第5話 繋がり

 家に帰って俺は昔の図書館放火事件の記事を見ていた。

 記事にはこう書かれている。深夜に4人で煙草を吸いながら歩いていたら、仲間の一人が煙草を捨てて火が出たという何とも間抜けな記事だった。だが他の記事を見てみると理由は何も書かれていない。捏造なのだろうか?この新聞を作った会社はもう既に倒産していた。記事を見てみると名前が書かれているその中には........俺の母の名前が入っていた。

 調べていくにつれ分かったことが二つ、まず自分の母親の名前と咲の父親の名前があること、そして........本居のおじいさんが殺されたであろう事件の犯人の名前も浮上していた。

 そして、その中で母親を除く一人だけ何も事件を起こしていないやつがいた。名前は渡辺 和人(わたなべ かずと)。俺は父が返ってくる前にできるだけこいつの事を知ろうとパソコンの画面にしがみついていた。

 あぁまた同じ夢か、俺は元カノを殺した。彼女には他の男がいた。金に困っていてたまたま一つの家に行ったらそこには俺の元カノがいた。彼女は俺に向かって「誰?」としか言わなかった。俺の事はもう忘れているらしい。俺はパニック状態に陥り、近くにあった白い本で彼女の頭を殴った。何度も何度も何度も殴って、何も奪わずに逃げていた。

 あれから5年、周囲は目まぐるしく変わっても俺は変わらなかった。空き巣を狙う犯行を続けても腹にたまるものは食えない。俺はこれからどうすればいいのか、そんなとき、一台の高そうな黒の車が目の前に現れて、「やっと見つけたぞ」と言うなり銃を構えて...........――――――――。

 ついに、ようやく復讐をできた。手に持つのは白い煙を出している銃。目の前には横たわっている一人の男。でも明美はいない。目の前の男に殺されたのだから。殺してもこの胸にぽっかり空いたような穴は埋まらなかった。(家に帰ろう)

 なぜあのような特別措置を出したのかは自分でも分からない。ただ俺はあの白い本の1ページを読んだだけだった。

 たまたま古本屋にあった明美がよく読んでいた本を読みたくなり、ページを開くとそこにはこう書かれていた。

 ここに一人の男がいました。彼は彼女を殺した人を酷く憎んでいました。彼は........。そこから先は何もない。ただの空白.....のはずなのに怖くて足がすくんでしまった。そしてページを読み進めていくと....。

 今はもう亡き人がいました。彼女は本を読むのが大好きで幸せな毎日を過ごしていました。しかし、彼女は昔、愛した人がおり、その人の色に染まりかけていました。そして、再開した昔、愛した人の事を忘れており、彼は彼女を本で殴り、殺しました。

 なんなんだこの本は.....そこから先には何もなかった。ただの空白、なのに怖くてたまらなかった。

 そして俺は特別措置として、本の廃止を行おうと決めた。

本居のその後:家に帰って、本読んで、飯食べて、風呂入って、寝た。

霧崎のその後:父が帰ってきたのは夜中の1時、俺はドアの開く音で気づいた。でも眠いから寝た。

川井のその後:家に帰って、明日の準備をして、最後に智也観察日記を一通り目を通した。

峰のその後:......霧崎が出て行った後、私はいつも通りに過ごした。

 あれから色々調べていくにつれ分かったことがある。おそらく渡辺 和人は自分の母を殺した相手だと、理由は二つ、その1:母との交際関係があること。その2:父がそいつの事を少し前に調べていたから。

 しかしこれだけでは確証にまでは至らない。やはり、あれをするしかないか。俺は部を作る用紙を手に持って学校に向かった。

 最近NoNameがぐいぐい来る....うざい....まともに本が読めないイライラで俺は機嫌が悪かった。今日も「おい、本居。俺の部に入らんか?」と訳の分からないことを言って来たからまた3を選んで全力ダッシュで振り払って来た。

 はあ....やっぱり逃げるか。あいつをどうやって部に入れるかで悩んでいると、

 「どうした。変な顔して」となぜか隣に咲がいる。

 「なんでここにいる?」「ひさしぶりに来ようと思って」「そうか」

 ってなるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 「いやいや、それだけ?」「いや、昨日の事冷静に考えたら悪いことしたなと思って、しょうがなく来たんだよ(ほんとはメディアのやつらがうざいから気分転換に来たんだけど)」「...昨日はごめんな急に話せって言っても話しづらいよな?」

 俺は父の真意を知りたくて焦っていたのかもしれない

 「.....いや、私のほうこそごめん。話も聞かずに追い返して」

 ついでに咲にも伝えておくか

 「なあ咲」「ん~?」「おまえ俺の作る部活に入るか?」「...考えておく。じゃ私はこれで」

 咲はそういって立ち去ってしまった。

 しばらく歩いたのち、前方に3人の女子が出てきた。

 「峰さん、ちょっといい?」

 3人のうち一人がそう言い、私は言われるがまま付いていった。

 ......ガン!!フェンスに強くぶつかり、私を蹴る。

 「犯罪者が何で来てんの?」「「そうよ、そうよ」」

 あぁやっぱりか、私はこうなることも大方分かっていた。ただ今はその身を楽にしておこう。彼女たちは笑いながら私の事を蹴ったり、殴ったりするだけ。でも突然それは止んだ。

 目を閉じていたから何も見えない。目を開けるとそこには陽菜ちゃんが居た。片手に一枚の写真を持って、

 「あーやばーい変なもん撮れちゃったー(棒読み)」「どうしよっかなー?(棒読み)」.....なんで棒読みなのかは分からないが一番会いたくない人に会ってしまった。

 3人組は逃げて行った。陽菜ちゃんはそっぽを向いて私に手を差し伸べてくれた。

 「ありが....」「礼なんていいわ。それより、聞きたいことがあるんだけど」

 ありがとうと言おうとしたら遮られてしまった。

 「何?」  

 彼女は一度深呼吸をしてから言った

 「“私を助けてくれたのはあんたでしょ?”」

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