茜色の空、空を舞う

俺の体はそのまま横に投げ飛ばされた。窓を通り抜け、中庭の上に投げ出される。


空を舞う俺を見て、菊原桐李きくはらきりは、心底楽しそうに笑っていた。


俺は重力のなすがままに自由落下する。背中を強く打てば空気が塊になったような感覚と共に、その全てが押し出された。

視界が霞む。全身が痛い。果たしてこれは現実か?それともこの茜色の空があの世の景色なのか。


「こらこら。なにこんなところで死んでんのさぁ!」


赤い点が叫んでいる。視界がはっきりしなくても誰か分かった。菊原桐李だ。俺を二階から突き落とした張本人。


クソが、と毒づいて、俺はなんとか上半身だけ起き上がる。おお、やるじゃん、と彼女の声が聞こえる。

「じゃあ、私も少し本気出さなきゃな〜っ」


体を反ったり、伸ばしたり。俺の嫌な予感は、すぐさま実現することになった。

ベランダから彼女は飛び降りた。俺のように不恰好でなく、まるで冷たい風を伝っているように。


その満面の笑みは俺を震え上がらせるには十分だった。それはおとぎ話に出てきた、オオカミが獲物を食う時の笑顔によく似ていた。我ながら幼稚な連想だったがとにかく、俺にとっての恐怖そのものだったのだ。


竦み、痛んだ体も忘れ、俺は一目散に逃げ出す。案外体が動くものだ、と俺はまた驚いた。


遠く、遠く、とにかく遠く。校門までは50メートルほど。そして───

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