罪悪感と平手打ち

もう、せっかちだなぁ、とこぼした後

「今夜、そこに行こう?」




校門に夜9時集合ね!と自ら指定した菊原は、その集合時間を20分オーバーしてやっと合流した。


「なんで遅れる?」

「ごめーん、昼寝してて。寝坊しちゃった」


悪びれずに言う菊原。正直何を言ってもこいつには通じないだろう。俺は口を噤むことにした。いつか自分が痛い目にあって理解を…するだろうか。痛い目に遭わせた奴に殴り返すとしか思えないのだが。こいつの性格を見るに。


「はぁ…」

「なに、そのため息は」

「いや、お前が心底羨ましいなぁ、と」


わかりやすいくらいの皮肉を言った。いや、ここまで来るともう嫌味か。


彼女の返答は


笑顔の平手打ち、であった。気温はマイナス1度。俺が悶絶したのは言うまでもない。

理不尽だ、あまりにも理不尽だ。俺の心中の叫びが届いたのか定かではない。ただ確実に言えるのは、それが届いていたとしても、こいつは謝罪するような精神性を持ち合わせていないということだ。



「で、これからどこ行くんだっけか」

右頬を抑えながら俺は菊原の後ろをついていく。やけに熱を持っているので、相当真っ赤に腫れているのだろう。


「廃工場って言ったでしょ?さっきので記憶飛んじゃった?」

「かも知れない。めっちゃ痛かったからな」


あはは、と笑う菊原。やっぱりごめんのひと言もない。

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