拝み屋
手は、ランタンを掴んだ。
「なんてね。私では到底君に敵わないよ。一発殴れたとしてその瞬間君にラッシュ決められて人生ノックアウトさ」
冗談は言うもんじゃないな、と立ち上がり、男は菊原の遺体を肩に担ぐ。
「ちなみに、さっきの3択ならふたつめだよ。泣き寝入り。私は誰にも、何も言わないし、証拠すら全部抹消するだろう。君は逃亡なんてしなくてもいい。何も気にせず、大手を振ってお天道様の下を歩けばいい」
これは本当だよ、と男は言う。
「何が目的だ?」
「何も?」男は肩を竦めた
「別に、君は何も悪く無いってだけ。無罪の人間に罪を着せるほど、私は悪人じゃぁ無いからね」
男は菊原の遺体を何ともなしに背負い、また、闇の中に溶け込む。あの、砂利を踏み締める音が遠ざかっていき───
そしてまた戻ってきた。
「もしも、もしも君が、彼女のことを、そして君自身のことを知りたいならば───ついて来なさい」
俺は一もなく二もなく、そいつに近寄る。それが返答の代わりだった。
「なら、私の家にご案内するよ。この町唯一の拝み屋である、私の家に」
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