地獄への扉は、むしろ安物である
まさか、と思いながら、すっ、と指を滑らせてみる。黒板に触れた時によく似た、あの乾いた感覚。粉末が指にくっつくあの感触もあった。しかし指には何も残らず、当の扉も何の変化もない。
「そう言った種類の結界なの。外側からは基本無理。内側からも…いけなくはないけど。たださっきも言った通り、決まった入り口がある」
巨大な扉、その横の、アルミのドア。そこをかちゃり、と軽い音と共に、いとも容易く開ける。
「結界において、完全な密閉というのは不可能なの。固ければ固いほど、どこかに致命的な穴を開ける必要がある。それがこれってわけ。探すのは面倒だけど、見つけてしまえばどうってことないの」
しかし、そのドアの向こうは何も見えない。闇、というか黒を物体化してドアの向こうの空間に敷き詰めてあるように錯覚するほど、ひと欠片の光すら転がってはいなかった。
「なぁ…本当にここに入るのか…?」
「何ビビってんのさ。着いてきたのは君だよ?」
お前が連れてきたんだろ、と反射的に思ったが、思えばこいつはほとんど強制していない。本当に、着いてきたのは俺なのだ。
「ほら、行くよ。初めては頭が捩れるような気がしてめちゃくちゃ痛いけど、一回入ったらもう慣れるから」
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