いつもの日常、ではない

目を覚ました俺が感じたのは、強烈な違和感。

いつもの天井に、いつものようにはだけた布団。朝の冷たい空気が辛い。


いつもならば二度寝の誘惑との格闘が始まるはずなのだが───今日はどうもそんな気分にはならない。すぐに制服に袖を通し、いつもより10分以上も早く、家を出た。


しかし、このまま日常を送ることに、俺は言いようのない不安を感じている。何か重大な過失を見落としているような。もしかして、課題を忘れたのだろうか?いや、それとはまた違う気がする。




席に着く。ホームルームまでは随分と長い。

「よ、今日は早いんだな」

とん、と軽く背中を叩かれれば、浅黒く焼けた顔が覗く。

「まぁ、な。今朝はなんか、目が冴えてさ」

「珍しいな。お前いっつも省エネなのに…いや、昨日はやけに緊張してたな。なんかあったのか?」


昨日?


「昨日?って…なんかあったか?」


ん?ありゃ?俺の勘違いか?と、そいつ───明山あきやまツネアキは首を傾げる。それからしばらくして、


「あ、もしかして昨日片付け押し付けたの怒ってんのか?」

すまん!冗談だったんだけどな、と、ぱん、音を立てて手を合わせる。今度なんか飯奢るから!と付け加えた。


「そんなことあったか?」

「う、ホントに申し訳ねぇよ!悪かったって!俺が悪かった!」


ついにツネアキは泣きそうな顔になったのではいはい、と適当に答えておくが────そんなことあったか?

俺は意図せず心中で復唱した。

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