相対する
もう恐怖心を超えて耳障りにもなってきた声だ。ほっといてくれと思ったが、こうやって天気を観察しても何も変わらないだろう。死んだふりなど以ての外。多分蹴ってくる。
俺は立ちくらみを起こしつつも立ち上がる。髪とか服のポケットから砂や小石がぼろぼろと落ち、口を動かせば鉄錆の音と共にジャリジャリいう。
「お前さぁ!さっきからなんで俺をボコボコにしてんだ!?なんか殴るような恨みでもあんのかよクソが!」
あまり大きな声で話したことがなかったので、ドスの効いた声など出ない。代わりに不恰好な、裏返った声が響く。
口の中が鬱陶しくなったので俺は唾を吐いた。赤い、粘り気のある液体が地面に付着する。
「恨みは無いよ?特に。『どちらかというそちらの方がある』と思うけど。まぁ、色々と事情があるんだよ」
意味のわからないことを言う。恨みが、俺の方にあるというのか。ならば更に理不尽ではないか。しかもそれを言うのにも、さほど罪悪感を感じた様子もない。
どうやら───コイツは一度、痛い目を見なければ済まないようである。これが俺の正義感なのか、それとも単なる復讐心なのかはわからない。ただ一度でもぎゃふんと言わせなければ気が済まない。
「一発殴らせろ、菊原」
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