血まみれのベッドと、恋人にするには不適な彼女

千嗣は時計をちらり、と見る。もう、夜の八時を回っていた。


「おっと、もうこんな時間だ。お金は出すからタクシーを呼ぼう。あとは、親御さんに電話を」


「いや、大丈夫」




「俺の家、親いないから」




夜の2時を回った頃


「うわ…血塗れで起きるとか最悪なんだけど」


赤い髪の少女は、4時間ぶりに言葉を放った。


「起きた?ついに死ねたのかーって思ったんだけど」

「バカ。私は美しい景色の中死にたいの」


体を起き上がらせ、ベッドに座る桐李。それを見ながら千嗣が言う。


「じゃあ君さぁ。もう二度とあの子を煽るんじゃないよ?いくら君との眷属関係を断ち切らせるためって言っても、君の不死性をぶち抜いてくるような子じゃないか」

「それは私も予想外だったんだって。本気で殴らせて負けるつもりだったのに、まさか死にかけるとは思わないじゃん。って言うか」



「その様子だと、アンタもピンと来てないってわけね」「当たり前だ。君自身がバグみたいな存在なのに、それ以上のバグなんて予想つくわけもない」


とりあえず、と千嗣


「彼の恋心については少なくとも黙っていたとも。あれが彼の魂を繋ぎ止めてる楔なんだろ?」

「それについてはありがと。やれやれ、そういうふうに使えるほどのモノを、私に対して抱いてくれてるなんてね」


しみじみ、と彼女はつぶやく。


「それじゃ、私お風呂入るから。シーツ換えといて。あと、制服どうにかしといて。明日学校行くから」

「え?いや、私天見くんにもう君を会わせない感じで話してたんだけど」

「は?なんで?」


一瞬の沈黙の後、千嗣が虚空を見つめ、しみじみと


「……なんで天見くんは君みたいな子を好きになったのかなぁ…」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る