暗夜行路


「拝み屋?」

「おや、聞いたことはなかったかい?やれやれ、広告でも出すべきかなァ。若い客の来ないお店は衰退していくばっかりなのは分かりきっているだろうに。最近はテレビCMもイマイチって聞くし、ネット…いや、あれは不快だ。セルフネガティブキャンペーンになっちゃう」


この男は───果たして何を考えているのだろうか。肩には死体が乗っていると言うのに、涼しい顔で軽い言葉を吐き続ける。

こうまで中身のない言葉を話せるのも一種の才能だろう。

俺が密かに呆れている時も、当の本人はラジオだラジオ。ラジオCMにしよう。ローカルならそう資金も掛からないだろうし、と納得している。


「で?なんだっけ」


お前が拡げた話だろうが。


「いや、いい。帰ってからググる」

「まぁ、実際の仕事ぶりを見て欲しいねェ」


ずっと奴の後を着いていっているが、どうにも変な道だ。国道沿いの大きな道を通ったと思えば、俺よりずっと背の高い植物の生い茂る荒地を進んだり、ぐるりと回ったと思えば、民家の庭を何も言わず通ったり。


「お前…!さっきのよかったのかよ?なんか着いてっちゃったけどさ…」

思わず指摘した俺に

「別に。見られても今まで一回も注意を受けたことがない。何より、このルートが近いんだよ。私の家は山の中にあるから、あまり遅くなるのはいけない」


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