鬼ごっこ

「はいタッチ。君の今の速度だと3秒ハンデぐらいで十二分だと思ったんだけど…買い被りすぎだったかな?いやぁ、私の“眷属”なんだからそれくらいは振り切ってほしかったけどねぇ」


まただ。また持ち上げられる。視点が上がっていき、俺の顔が夕陽に照らされる。沈みかけの、真っ赤な陽が目を焼き付ける。

クソが、と腕を振り回してもがいても彼女の腕はびくともしない。そのまま体を捻り───まるでピッチャーがボールを放る時のように、俺を振り向きざまに、そして思い切り勢いをつけて、俺を投げたのであった。


俺の体は錐揉み状に回転するが、しかし人の体の形や重心はそう簡単に真っ直ぐ飛ぶようにはできていない。滞空時間は数秒もなかった。随分と乱暴なランディングで、関節など関係なくメチャクチャに転がり、存分に石ころや枯れ葉の気分を味わう。


テニスコートのフェンスに背中から激突し、俺は仰向けになる。美しい空だ、と俺は変に落ち着いていた。色んなことが起こりすぎて精神の安定を保とうとしているのかもしれない。



しかしながらそんなインターバルは長くは与えられない。

「死んじゃったぁ?」

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