灯り

しかしそれよりも、じゃっ、じゃっ、と砂を踏み締める、独特の音がする。普通の靴のものではない、それよりもずっと薄いもので砂を押し潰す音。


「ヤァ」


軽い声と同時に、ぬ、と闇から下駄を履いた、白い足が飛び出てくる。

足首に沿って上を向けば、紅色の帯がぼうっと闇に微かに浮かんで、さらにその上に、赤いランタンが、男の白い顔を照らしていた。


季節が季節ならば幽霊かと思ったが、この薄寒い季節だ。出てくる時期を間違えている。


「おや、もう少し驚くかと思ったけど」

「季節が違うでしょ」


よく見れば男は着流を着ているようだ。幽霊でなくとも、幽霊でもどちらにせよ季節外れには間違いなくなった。妙な虚しさを感じる。


「ハッ、そりゃあ確かに。季節感も意識してみるか」

反省反省、と彼は帯を直す。そして、彼は俺ではなく、俺の横、死んでいる菊原を見た。


「その子は?」

長身の彼は体を屈める。初めて俺の角度からそいつの顔が見えた。妙な男だった。

こんなに暗いのに、丸いサングラスを掛けている。しかも光を通しにくい、この闇の中でも、彼の瞳が透けて見えないのだ。

そして尚且つ、かなりの美青年であった。こんな田舎でここまでの美形がいたならば、すぐにでも話題になるだろうが───


「死んでます」


俺が殺しました。と付け加える。

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