伍
ステルス妖魔との戦闘地点から離れた
「こんにちは、先輩」
『急に連絡が取れなくなったけど、無事なようね』
「異常事態に
『
「異空間に取り込まれてた。相手は巨大な妖魔ってだけで他に特徴は無かったな」
『異空間。そんな妖魔は今まで報告されていないわね』
「初めて確認されたって事か。行方不明の
『八王子周辺では数件確認されているようね。全国でも有るには有るけど、普通の妖魔に食われたのと区別が出来ないわね』
「確かに」
今はまだ情報が不足しており裂も麻琴も結論を導き出せないでいた。
初見の妖魔では
『今回の妖魔の事を
「気配を感じるまでは本当に少し違和感が有る程度だ。分かった事は妖気測定アプリでも全く反応しない、気配を感じて探してみるとようやく少し見えるようになるって事。少しでも見えれば急に見えるようになっていって、完全に見えるようになったら門に吸い込まれた」
『門?』
「門ってのは
普段あまり口数が多くない為に疲れた裂はここで1度コーヒーを
『通路という事は、先に進むしかないって事ね』
「ああ。通路には小型の雑魚妖魔が数匹
『……黒子は?』
「袋小路に居た黒子が一緒に入って来ちまったんだよ。面倒だから雑魚は任せて楽させてもらったな」
『酷い男ね』
「通路の奥にはただの枠が置いてあってワープ出来る輪っかみたいな物から別の通路に繋がってた。そこに現実世界で見つけた巨体の妖魔が居たな。闘技場みたいに障害物の無い
『で、倒したら戻って来られたって事かしら?』
「そんな感じだ」
『……正直、何をどう報告したら良いのか分からなくなったわ』
「それは俺が言いたい」
2人
『まあ、報告はしておくんだけど、後で
「面倒だな」
『
「了解」
『じゃ、次の仕事もよろしくね。お疲れ様』
「お疲れ」
通話を切って2人はそれぞれの休日を過ごし始めた。
▽▽▽
麻琴は基本的に妖魔と関わらない時には裂とも関わらない。
彼らは基本的に薄く浅い付き合いをしており
それでも校内で2人で話す姿は
それは
しかし、そんな彼らの関係を
「
先日からある同級生に呼び出しを受けていたが
顔は良い事で有名なのだが麻琴は彼の『自分イケメンですから』オーラが好かなかった。そもそも麻琴は男女関係に興味が無いので誰の呼び出しも告白も受けないつもりだ。
しかし周囲のクラスメイトからの視線が
「家同士の付き合いよ」
「
「そうね」
「幼馴染みだからクラスメイトにも見せない表情を見せるのかい?」
「何が言いたいのか分からないわ。早く結論を言いなさい」
麻琴は基本的に
しかし貴重な休み時間を不愉快な会話で無駄に取られるとなると穏やかではいられない。
「彼との関係が気に食わないのならそう言いなさい。だけどこんな風に
「ぐっ」
「自分の教室に戻ったら? これ以上、何も話す事は無いわよ」
苛立ちに腕と足を組んで男子生徒を
その空気に耐えられなかったのか男子生徒は舌打ちをして去って行った。
▽▽▽
「という事が有ったわ」
「それでこの呼び出しか。俺は何で呼ばれたんだ?」
放課後、学校の中でも人の流れが無い資料室が集中した廊下の突き当りに麻琴は裂を呼び出していた。理由は単純で休み時間に黙らせた男子生徒への対策を決めておく為だ。
「俺も暇じゃないんだけどな」
「私のスマホは影鬼に盗聴されているのよ。だから直接話しておく方が良いわ」
「お嬢様にはプライベートも無いな」
「本家は富豪でもウチは中流家庭よ」
「それは失礼」
「さて、本題に入りましょう」
「……俺に何をさせたいんだ?」
「ボディガードとは言わないけど、襲撃が有るかもしれないと覚悟しておいて」
聞いた瞬間に顔を大きく
「裂のそんな顔を見れただけでも呼び出した価値があったわ」
「チッ。状況は分かったよ。コッチは勝手に気を付けるからソッチは自分で何とかしてくれ」
