百足怒涛
その通りに上を向く。天井は平らなものであった。変わった建物なだけ、か。とまた納得しかけた俺であったが───いや、俺が外から見た建物はこんな形状をしていない。違う、同じ形はしていたはずだ。ただ、上下が反転しているのである。
おい、と俺が菊原に声をかけようとした刹那、激しい衝撃と共に、視界がぐるぐると回転する。壁に背が当たり、咳き込みそうになる中。
伏せて!!!
音ではない菊原の声が脳内に響く。言う通りに地に腹をつけ、闇の中でぐるぐると視界を回す。突然のことで何も理解できない。しかし砂埃の中、何かの影がずるずると地を這うように動いている。ぎゅ、ぎゅぎゅギュ、と硬いものと硬いものが擦れ合うような不快な音を立てながら。
俺はその音に、非常に覚えがあった。つい最近、昨夜山の中で聴いた音とまるで同じ。しかしこんなものはあり得るはずがない。
シルエットは土埃をかき分け、こちらに突進してくる。いくつもの関節部分を折り曲げ、夥しいまでの足を動かして。
ああ、そうだ。その姿は。あまりにも巨大なその蟲は
多くの人々の嫌悪を集めてきた、ムカデ。
宵闇メイロウ奇譚 @richokarasuva
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。宵闇メイロウ奇譚の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます