ファントム☆ウィザードの提案
「ええと、ホープスと言うアイドルユニットの子たちの穴埋めを、僕たちファントム☆ウィザードで行うというのはどうでしょうか」
「……?」
「…………」
ファントム☆ウィザードが穴埋めを行う。雪羽の提案がどのようなものなのか、源吾郎はとっさに理解できなかった。目配せした飛鳥の顔にも、困惑の色が若干滲んでいる。
「ほらさ、ホープスは二人組のユニットで、ファントム☆ウィザードも二人組でしょ? 今は鳥姐さん、鳥園寺さんも協力してくれるけれど、基本的に裏方だし。
ともあれアイドルの子たちがいないって事で海原博士たちもお困りでしょうし、その代理を僕らで補えば良いんじゃないかと思ったんだけど」
「そういう事だったんだね」
「ええ、まぁ……」
雪羽のさらなる解説で、ようやくどういう事なのか源吾郎たちも飲み込めた。それは俺たちでは無くて番所さんや海原博士が決める事ではなかろうか。
「あの、すみません。何か急にツレが差し出がましい事を言ってしまったみたいで」
「差し出がましいなんてとんでもないよ。むしろ、君たちが協力してくれるって聞いて嬉しいくらいさ」
海原博士の言葉は、マジカル☆ドリーマーズ側の総意であるようだった。もう一度本物の(?)魔法少女が目の当たりにできる。その事で海原博士たちもまた期待に胸を躍らせていたのだ。
実は今の海原博士たちは、マジカル☆ドリーマーズに変身できるのかどうか定かではないそうだ。最終決戦の後、リーサが全ての魔力を使って荒廃したマジカル王国を元通りにした。その時にマジカル☆ドリーマーズに変身する権能も無くなってしまったのだ。それ以降は魔法少女たちも、精霊たちやゆうちゃんもそれぞれの世界で夢に向かって活動していたという次第である。
もしかしたら、魔法や科学技術でマジカル☆ドリーマーズに変身できるようになっているのかもしれないけれど。
「それよりも鳥園寺さんたちこそ大丈夫でしょうか? 急な事になりますし」
「僕らは大丈夫ですよ。ですよね鳥園寺さん」
きっちりとした雰囲気を纏う悠花の問いを、雪羽たちはそのまま飛鳥に丸投げする。
「私としても問題ないと思うわ。ご当地イベントの参加だし、多分上もOKで通してくれるでしょ。それに島崎君は演技上手だから、ヒーローだろうとやられ役だろうと何でもできるっぽいし」
「ま、まぁ鳥園寺さんの言う通りですね」
飛鳥の言葉に源吾郎は苦笑いしながら応じる。飛鳥は源吾郎たちの前では結構ズバットサクッと持論を述べる事が多いのだ。弟分と見做し、気を許している証拠なのかもしれない。
「そうと決まれば明日の段取りについてお伝えしますね。ファントム☆ウィザードのお二人はこうしたイベントにも慣れておいでだと思いますが……」
そう言いながら、一行はトレーニングルームの隅にある休憩スペースへと移動する事となった。明日の段取りについては意見交換も挟むから、立ち話よりも座って話し合った方が良かろうという海原博士による配慮が見え隠れしていた。
※
度々白熱する打ち合わせを終えたのち、魔法少女たちの会合は一旦お開きとなった。夕刻を過ぎ、既に外も暗くなっていたからだ。晩秋と言う事もあり、日没は早かった。リーサたちマジカル王国の住民は一旦マジカル王国に戻った(明日も蝶介や海原博士の活躍を見るために人間界に来てくれるそうだ)
そして源吾郎たちは、ブロンズマンジムに併設された宿泊所で一夜を過ごす事と相成った。部屋は男女別々である事は言うまでもない。と言うよりも、フロアからして男子向け・女子向け・カップル又は家族向けと区分けされていたのだ。非常に健全である。
なお、急遽一泊する事になった源吾郎たちであるが、元の世界に戻った時の時間云々の問題は気にしなくても大丈夫だった。源吾郎たちがこの世界を訪れるにあたり、すきま女のサカイ先輩が諸々の調整を行ってくれていたのだ。なのでこちらで丸二日滞在したとしても、戻ってくるときには出発した日と同じ日に戻れるという計算だった。
さてブロンズマンホテル(ブロンズマンジム保有の宿泊場である!)に到着した源吾郎たち一行は、ここで二手に分かれる事になった。各々男子向けと女子向けを一部屋ずつ確保してもらっていたからだ。
飛鳥は小ぢんまりとしたバッグに手を添えながら、源吾郎と雪羽に視線を向けていた。
「それじゃ、明日の朝まで私たちは別行動になるけれど、あんまり羽目を外しちゃあ駄目ですからね」
年長者らしい飛鳥の言葉は、何となく修学旅行を引率する若教師のそれに似ていた。源吾郎はそう思っていただけなのだが、雪羽は事もあろうに吹き出していたのだ。
あ、こら雷園寺。笑う所ちゃうやろ……そう思っていると、やにわに飛鳥が表情を引き締め、源吾郎たちに言い添えた。
「私はこれでも、大天狗様やすきま女のサカイさんから島崎君たちをよろしくって言われているから……うふっ、確かに学校の先生みたいな感じだったかもしれないわね」
「いやはや、そんな事ないですよ鳥園寺さん」
「そうっすよ。鳥姐さんが最年長なんですし」
上司や先輩の名前を出され、思わず真顔に戻る源吾郎たちだった。二人も彼らなりに萩尾丸たちの事は尊敬しているし、敵わないと思っているのだ。
「鳥姐さん。鳥姐さんも心配なさらずごゆっくりお休みください。俺らも羽目を外さない程度に休んどきますんで」
かくして、二手に分かれた一行はブロンズマンホテルの部屋に向かう事と相成ったのだ。
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