第207話 遺伝子に微笑む

カツン… カツン…



こんなに日本の物は低かったっけ。

横浜を歩いて、僕はそう思った。

あれから三年経って背が伸びたからきっとそう感じるんだろうな。


声も、18の頃と比べたら低くなった。

…カファロベアロ人って、多分普通の人間より少しだけ成長が遅いんだよね。

…それも、今だから思う事だけど。




シャカシャカ!



僕は柳さんといつも行っていたショッピングモールで買い物をした。

彼との再会に絶対に必要な物を。


安物のピンはすぐ剥げるから買ってはならない。

必ずクロスさせて止める。


あの頃着ていたような腹は流石にもう似合わないから。

でも今日だけは、このピンを着けよう。



「…ハァ。…寒いな。」



…柳さん。貴方はきっと怒るだろう。

『先に門松さんに挨拶しろや!?』…と。


でもごめんなさい。

今日は、今回は、どうしても先ず柳さんに会いたいんです。



「…!」



……あ。



「っ、……柳さん!!!」







シスターの意識が戻らないことについて、僕は最初、多くの人を助けた代償と考えていた。

…でも今は、少し違う気がする。


あの瞬間、シスターはヤマトに法石を投げていた。


シスターには僕なんかじゃ想像も出来ないような広い世界が見えている。

そしてあの瞬間咄嗟に法石を投げたということは、きっとそれがヤマトを助ける方法だったんじゃないかって。

…だから僕は、こう考える事にした。

『シスターは今、ヤマトを探しているんじゃないか』…って。


だって、忘れてはならない。

僕の不幸はFluoriteが滅ぼしてくれるんだ。

…ヤマトの居ない世界は僕にとって不幸だ。


だからきっと、…きっと。

きっと…、明日は僕らに必ず訪れるから。


明日以降を生きていくんだ。

僕らはたった一つの世界の、明日を。





「「「カンパーーーイ!!!」」」



柳さんと門松さんと。

ギルトとジルと海堂さんと、焼き肉を食べた。



「…肉食っててもイケメンでイラつくわー。」


「?、…柳殿も流石のお顔だと思いますが。」


「どういう意味だー?」


「?、私の祖先は柳殿で」


「わわわギルトほら!?、カルビ焼けたよあーん!?」


「そ!?」


「じゃあ私が食べる~💖!」 パク!


「………」


「門松さんの食の好み、僕好きです。

今度美味しいお店を教えて頂けませんか?」


「んー?、明日でも行くかー?」


「…日本の焼き肉は美味しいですねオルカ様?」


「…僕ガーリックライス食べたいな?」


「とても宜しいかと。」



ジュゥゥゥ… パク。パク。パク。



本当に、二人してお肉ばかり食べていて…。

…やっぱりとても、可愛かった。


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