告白
魔法使いの里に戻ってから先生に石化した人間を預けてまた来た道を進み、目的地である城へと辿り着いた。
一度もマンドレイクに襲われることなく。
ちょうど城下を歩いていたお付きの方に話があるからと告げると、案内するからと言われて今、ほうきから下りた舞と涼はお付きの方を導に歩いていた。
一緒に行くと言ったのに、涼が舞の手首から手を離すことはなかった。
あの方、王の七番目の子である、七の方の前に立つまでは。
魔法使い、だからだろうか。
やけにあっさりと城に入れて会えた上に、七の方が人払いを申し付けても、お付きの方も、護衛の方も、だれも異を唱えずにあっさりと出て行ってしまった。
そんなにあっさりしていていいのか。
抱く疑問は、けれど
まだ気持ちはあいまいなままなのだ。
こんな気持ちで伝えていい言葉でもないだろうに。
それに。
気づいてしまったのだ。
涼が七の方を好いているように。
七の方もまた涼を好いていると。
目は口ほどに物を言うとはまさにこの瞬間を言うのだろう。
ぱちぱち、ぱちぱちと。
互いの瞳が互いの瞳を見ている時だけ、線香花火みたいに小さくとも、儚くとも、豊かで火傷をしそうなほど熱のある輝きを放つ。
言いたくない。
強く思った。
言いたくないだってもう言ったって意味がないのだから。
胸が、目がやけに痛む。
二人の輝きの近くにいたせいだろうか。
もういい、このまま呪いを解けずに石化して一年を無駄に過ごしても構わない。
部屋から、七の方から、涼から逃げたかった。
逃げられるのだだってもう、涼は手首を掴んでいない。
なのに、どうして。
どうして、
石化したみたいに一歩も動けない。
こんな刻ですら、この方の傍にいたいと思ってしまう。
この方を見ていたいのだ。
伝えたいことがある。
涼が言った。
言うぞと涼が無言で伝えて来る。
涼が先に好きだと言ってしまえば、この言葉は永遠に胸の内だけに在ったのに。
ひどいやつだ。
心の底から恨んだ。
ひどい、ひどい、どうして伝えさせようとする。
諦めさせるためか。
おまえを好いてはいないと。
知っている。
もう、知っている。
知っていて、どうして。
「「好きです」」
今この瞬間。
強く。
どうして。
言いたい。
伝えたいと思って。
伝えてしまったのだろう。
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