「守ってくれても良いのよ?」
「知るか。妖魔が
「分かってるわ。じゃ、仕事の話をしましょう」
彼なりに真面目な表情のつもりなのだが知らない人には眠そうだとか馬鹿にしているのかと思われがちだ。
「学校内で妖魔の話は
「それもそうね。資料室を借りましょう。先生に資料探しを頼まれているし、ついでになるわ」
「OKだ」
仕事という
その姿が
▽▽▽
資料室に入った2人、麻琴は早速資料探しを始め裂はパイプ椅子に座りスマホで漫画を読み始めた。
「今回の仕事は前のステルス妖魔についてよ」
「ああ、あの巨乳黒子の時の」
「どんな覚え方よ。そして男はやっぱり胸なのね」
「当然だ。サイズか形に
「……ストレートなセクハラね。まあ良いわ」
今までは妖魔の話ばかりだったので裂がこんなセクハラ発言をするとは思わなかった麻琴は一瞬固まったが、何とか仕事の話に切り替えた。
「実は影鬼のデータベースに居たのよ。現状では接触禁止指令が出ているけどね」
「接触禁止なのに仕事があるのか?」
「背景を説明させて貰うわ。目撃例は眼の前で黒子が消えた
「それだけか?」
「詳細不明。分かっているのは対策が分かるまでは接触禁止としていた事。ただ、前回貴方がステルス妖魔を討伐して脱出したでしょう」
「待ってくれ、この先は聞きたくないぞ」
「だから裂と、他に同等以上の力を持つ鬼数名にステルス妖魔討伐の依頼が出ているのよ」
「拒否する」
「残念、
「よし、俺は今日先輩には会わなかった。よってこの話も聞いていない。では、さようなら永遠に」
「他にも
「……
「大人は卑怯なものなのよ」
「1つしか変わらないだろ」
弱々しく反論した裂は上げかけていた腰を降ろし
左腕で顔を
「分かった。そもそも拒否権は無いみたいだしな」
「
「はは、快諾ね」
「資料も見つかったし私は職員室に行くわね」
「俺は帰るよ。妖魔の情報は後で送ってくれ」
「分かったわ。それじゃ、またね」
「ああ」
少し配置の変わった資料を直す麻琴を置いて裂は席を立ち部屋を出る。
廊下の角、丁度この廊下で
……さっき麻琴が言ってた連中か?
裂が普段感じる妖魔からの
今の内に危険な
ネクタイの色から麻琴の同級生である事は見て分かるが、それ以上の事は分からない。
「誰だ?」
「影鬼さんの友達だよ」
「その
「ふん。影鬼さんに君のような悪い虫が付かないか見守っていたと言って欲しいな」
「ストーカーの理論だな」
言われた瞬間に
しかし
そのリスクを考える3人組は裂に殴りかかるような
「君こそ、影鬼さんを人気の無い部屋に連れ込んで何をしていたんだ?」
「呼び出されたのはコッチだ。最近、変な3人組ストーカーが付いて困ってるそうだ」
「なっ!?」
ワザとらしく話を
しかし相手から殴りかかってくれる分には裂の
だが裂はその手の
「それより、3人組で先輩を
「俺たちがストーカーで影鬼さんを困らせてるってのか!?」
「ストーカー被害は被害者側の主観がモノを言う。影鬼先輩がストーカーと思ってれば先輩たちはストーカーだろ」
「こんの、後輩のクセに!」
「そこ、
「馬鹿にするのもいい加減にしろ!」
「馬鹿にするほど興味が無い。退いてくれ」
本心から何の興味も示さない無表情な裂に3人は戸惑いを隠せない。
先輩3人に1人で囲まれるという普通なら危機感を覚える状況で裂は一切興味を示していない。先輩3人が何の脅威でも無いと本心から思っていなければそんな態度は取れない。
何の警戒心も無く歩き始めた裂は本当に3人に関心を持っていない。
その態度に
1度も振り返る事無く
「
裂を見ている事で背後への警戒が
「……もう、関わるの止めね?」
1人の
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