老化
一瞬、二人の間に沈黙が流れる。調子の合うようで全く揃わない二人の足音のみが、延々と響く。
昨日もそう言えば、同じような状況だった。違うのは俺の前にいるのが長身の男か、俺と同い年の女子なのかの違いだけだ。
いや、同い年ではないのだっけか。俺よりもずっと前から生きている───つまり
「婆さん…?」
「なに」
ぎゅるん、と、かなりの速さで菊原の首が回る。初めて明確な殺意を、彼女から感じた気がする。
「さっき、なんて言った?」
ちょうど街灯が前にあり、逆光で彼女の表情を隠す。きらり、と赤っぽい瞳だけが顔に浮かんでいた。
やばい、地雷を踏んだ、と感じた、俺と菊原との間がびりびりと揺れる。
指一本、動けば俺は瞬時に身構えていただろう。昨日と違うのは、10:0で俺が悪いということだ。
「って」
ふっ、と菊原から軽やかな吐息が漏れる。緊張感が、解けて消える。
あっっははははは、と甲高い声が辺りに響く。周りは田園、民家すらないのだから。
「本当にビビってんじゃん!なに?私がそんな、年寄り呼ばわりくらいでキレるとでも!?」
キャハハ、と身を捩らせて笑う。じゃあさっきの殺気はなんなんだよ。あとビンタ。忘れてねぇからな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます