木魚

ぼーん、ぼーん、ぼーん


「なんか木魚に聞こえてきたねー。正直縁起悪い」


菊原はそう言うと、すたすたと俺の横を素通りする。


「こっちだよ天見くん。こういうのには、ちゃんとした入り口ってものがあるんだ」

「ええ…」



じゃあ最初から教えやがれ。俺に蹴らせて嫌なコメントをするよりも言えたことだろうに。

全く、読めない奴だ。


「あと、外部からの破壊は基本的には無理と考えた方がいいかな。さっき蹴ってた場所、傷とか凹みどころか、靴の痕すらついてないだろうから」


そう言われれば、俺は当然、その場所を確認するわけで。この金属扉は決して綺麗なものではない。色落ちがしており、何やら粉末でコーティングされているからか、何かが擦れた痕、落書き、そして指紋がベタベタとついている。そう、指紋がつくならば靴の跡がつかないわけがない。俺はすぐに俺の蹴ったであろう付近を見回すが───一切、そういったものは見つからない。靴の痕自体は見つかったが、俺の運動靴の裏面とは似ても似つかないものであった。

無論見失ったわけではない。俺の今の視力なら、見失わない方が逆に難しいレベルである。

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