弐拾壱
学習塾の調査を終えて数日後の18時頃、
彼女のような若い
妖魔という人の
しかし、自分が犯罪組織との
……
場所は池袋駅ビルの地下に有る関係者以外立ち入り禁止のエリア、人口密集地の大きな駅には必ず作られている妖魔を意図的に発生させやすい
発生した妖魔は四鬼が定期的に
そんなエリアには複数の部屋が用意されており、会議や四鬼の
今回、霞は四鬼の中でも
40代中盤の非常に大きく
「悪いな、本来ならお前の様な若い黒子には知らせる事でも無いんだが」
「いえ。
「そう言って
「あはは。灰山裂から私の
「そうだな。だが、実際に顔を認識しているかどうかは大きい」
「はい。ご
佐右ヱ門の案内で入ったのは比較的浅い階層の会議室だ。
警察署に有る取調室に似たコンクリート
その硝子に向けてシンプルな机と椅子が置かれており、佐右ヱ門の指示で霞は曇硝子の隣に有る角の椅子に着く。
この位置ならば硝子の向こうの相手からは見えないという事なのだろう。
佐右ヱ門がジャケットの胸ポケットから手帳とスマートフォンを取り出し机に置き、スマートフォンで何かの操作をした。
『あー、あー。聞こえているか?』
「ああ、聞こえている。俺は四鬼の」
『ストップ。
曇硝子の下側だけ曇り
同時に壁を通して電子音
向こうにも同じ様に電子音交じりの佐右ヱ門の声が聞こえている。
『私は影鬼のメッセンジャーだ。同行者は1人居るが、私と同様に自己紹介は控えさせて貰う。まあ
「俺は四鬼の者だ。そちらと同じく
『ああ、誠実《せいじつ』ですね』
「
『気を
「そうだな。始めよう」
これは警察組織である四鬼と、犯罪者集団である影鬼の情報交換の場だ。
警察組織が犯罪者集団と取引したという
今回の打合せはそんな両組織からの中間報告だ。
目の前で自分が集めた情報も含めた調査結果が犯罪者組織に渡されていく。
その緊張感に
『ふむ。現場検証では
「30年以上前の事件を再調査するのだ。そう簡単だとは思わないで貰いたい」
『これは失礼。言い方に
「個人的に知っている異端鬼だったか」
『ええ。仕事とは関係無く、個人的で一方的に、ですが』
「良いのか? 個人的な事を話してしまえば君の
『どの程度まで
例え四鬼がメッセンジャーの素性を特定したと思っても今の情報に
佐右ヱ門はワザとらしく
「この先、四鬼としてはステルス妖魔が
『ふむ。こちらは灰山裂の近場で発生する妖魔の反応は彼に
「元よりそのつもりだ。ああ、それと彼に付けている監視が追い駆け回された。自分が監視されている事を前提に教育してやれ」
『彼と我々の契約に教育は入っていないんですよ。そもそも、彼に
轟雷鬼系の鬼は他の鬼が人間としての感情を『
佐右ヱ門も
机の脚を蹴り、両手を拳にして机に叩き付けた。
「
『いやいや、失礼した。
聞こえる様に、
「ふん、黒子の話では貴様等の監視だって見つかっていたようだ。音声ファイルでも切り取ってくれてやろうか?」
『いやいや、それには及ばないですよ。優秀な鬼を
「はっ!
『いえいえ。優秀な人材により
のらりくらりと佐右ヱ門を怒らせたり
霞は素直にそう感じ、自分は可能な限り話したくはないと軽く身を壁に寄せた。
元々見える角度では無いのでそんな必要は無いが、人間とはどうしても自分が苦手だと判断したモノから物理的に距離を取りたくなるものだ。
鬼のようにストレスを
……この人は、その
ふとそんな
『さて、今後の調査方針は分かりました。事前に頂いていた資料も
「……良いのか?
『確かにあの若さであの
「……
『ご安心を。確かに彼は
「そんな都合の良い話が有る物か」
『ええ。全てが全て、都合良くは行かないでしょう。ですが、世の中には様々な手段が有る。私の様な
「具体的な事を聞かせて貰いたいな」
『それを私は口に出来ません。これは我々が身を削ってでも守るべき話です』
「……良いだろう。状況
『我々から四鬼にスカウトですか。本格的に彼をスカウトした者の評価を考えなくてはいけませんね』
楽しそうな笑みを含んだ話し方に佐右ヱ門は本気かと
学生時代からの友人、
影の字を
それでも親友と言っても
……私は1度、灰山君の苗字で失敗しているでしょう。
自分の願望を押し殺し、霞は打合せも終わり掛けでやっとメッセンジャーの
しかし、事前に佐右ヱ門に言われていた通り顔を出す訳にはいかない。
今は
『他に情報が無ければ今日はお
「良いだろう。元より妖魔の調査は我々の
『……そうですね。では、私達はこれで』
メッセンジャーがそう言うと曇硝子が下まで曇り向こう側が見えなくなる。同時に音声も完全に切れた様だ。
佐右ヱ門は手帳とスマートフォンをジャケットに
「悪いな、驚かせた」
「いえ、まあ、大丈夫です」
「途中で何かに気付いたようだったが、何か有ったか?」
「その、あのメッセンジャーの話し方が知り合いに似ていたので驚いてしまって」
「影山潤」
間髪入れずに佐右ヱ門が発した名前に霞は驚き目を
その反応だけで
「そ、そんな事、有る
「俺達が影鬼と通じているのはもう理解しているだろう。国立の教育機関で入学者の
「そんなっ」
知らずに学生時代から犯罪者組織の一員と友人関係を築き、親友とまで思っていた。
その事実が霞の驚愕と混乱をより深くする。
社会人に成ってからも潤とは何度も遊びに出かけ仕事の
霞は潤を図書館職員としか認識していなかったが、潤から見た霞は敵対する組織の
「ああ、別に影山潤はお前を敵とは認識していないだろう。何せ灰山裂との接触にお前を使うと影鬼側に伝えた際、
「それが、潤じゃない可能性だって高いと思いますが?」
「そうだな。しかし本件に
佐右ヱ門の
単純に事実を伝えただけだ。
鬼は特に
「……影山潤にお前が個人的に接触する事は止めない。
「……はい」
「それと接触するなら1つ認識しておけ。恐らく影山潤は異端鬼ではなく黒子や
「え?」
「さっきの会話、異端鬼でなければ協力は受け付けると言って少し間が有っただろう。司法取引を持ち掛ける前の調査でも影山潤が妖魔討滅の現場付近で確認された例は無い。自分以外にも俺達に接触する人員を軽く計算していたんだろうさ」
「……潤と接触する事が有れば、報告します」
「無理に友人関係を崩す必要は無いぞ。まあ、
そう言って佐右ヱ門は会議室を出る様に
状況が変化するとしたら自分の仕事内容と想定していた霞にとって自分の友人関係まで変化する事は想定外だ。
霞はその変化の激しさに思考が追い付かず、ただ佐右ヱ門に
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