第118話 特別なキス
「でかくなったなこいつっ!?」
「あはは!」
「お前が居なくなったって聞いた時は…もう!
てかお前!?、勝手にアングラ出やがって!?」
「いたたっ!、も、もう時効ですよ!」
「許すかこのこの~♪!!」
「あははっ!」
イルとロバート、二人との再会は最高に気持ちよかった。
二人とも突然の再会とハグに数秒放心したが、すぐに歓声のような声を上げオルカを受け入れてくれたのだ。
そこからはひたすら言葉の飛び交いだ。
三人ともお互いに話したい事ばかりなのだ。
「海堂さんとツバメさんにはもう会ってきたんです!、それで、シスターはここでまたシスターをしていると聞いて!」
「そうなのっ!、兄弟達も皆元気よっ?
ああ嬉しいわオルカ!、もっとよく顔を見せてっ?」
「っ…!」
イルに両手で顔を包まれると、嫌でも照れてしまった。
ロバートは男の反応をしたオルカに『成長したんだなあ』とじーんとしてしまった。
(あのオルカがな~。)
「とっっても端整な顔立ちになったわねっ!
とっっても素敵よっ?」
「は、恥ずかしいよシスター。」
「! あらごめんなさいついっ!」
驚いたように手を離したイルに、オルカは『こんな感じだったっけ』と動揺していた。
たった三年前までただ母のように感じていたのに、こうやって成長して対面してみると…、イルはとても品があり笑顔は輝く太陽のようで。
…で、胸も豊満で。
正直目のやり場に困ると感じた。
(…結婚したのかな。
でも女性にそういうの訊ねるのはな。うん。)
その時ノシッとロバートが肩を組んできた。
ニヤニヤのロバートに先程の赤面についてつつかれるか?と警戒したが。
「…彼女できたん?」
「え!?」
「だーってその顔にその品格で、不思議な服だが似合ってるし?
…色気付いちゃって~彼女くらい出来たろ~?」
「べ!、別に!」
「いやあね話に混ぜて?、寂しいわっ?」
「なんて事ねえ話だぜ?
…ってか三年も何処に居たんだお前。」
(今なんだ💧)
一歩遅れたが、オルカは説明した。
『本当の世界という場所に居た』と。
それを聞いた途端にイルは顔を固め口数を妙に減らしたが、ロバートは『なんだそりゃ?』と質問を繰り返した。
「ズッ!、いい奴じゃねえかカドマツとヤナギ!」
「そうなんです!、ズ… 僕は二人が居たからなんとかやっていけて!」
「そんなん…良い奴らすぎんだろおお💦!!」
「そうなんです!!」
ロバートは相変わらず良い奴だった。
始めこそ『信じられない』と聞いていたが、最後にはオルカと一緒に門松と柳を絶賛し、共に感涙を流した。
だがイルは彼女ではないかのように静かに話を聞いていた。
真っ直ぐにオルカを見つめながら。
オルカはまだまだ二人と話し足りなかったが、ふと『あれ今何時?』と我に返った。
「今夜海堂さんの家に呼ばれてて。」
「まーたあいつかよ嫌んなるわまったく!」
「あらあらそんな風に言わないであげて?
今はね、もうすぐに5時よっ?」
「う…へ!?」
なんと約束の時間ギリギリとなってしまっていた。
オルカは慌てて立ち上がり、急ぎ海堂の家に向かうために走った。
彼は忘れているのだ。
カファロベアロはそんなに時間にうるさくないのを。
「忙しくてごめんなさい!、また!」
「おう!」
タッタッ…
「…あ!!、自分でサプライズしたいので、皆にはまだ内緒にしてもらっていいですか!?」
「えええええ!?」
「ふふ!、…ええ分かったわオルカ?」
「すみません!」
タッタッ… スタタタタ!
一回出て行ったのに、オルカはまた戻ってきた。
ロバートが興奮冷めやらぬ様子で『どしたんだあいつ?』と首を傾げていると、オルカはイルの腕を掴み引き寄せ、しっかりと腕に抱いた。
「ただいま。…イル・サファイア。」
チュ…
しっかりと抱き締めそう言うと頬にキスをして、またオルカは良い笑顔で走り出した。
二人に大きく手を振りながら。
オルカの姿が見えなくなると、ロバートは腰に手を突き優しく笑った。
「…ったく。勝手にデカくなりやがって。」
「~~~~っ…」
「…ん?」
隣を見ると、イルがプルプル震えながら顔を真っ赤にしてキスされた頬を押さえていた。
ロバートはガンッ!!…とショックを受け、『俺でさえ見たことがない顔してる!!』と凹んだ。
「あっあらヤだわっ!、…恥ずかしいっ💦!
きゅ…急におっきくなっちゃったんだもの!
…キュ!急に名前で呼ぶだなんてっ💦!
こんなのサプライズがすぎるわっ💦!?」
「ソウデスネエ。」
「もっもうヤだオルカったらもうっ💦!!
ハッ!!…いやあね私ったらオルカ相手にこんなっ!だっだって、ねえ!?、…しっかり男の子になっちゃって!!でもあれよ!?そういう目線で恥ずかしいわけじゃないのよっ!?、でもとってもセクシーで知的で…素敵な男性にあんな風に素敵な笑顔で名を呼ばれたら幼い頃から知ってるせいで余計に恥ずかしくなっちゃうものでしょ!?それに私は親衛隊なんだものっ!、素敵な王に仕えるのは憧れだし名誉なことなんだものっ!?」
「……あーい。ソウデスネ~。」
自覚無い系やらかし男子全開。とは気付けず、オルカは王都の外に駆け出た。
脳裏には『五分前行動!!』と怒る門松が。
「あ~これ、…間に合わない!」
オルカは石林に手を翳し、平たいオブジェをゴキンと折り引き寄せた。
そして走りながら石に飛び乗り、パニックを避ける為に一気に急上昇して海堂の家を目指した。
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