禁忌、それは、血の味とともに
ああ、そっか、聞こえてないのか、なら、言ってもいいかな。
「天見くん、そうだね、あの時は君のこと、あんなふうにフっちゃったけど」
一歩、前に出る。
「今なら言える。君は、私の運命の人だって。君がああやって、私に告白しなければ、そして私に殺されなければ、君の秘めた、その才能に気づくこともなかった」
昨夜、彼女はある罪を犯した。それは何よりも彼女の忌避していた───殺人。
化け物として、決して彼女が破るまいとしていた禁忌。
それはあるひとつの恋心が起因となり、そして結果として、想い人のせいで、その未来を失った。
そして、その化け物──菊原桐李はその罪を償わずに、あるイカサマをした。この世の理に反する、許されざるイカサマを。
彼女の呪われた血は、彼の舌を伝い、そして体内に染み込む。
それは死した肉体に、魂を繋ぎ止める外法。菊原桐李の眷属として、新たな化け物として、彼はこの世で輪廻の輪を潜った。人としての生と、その淡い恋心を主である少女に奪われて。
何かをするつもりである、と本能的に感じた、天見が飛びかかってくる。桐李は避けることも、防ぐこともしない。心臓を抉るその一撃を、甘んじて受けた。
その漆黒の爪は確かに、こちらの胸板を貫き、肋骨を砕き、そして心臓までも達した。
喉から血が込み上げてくる。堪えられず、口の端から鮮血が溢れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます