内緒話を窓際で

「千嗣にも同じこと言われたけど、何で勝手に決めてんの?って感じ。あと死んではない。ただ瀕死ではあったから休眠状態だっただけだよ。数時間眠ればぴっかっぴかの桐李ちゃんが復活するってわけ」


昨日と同じ化学室で、昨日と同じように、菊原は笑っている。


俺は思わずため息をつく。あんなに反省した俺の心を返してほしいくらいだ。そう、思い返せばこいつが俺を投げつけた上に爆笑するなんて所業を行わなければもう少しマシにコトが運んだはずである。


「あー…そうだね、簡潔に言うと、君が私を本気で倒さないと君は一生私の奴隷になってたんだよ。理由は聞かないで。そういうルールってだけだから。だから理由は──怒らせるためってことで」

「本音は?」

「ドッキリ、かな」


堂々と言い放つ菊原。次は俺が投げ落としてやろうとも思ったが、そうしても何の解決にもならない。


話の決着が着いたら投げ落としてやろう。


俺の怒りが伝わったのか、まぁまぁそうイキリ立たんでくださいよ、と妙な口調で俺を制す菊原。


「私だって失うもんは失ったんだから。それに免じて許してくれない?」

「何だそれ。プライド、とか言ったら本当に投げ飛ばすからな」

「惜しい、ひとつはそれなんだけど…ちょちょ、聞いてよ、冗談だって!」

「…じゃあ何なんだよ」

「ないしょ。君に話してもちんぷんかんぷんだろうしね」

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