陸
新たなステルス妖魔の情報を
今までの目撃情報と2年前に鬼が
「……はぁ」
6月2日、16:32の表示が麻琴からのコール画面に
『こちら
「……今度は俺がストーカー被害に
『貴方、自分がストーカー被害に遭う程度に魅力が有ると思っているの?』
「本気で傷付くから、その言い方」
『
「ああ。ナビもちゃんと動いてる」
『なら良いわ。
「了解」
通話を切ってナビを起動させ廃工場の住所を入力する。事前調べと同じように
駅前からまずは正面へ歩を進め住宅街を進んでいく。
普通に見ればスマホを
ハッキリと何が
前のステルス妖魔に感じた
……ステルス妖魔だとしたら完全に
裂は麻琴からの指示に従って現着報告の電話を掛ける。数回のコール
『着いたわね』
「ああ」
『妖気は
「面倒だな」
『レーダーが無かった時代の鬼たちを心から
裂は通話は切らずに鞄から取り出したイヤホンマイクを耳に付けジャックをスマホに刺しカメラが外を向くように胸ポケットに入れる。
廃工場の敷地に入る為に
『調査範囲は工場内全域。調査項目はステルス妖魔の
「成るようにしか成らない」
『言うわね。工場内は古くてデータが無いわ。サポートは期待しないで』
「……役に立たない」
『後で
雑談を
既に何度も経験した事で慣れてしまったこの作業、それが自分たちにとって幸せな事なのか彼らは答えを持たない。
「そう言えば麻琴は何で妖魔を追っているんだ?」
『あら、組んだ時に話さなかったかしら?』
「聞いた覚えがないな。無理に聞く気も無いが」
『なら話さない。そう言う裂の理由は?』
「言ってなかったか?」
『聞かなかったわね。詳しく聞く気も無いけど』
「なら言わない」
『そう』
実は過去に5回も同じ話しをしているが本人たちは覚えていない。
工場内は加工機が全て
「酷い臭いだ」
『不良が溜まり場にしていたなら仕方ないわね。ステルス妖魔が居る感じは?』
「これだけ
『居ない事の証明って難しいのよね。キリが無い部分も有るし工場内を一通り見回ったら
「そうさせてもらう」
1度だけ
2階の天井まで
他に何も注目するべき点が見つけられず裂はその扉へ向かう。念の為に最初の扉と同じようにゴム布によって手を守りながらドアノブに手を掛けるが特に何も仕掛けはない。
人が居ない為か全く人の侵入に対して
人が完全に居ない場所には妖魔も出ない。
妖魔は人の暗い感情を
その為、妖魔が最も多いのは人気が『少ない』場所であり、人気が『無い』場所では無い。
この廃工場のように完全に人の
「
『何か有るよりは良いじゃない。事務所に妖魔が居なければこのまま調査終了よ』
「はいよ」
通話越しの麻琴の
扉の先にはスチール製の
特に
『ここまで順調だと
「
溜息を吐いて階段を登り切った裂は再度現れた扉に手を掛ける。
工場内から見えた
最後の調査範囲に気を
5メートル程度の廊下を歩けばガラス張りの扉が有り内部が見えている。
いつかの廃ビルのように机は
室内に入った瞬間、裂は
「何だ、この匂い」
『
「この部屋には見える範囲以外にスペースは無さそうだ」
『そうなると異臭の原因が分からないわね。もう少し見てみましょう』
室内に足を踏み入れた裂が適当に部屋を見てみるとコード以外はやはり見えない。
床だけを見ているから何も気付けないのだろうと上を見てみれば天井に段が付いていた。部屋の中央まで行き振り返ってみれば
「何か
『あ~、ダメね。忘れたわ』
「ちょっと古い家とか、あとは企業には
『最近は見ないし名前を知る
「
『ええ。居ない事の証明が出来なければ、居る事の証明も出来ない。これ以上の調査は時間の無駄よ。明確な目撃情報や事件が無い限り、ここの調査は無意味だわ』
元々、影鬼所属の鬼が行方不明になったのはこの地域だ。明確にこの廃工場で行方不明になったとは確認されていない。今回の調査はこの廃工場で鬼や
「
『ええ。明日にも入金されるはずよ』
「それだけで
『そうね。今日はこれで解散、帰り道で何か有れば連絡しなさい』
「了解だ」
それだけ言って通話を切った裂はイヤホンを鞄に戻し工場を後にする為、扉を開き廊下を歩き階段を降り工場へ降りる。
西八王子駅で感じた
その視線の
「冗談だろ」
ズボンのポケットに落としていたスマホに素早く手を伸ばしショートカット設定にしている麻琴への通話を行う。
その操作が完了した瞬間に裂は視線の主を見つけてしまった。
異常に長い爪を持った仮面の妖魔だ。
体長約5メートル、
先日のステルス妖魔と同様に最初は存在を感じられず、今も半透明で居るか居ないか確信が持てない。
しかし1度経験した事だ、裂はその
「見つけた以上は、逃げられないか」
「なっ、また急にセンサーが
「……本当に、何で見つけてしまったんだろうな」
裂が霞の姿を視界に捉えた瞬間、般若の妖魔は完全に実体化し2人の前に立つ。
背は
裂は妖魔の出現直前に操作した通話の結果を見ようとスマホに視線を落としたが、妖気が強い為か電波のマークが
妖魔の種類によっては
その
妖魔の背後では霞が急いで札を構えたが妖魔との一瞬を
再度舌打ちをした裂は妖魔へ向けて拳を向け、
「なっ、灰山君!?」
霞が叫んだ瞬間、実体化した妖魔の姿が
「はぁ、またか」
「もう、何が起きてるのよ!?」
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