血の爪牙
一瞬、息が詰まった。どう考えてもただごとではない。なぜ、どうして。
俺の脳内は疑問符で塗りつぶされた。セーラー服の質感は固くなっていた。ざらりとした触感から、だいぶ血が染み込んだらしい。
心臓マッサージを、と思ったが
「どうなんだ?胸に穴が空いてるってのに……それって大丈夫なのか?そもそも」
何かをしたって意味があるのか?
冬だと言うのにさっきから汗が止まらない。視界が忙しなく赤くなったり青くなったり黒くなったり、傾いたり回転したりしている。
思わず遠のく意識を離さぬように、俺はぎゅっと拳を握る。汗のぬめりの不快感と共に、何か指先にざらりとした違和感を感じた。それは先ほどの、セーラー服に触れた時の感触と、あまりにも似ていた。
指と指を擦り合わせると、何かがぼろぼろと剥がれていく。
そして汗と混じり、“それ”は糊のように滑り出し、乾いた端から指を接着させる。
人差し指だけではない。中指と薬指、小指までそのざらつきは付着している。
しばらく、俺は指を擦り合わせるその作業を繰り返していた。こうやって、指を接着させているこれが、俺の類推しているものではないという理由を、証拠を、理屈を探していた。
何度も何度も繰り返せば繰り返すほど、俺の仮説は洗練され、研磨され、純度を増していく。
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