第1話 友人の家
家を出て、広い海が見える道を走っていく。
しばらく走って、肩で息をしながら、チャイムを押す。
「はーい!」
少しして姉の友人の赤井沙 怜桃が出てきた。
「どうしたのー?弟くん!」
赤井沙 怜桃はいつも明るい。そして、俺の事を弟くんと呼んでいるのだ。俺はもう15だし、恥ずかしさを覚えつつも、やめてと言ってもきっと弟くんと呼ぶのはやめてくれないだろうと思っているので、もう諦めている。
「梓香の事で…。」
そこまで言うと怜桃は
「悩み事かな〜?とりあえず暑いし、入っておいで!」
「あぁ。はい。」
悩み事と言えば悩み事だが、今ここで何か言っても意味は無いだろう。
「…それで。梓香ちゃんがいなかったと。」
「…はい。」
長机に向かい合って、事の経緯を話すと、意外にもしっかりと話を聞いてくれていた。普通なら話をカットしてくる気がするが…。
「まぁ。梓香ちゃん。異世界好きだものね〜!」
「呑気ですね…。」
思わず心の声が漏れ出てしまう。
「あ。すいません。」
急いで謝るが、「いいのよ!」と言うだけだった。
「それと。」
思い出して急いでカバンから例の紙を出す。
「これねー。高校3年の時に書いたわね。」
「一緒に…。ですか?」
「ええ。そうよ!ゲートを開けたらどんなにいいだろうってね。けれどまさか本当に開くなんてね。なにかいつもより部屋が違うと無かった?」
その言葉を聞いて記憶をたどっていく。
そして、行き着いた結論は…。
「いえ。姉の部屋は常に汚れているので分からなかったです…。」
「そっか…。」
しばらくの沈黙が流れたあと、思いついた。と言うように怜桃が手を打った。
「とりあえず。梓香の部屋に行きましょう。」
転生してしまった姉を持つ弟。 スイカに醤油をかけて。 @sekihan3hai
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