噂通りの
上品な笑みを浮かべる龍牙に対して裂は真意が分からずに
隠す気も無い
ただ内心は表情の通りではなく様々な
裂は麻琴から龍牙が鬼に成れるとは聞いているが、どちらかと言えば
「噂? まあ良い。この情報なら俺は動かないぞ」
「はい。これは僕が動きましょう」
「俺に面倒が起きなければ良いが、お前の親が
「影鬼図書館に
「……どうだかな」
異端鬼に成る才能を示しても
……面倒が増えなければ何でも良いな。コイツが何かする前に最後のステルス妖魔を討滅したいが、
深く溜息を吐いて龍牙から意識を
裂は
数回、同じ手順を踏んでから
その間、龍牙と万丈は映画や漫画の話をしており、漫画やアニメは見ないのかと思っていた裂は意外に思いつつ、直ぐに意識を食事に戻した。
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