第002話 今日のこと
しかし、食事や庭に連れ出される以外は暇なラプトル生、いやこの世界ではディナルトスという種族らしいのでディナルトス生ですね。
ともかくすることがあまりない状況だったのですが、そこへきての魔法です。ワクワクしないわけがありません。
私はもっと魔法を使ってみたいと思いました。
私が生活している部屋には水とエサ皿、藁が置かれているくらいで監視カメラのようなものはありません。
しかし、魔法で監視されていないとも限りません。なので私は昼間に寝て、夜中に起きて魔法が使えるか試してみました。
結果から言うと多種多様な魔法を使うことが出来ました。それはもう驚きです。
もっと早くに分かっていたのなら、もっと楽しく過ごせたというのに。いえ、これはないものねだりですね。
今もこうして魔法によって記録をつけています。
これが誰かに読まれる日が来るかは分かりませんが、私の暇つぶしのためにも書いていこうと思います。
この魔法は私の思考も記録するのでこれからも積極的に色々と考えていこうと思います。
というところまで記録に付けてから私は欠伸をする。
暇だったので昔を思い出しながら小説風にまとめてみた。これはこれでただ記録するより面白い。
テンションがおかしい気はするが、コメディーということでいいだろう。
さて、次は何を書こうかと考える。
あぁそうだ。物語には何かしらの目的が必要だよね。
私の目的はのんびり平和に過ごすことだ。このまま食っちゃ寝、たまにお出かけの生活を続けられたらもう最高だ。
同居人、いや同居兎もいる。私に襲う気がないと分かったようで、それからはのびのびと過ごしている。今では頭や体の上に乗せることもできるし体をモフらせてもくれる。
超かわいい。
ジナルドにルナと名付けられていた。
物語ならそうだなぁ、『まさかこの後、あんなことになろうとは思っていなかった』なんてこれから何か起こるよ! みたいなフリが入っているかもしれない。
まぁ、これから起こる未来のことなんて数秒先も分からないからそんなことは言えないんだけどね。
私は仕留められて食べられていく3つ目の牛から顔を逸らし空を見上げた。空は地球と変わらず青かった。
生まれてからどれくらい経ったか覚えていないものの、今では成人男性よりも大きくなった。鎧を着た人を乗せても余裕で走れるくらいには立派になった。
今以上に成長するのかはまだ分からない。
食事の後はお出かけだった。
私はドルフに手綱を引かれ町の通りを歩いている。
赤毛に金色の目、しかもガチムチ体形のライオン獣人。
毛もモフモフだし手の肉球もプニプニ。きっと足の肉球もプニプニだ。毛に包まれた体、野性味のある顔、鋭い爪や牙、それに反して理性的な行動。どれも最の高。
そう、獣人だ。それも人の顔にケモ耳が生えているタイプではなく、動物が人間のように二足歩行しているタイプ。
ジナルドより2回りは大きい。
だがそれがいい。
町はファンタジー世界のイメージとして挙げられる中世時代のようだ。あくまでイメージであって、苦手科目が世界史な私はそこまで中世には詳しくない。
他にもエルフっぽいイメージの耳が長く線の細い美形やドワーフっぽいずんぐりむっくりな人が歩いている。
通りに並ぶ出店から漂ってくる美味しそうな匂いには興味を引かれるものの、そちらへ行って迷惑をかけたくないのでロープで引かれるまま大人しくついて行く。
最初の頃から私は我慢した。食べ物の匂いに引かれて出店に近付いたディナルトスが叱られていたのを見たからというのもある。
あと近づかれた出店のおっちゃんが怯えた顔をしていた。
歩いている人も同様で私たちに気が付くと途端に距離を開ける。
通りには私たち以外にも、馬やダチョウのような2本の足で歩いている大きな鳥のようなものが手綱を引かれて歩いていることがある。
彼らは怖がられていないというのに。
これまでにも何度か通りを歩いたけど私たち以外のディナルトスを見ていない。
もしかするとディナルトスは珍しいのかもしれない。見慣れてない分、さらに怖がられていることが考えられる。
とはいえ、小さな子どもに泣かれた時はさすがに凹んだなぁ。
まぁ私も人間だった時に通りを歩くディナルトスを見たら遠巻きにするけど。
そんなことを考えていると門へと到着した。ドルフが門番といくらか話してから外へと出た。
「よろしくな、ラナ」
門から外へ出ると彼がそう言って私の体を優しく撫でてから私の上に乗った。
出発の合図を出された私は走り出す。
ドルフは大柄ながらも繊細な手綱さばきをする。私のことも良く気遣ってくれており、彼とのお出かけは非常に楽しい。私の体や頭を撫でてくれるのも嬉しい。
ジナルドも私の体や頭を撫でてくれるけど、しつこいから正直に言うと鬱陶しい。
ドルフはそうしつこくないし私からするととてもいい人なんだけど、なぜか他のディナルトスたちには嫌われている。理由も『なんか嫌』のようにはっきりしていない。動物の本能的なものなのかもしれない。
彼が庭に来た時も威嚇されまくっていた。
「ディナルトスならもしやと思ったが、やはりダメなようだ」
「そうみたいだ。ドルフの嫌われも相当だな」
ジナルドとそんな会話をしていた。
しかし私は彼の容姿がめちゃくちゃ好みだった。嫌な感じも特にない。イケメンとかむしろ緊張するから関わりたくない。ジナルドもイケメンだが慣れた。
私は彼に近付いて頭を彼の体に擦り付けた。
彼は戸惑いながらも私の体を撫でてくれた。
「ラナ、お前こいつが嫌じゃないのか?」
ジナルドに話しかけられたのでむしろ大好きです、と答えるようにクルクルと機嫌良く喉を鳴らした。
そんなことがあってからドルフを背に乗せるのは私の役割になった。
背中に乗せるとなると重いのでは、と思ったもののこれはこれで良い重さだった。
彼を背中に乗せて真っすぐに駆けていく。
大きな湖までやってくるとひと休憩してから町まで戻ってくる。町まで戻ってきた時には日が傾き夕方になっていた。
そのまま手綱を引かれて城まで戻る。
「今日もありがとう」
小屋へと戻されて撫でられると私もクルクル鳴いて返事をした。
のんびり過ごすことが好きだけど、たまにお出かけすることも嫌いではない。
それからゆっくりと過ごして夕食を食べ、眠くなってきたから眠った。
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