コンヴィニエンス・ボデー
そして
「知ってる?日本国家は私たちみたいな存在を法律の観点からは認めてないんだよ。だから私たちに憲法は通用しませーん」
菊原はなんの躊躇もなく法のラインとも言うべきそれをくぐり抜けていく。まぁ…それはそうかもしれないが…。
「大丈夫なのか?警官がまだ近くにいるかもしれないだろ」
「大丈夫でしょ。この分じゃあ警察がろくに調査できてるはずもないし」
発言の意味はあまり理解できなかったが、今はこいつに着いていくしかない。肉体は人外のそれかもしれないが、精神は真人間のそれな俺は、周りをキョロキョロと見回しながら、規制線の端っこを通り抜けた。
焦げ臭さが駐車場でも伝わってくる。こほ、と少しばかり咳をした。以前よりも匂いなどに敏感になったのか、その煙っぽさの中でも様々なニオイが鼻に伝わる。少し酸っぱい臭い、埃っぽい臭い、木の焼けた臭い。鼻を保護するため、鼻水まで垂れてきた。
「大丈夫?天見くん。風邪ひいたの?ダメだなぁ、ちゃんと体調管理をしなきゃ」
「ちげーよ。ただ少し…臭いがキツいだけだ」
ずびずび、と数回鼻を啜れば徐々に慣れてきた。どうやらこの肉体は適応能力も充分に高いらしい。便利な体、と初めて思った。
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