あんなに明るい顔をして

「妖怪ってのは、案外人と変わらない見た目をしているものが多いんだよ。というか、夜という時間の所有権が妖怪達から人に渡った時生き残ることができたのが、そういう姿をした者達だった、ってことだけど。もちろん化け物然としたヤツもいる。特にここみたいな田舎は、夜には人が引っ込むお陰で化け物が生き延びることができてる」


まぁ、あんなに強いのが普通の人間なわけないから、彼女に関しては逆にわかりやすかったかもだけど、と肩をすくめ、チツグは続ける。


「妖怪には大体ルーツがあるものだ。たとえば、死ぬべき時に死ねず、もはやその種としての埒外に行ってしまった存在。猫又とか、九尾の狐とか。あとは山犬もその一種かな。だけど彼女に関しては私もわからない。彼女曰く覚えていない、ということだけど、本当かどうかすらわからない。ただ、」


彼女は死ぬことを望んでいた。


「あんなに明るい顔をして、死を語る女の子が他にいるかい?」



俺は言葉に詰まる。ああ、そうだ。アイツは楽しそうだった。俺を殴っている時も、そして俺がアイツを殺している時でも。あれはきっと、そう言ったものを呑み込んでしまったからなのかもしれない。どうにも、俺は居た堪れなくなってしまった。こちらが殺されかけたと言うのに。

俺は思ったよりもお人好しなのだろう。いや、中途半端なのか。

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