第4話 犯罪者の娘は.....

 幼い頃から本が好きだった。いつもパパが欲しい本をくれるから、物心つく前からパパが読み聞かせをしてくれたから、理由は数えきれない程ある。

 パパは.....。 

 夢を見る。毎日同じ夢、私にとっては悪夢のような夢。それでも向き合っていかないといけない。私のパパ、峰 大蔵(みね たいぞう)は犯罪者だ。

 パパが捕まってからもうすぐ4か月が経とうとする。あの日以降、私は学校に行けないでいる。パパが捕まったことよりもショックだったのは昔からくれていた本が全て盗品という事だった。....パパは今何を考えているんだろう。ふと時計を見ると早朝の5時だった。

 目覚めはけたたましく鳴るアラームのような音だった。この音には慣れている。

俺は一人の娘を持ったシングルファーザーだ。妻は娘を生んだ直後に容体が悪くなり先立たれてしまった。

 妻の真奈美(まなみ)は優しい人だった。俺の過去の事を言っても受け入れてくれた。でも、真奈美はもう帰ってこない。あの優しい笑顔を俺はもう一度見たかった。

 でも俺は犯罪者だ。今も昔も罪を重ねるだけだった。俺の人生はこうなると初めから決まっていたんだ。今はそんな言い訳をすることしか出来なかった。

――今日は何をしようか。とりあえず私は朝食を作って食べた。.....そろそろかな。

 ピンポーンと私の予想が当たったかのように家のチャイムが鳴る。しつこいな。今日もメディアの奴らが来る。私が聞きたいのに相手はまるで考えなし。

 「すみませーん、〇〇のところから来た○○です。お父様について何か言いたいことはありませんか?」

 これがいつもだ。こういうのは無視に限る。もし仮に「無いです」と言えば、私が家にいるという確固たる証拠となるし、なによりあいつ等は本当の事を言っても肝心な部分を切り取って、本当はあまり悪くない人たちまで悪いようにする奴らだ。私も悪くなるのだろうか。今も昔もメディアがすることは同じだ。ニュースを自分たちの良いように編集して、流して、国民を怯えさせたり、笑顔にする。その姿はまるで闇の支配者のような、そんな後ろめたい何かだと思った。

 とりあえず今日は学校が送ってくれたものに一通り目を通して、プリントを終わらせて寝よう。そう考えていると、メディアの一人が帰っていったみたいな静寂さが帰ってきた。....私の人生の中で一回もいいなと思ったことはなかった。

――やっと授業が終わった。後は帰って本を読むだけだ。俺は帰りの支度を始めた。

 「おい、本居、ちょっといいか?」

 ここでクラスメイトの(名前が分からないからとりあえず)NoNameとエンカウントした。1戦う2話す3逃げる なんかRPGみたいだと我ながらあのドラクヱの初期の曲を脳内再生していた。

 とりあえず話を聞こう。2話すを選択

 「何?」

 「俺に付き合え」

 3逃げるを選択。それからの行動は早かった素早く鞄に物を詰めると、そそくさと廊下を全力ダッシュ

 「あ、待ってよ!」

 とりあえずめんどくさそうだし帰ろう。帰って本を読むんだいち早く。俺の人生の全てを本にかけてもいいと本気で思っていた幼少期の記憶が今になって出てきたが、何で今更そんなことを思い出させるのだろう。俺は不思議でたまらなかった。

――ずっと考えていたがやはり父の思惑が掴めないでいる。いや、情報が少なすぎる。今の俺には情報を集める技量が備わっていない。....やはり、こうするしか無いのか。一番手っ取り早いのは....陽菜か....。残念なことにあいつは神出鬼没の幽霊みたいな存在だから、出会える確率が極めて稀だ。その理由は.......。

――フムフム。廊下を行き交う人が多いけどこれならバレずに尾行できるわね。私は観察日記を手に持ち、常に霧崎を監視している。どんな些細な仕草も逃すことなく。

―とまぁ絶対に後ろにいるであろうあいつにどうやってコンタクトをとろうか?無理だろ、もし、無理やりにでもとろうとすれば絶対逃げるし、厄介すぎる相手だった。となれば後は本居かな。んで今に至ると、あいつも逃げるし今日はとりあえず昔のニュースを見漁るか、そんな時、教師の一人が寄ってきた。

 「霧崎くん、これを峰さんの家に届けてくれないか?」

 自分で行けばいいものをなんで俺に押し付けてきたんだろうか、ただ、これだけは言える。今は好都合だと。

 「もちろん、いいですよ」

 峰 咲(みね さき)は昔のある一件以来関りが無い。陽菜に問い詰められてもこれだけは言えなかった。 

 「ねえ、霧崎くん。陽菜さんと仲良くするにはどうすればいいの?」

 陽菜がいじめられた原因でもあり、解決した者でもあり、きっと陽菜は峰を恨んでいるだろうから。でも、いつかは話さないといけない。俺の人生はまだまだ続くんだから。

―珍しい人が来た。またメディアのやつらだと思って無視しようとしたが違った。

 来たのは霧崎くんだった。プリントを私に来たそうだ。

 「ほら、これ」 

 これは数学のプリントだ。たくさんの問題が出ていた。

 「ありがとう霧崎くん。でも、珍しいね君が来るなんて」

 私は彼の事を知っている。昔のいざこざの縁だ。これは大切にしていきたい。

 「早速で悪いが、お父さんの事件について教えてくれないか?」

 前言撤回。こいつもメディアの人と同じか、

 「帰って」 

 話にならない。

 「分かった」

 彼はすぐに帰っていった。

―やっぱり、ダメか。この様子じゃ俺の株が暴落したな。まだまだ前途多難だな人生って。俺は沈んでいく太陽を見ながら家に帰っていった。

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