第7話離れないでほしい

 ローラは急いで警護隊と合流しようとしたが、キエルがローラの袖を掴んで離さない。

「キエル様、私は今から……」

「私も連れていけ」

「そんなの無理に決まってるじゃない……」

「私を1人にする方が危険だと思わないのか。ここの警備隊はバカッバッカだな……ローラ、キミだけは私の側を離れるのではないぞ」

「姫殿下……」

キエルはローラの腕を引くとパーティー会場から抜け出し、ある場所へと辿りついた。

城の地下室だった。

「キエル様……ここは……」

「心配するな。ここは私の秘密基地みたいなモノだ。拷問部屋ではないぞ」

「そ、そうなんですね」

石造りでできた部屋。ランプだけがこの部屋の明りだったが本が何冊か積んであるのがわかる。

それは漫画や娯楽小説といった類のモノだ。

「城の中では禁止されているからな。ここが唯一の私の居場所だ」

「そうなんですね」

むしろ、イタズラっ子でそうは見えなかったが、やはり、キエルには苦労があるのだなとローラは思った。

「ローラにはこれとかオススメじゃないか?」

「漫画ですか? 私、漫画はあまり、読まないんですけど……」

と、受け取った漫画は『ドMマックス! アタシのアソコをあーんして』。

ローラは漫画をキエルに投げつけた。

「本を大事にしろ!」

「漫画を読んだことない人間に勧めるモノじゃないですよね……?」

「知らないから教えてやろうという気持ちがわからんのか!?」

「はぁー……まったく」

ローラはキエルを抱きしめた。

「あんな漫画を読ませようとして、私に何をしてほしいんですか?」

小声でささやくとローラは小さく同じく笑い小声で返した。

「離れないでほしい。それだけだ」

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