覚悟





「先に行っていいわよ。私が先生たちの所に連れて行くから」


 襲いかかって来るマンドレイクの治癒を終えて、体力を回復させて先に進むことができた二人は石化した人間を見つけた。

 マンドレイクの叫び声を聞いてしまった人間だろう。

 魔法使いやこの森の生物には耐性があるものの、他に住む生物はマンドレイクの叫び声を聞くと石化してまうのだ。

 石化を解くのは一人前の魔法使いしかできず、また、石化を時間内に解かなければならないという時間制限はないものの、この石を好む生物に食べられてしまう可能性もあるので、放置していくわけにもいかない。

 舞はほうきに乗ったまま人間を片腕で抱えて涼に言った。

 一緒に行く。

 涼は言った。


「なぜ?」

「なぜって。おまえ。なんか、そのまま来そうにないなって思ったからよ」

「別にいいじゃない」

「否定しないんだな」

「………別に。ちょっと考える時間がほしいだけよ」

「だから一緒について行く」

「意味がわからない」

「だって、もしかしたら同じかもしれないんだろ。告白するやつ」

「だから?」

「一緒に言おうぜ」

「言うわけないじゃない」

「なんで?」

「なんでって。相手の方のことも考えなさいよ。同じだと仮定して、同時に告白されたら困惑するだけでしょう」

「そりゃあするだろうけどさ。いつかは決めなきゃいけないだろ。手を取るか、取らないか」


 舞は涼の真剣な眼差しに一身に受けて肩を跳ねさせた。

 まるで知らない人のように見えた。


(ごめんな、でも俺。知りたいんだよ)


 怯えていて、それでも目を背けない舞を見て、涼は自ら視線を外して魔法使いの里へ戻る為に舞の前へほうきを動かした。

 

「ほら。行こうぜ」

「………わかった」

「マンドレイクが襲ってきたら俺たちで対処するから、おまえは魔法使いの里に戻ることだけを考えろよ。そいつに何かあったらどうにもできないぞ」

「わかった」


 石化した生物に結界を張ることも、一人前の魔法使いではないとできない。

 ただ運ぶことしかできないのだ。


 舞は不意に泣きたくなった。

 揺らがない涼とは違い、揺らいでばかりの自分があまりにも情けなかったから。



 










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