4-7

 午後の授業中にも、俺は考えに没頭する。

 どうして、この町がこうなったのか。

 やはり、夜にあの畑に行ったのが関係しているのだろうか?

 だがそうして予想は立てられても……実のところ、詳しい理由は何もわからないままだった。

 ……だから俺は……。

 ”この現状になぜ、みんなは何の疑問も持っていないのか”。

 そこについて、深く考えることにした。

 果たして、本当に俺の頭がおかしくなったのか……?

 疑問を感じているこの気持ちのそのものが、変なことなのだろうか?

 あまりに周りが気にしないものだから、その可能性が容易に浮かんでくる。考えたくはないが、ある種自然なものだった。

 ……だが逆に、皆がおかしくなってしまった可能性はないか?

 さっきの反対というわけだが、これはこれでとても居心地が悪い可能性だ。


「じゃあ宿題集めるから、後ろから回してー」


「…………」


「……寺島君?おおーい」


「……え?」


「宿題集めるって。はい」


 後ろの女子生徒からプリントの束を渡される。


「ああ、うん……」


 数学の宿題は一応持ってきてはいた。

 受け取ったプリントと照らし合わせてみると、全く同じものだった。


(やっぱりこういう所は、何も変わらずなんだな……)


 知っている場所に居るような、知らない場所に居るような感覚だ。


「……はぁ」


 そこまで考えて、一度息をついた。

 もしかしたらこれは、学者が研究すれば答えの出るような、物理法則にしたがった現象なのかもしれない。

 そうだとすれば、もはやどうでもよかった。俺には手の届かない領域だからな。

 

(……もう少し、様子を見てみてもいいだろう……)


 学校が終わる頃には、俺はそういう風に結論を打っていた。

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