第3話 晴れて独身

 俺がBさんどうしてるかなと思った時には、もう亡くなった後だった。

 お葬式行けなかったなと思ったが、密葬だったそうだ。

 何でそうなったか考えたけど、Aさんが喪主っていうのがしっくり来なかったからだと思う。まったく悲しんでいない夫。子供たちを顧みない父親。Aさんの変人ぶりを世間にアピールしても仕方がない。


 子供たちのうち、上の方がちょっとAさんの性質を受け継いでいたらしいけど、下の子は普通だったみたいだ。それでも、祖父母は孫たちを可愛がっていたから、上の子も懐いていた。それで、そのまま祖父母と住むようになったそうだ。


 Aさんは、俺にまた女を紹介してと頼んできた。

「子供たちが待ってるんじゃないの?」と俺が聞いたら、奥さんの実家で育てることになったと言ってた。自分の子どもなのに随分あっさり手放すもんだと呆れた。

「子供かわいくないの?」

「俺になついてないから」

 だろうね・・・と、俺は納得した。


 Aさんは普段、片付けができない人だったけど、奥さんが亡くなってすぐに家族の荷物を段ボールに詰めて、実家に送り付けたとか。宅急便で30箱くらい。

 しかも、前もって知らせていなかったから、受け取った義理の両親は激怒した。


「いきなり送ってこられても、受け取れませんよ」

 父親は怒って電話を掛けてきた。

「うちも引っ越すんで。うちに置いてあっても困るんです」

「え、どこに?」

「僕もしばらく実家に。家にいた時も、何年も何もしてもらえなかったんで。僕も疲れましたから」

「病気だったんだから仕方ないでしょ!あんたそれでも人間か!」

 父親は電話越しで叫んだ。

「すいません」

 Aさんは怒られるとすぐ謝る。面倒だからだ。義理の父はしばらく電話で怒っていたが、Aさんはほとんど聞いていなかった。『あ~あ。早くマッチングアプリみたいなぁ・・・』と思っていた。


「あんた、子どもの顔も見に来ないで・・・」

「でも、僕のこと嫌いみたいなんで・・・」

 Aさんは思ったことを言った。子供たちは自分に会っても絶対喜ばない。それはわかっていた。

「お父さんとお母さんの方が、よっぽどなついてますよ。僕はこれから再婚したいと思うので、子供たちのことは、これからもそちらで面倒を見てください。よろしくお願いします」

 これは結構後の話だけど、長男長女はおじいちゃんの養子になったそうだ。

 

 Aさんは晴れて独身。大企業勤め。

 イケメン。

 3LDKのマンションもある。


 Aさんは奥さんと死別したことは黙ってて、マッチングアプリで知り合った人と再婚したそうだ。奥さんが亡くなって半年くらいしか経ってなかったと思う。後でばれないのかな・・・と、俺はハラハラしている。


 Aさん、俺以外に友達がいないから、俺が黙ってたらばれないか。


 ここまで最低な人はあまりいないと思うけど、発達障害の人と結婚して離婚する人は多い。やっぱり、人並みの思いやりのない人とは結婚しない方がいいだろう・・・。って、当たり前すぎる・・・。

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喪服の男 連喜 @toushikibu

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