用無地天

『こうやって連絡することもできるから。範囲は学校の中ならいつでも届くくらいしかないし』


ぷは、と息を吐き出す菊原。


「息を止めてる時しか使えないからあんまり長くはできないけど。ちょっとした指示くらいはできるんだ。便利でしょ?」

便利…か?息を止めてる間しか使えない、というのはかなり大きなデメリットじゃないか…?俺は一瞬首を傾げかけたが、認めなければそれなりに詰められるかもしれない。後回しになっても面倒なので素直なふりをして頷いておいた。コイツも満足そうに頷いた。単純だな。


「それで…今回のターゲットの話だけど。君、今座ってる場所がどこか分かってる?」

「え?」


俺は体の周りを見る。瓦礫が散乱しており、砂埃で俺の服は白く汚れてしまっている。

そして結構な傾斜を感じるこの床。小学生の頃見にいった湿布工場ではこんなものはなかったが…しかし俺も詳しくはない。こういった工場もなきにしもあらず…なのやもしれない。


「うーん…君ってば順応性が高いのかな…不自然なものがあってもこれはこういうもの、って対応しちゃうタイプ?新しい世代はみんなそんな感じなのかな?」

困ったような顔を浮かべると、菊原は上を指差す。これならわかるかな、と。

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