3-7

「おはよ」


「ん、おう。おはよう」


 朝の廊下ですれ違った青八木と、そうして挨拶を交わす。

 彼女が一人の時は、こうして小さい会話をすることの機会が増えた。 

 俺があの宣言をしてから、野中は俺と青八木をなるべく近づけようと動いてくれた。

 クリスマスの誘いが成功しやすくなるように……だと思う。

 そうやって、裏でこそこそ計算高くやるのには違和感があった。だが野中いわく、「恋愛とはそういうもん」らしいので受け入れたのだった。

 太知も日々の中で、さりげなく助言をしてくれていたと思う。

 ____そうやって、二か月が過ぎた。

 青八木と前より一言二言、話すことが増えたのは事実だったし、いい方向に動いていると言えるかもしれない。

 クリスマスが近づくにつれて、学年の雰囲気もそっちへ向かっていっている。そんな風に感じられた。


「今体育終わり?竹内先生の機嫌はどうだった?」


「悪くない」


「はは、そっか。じゃあね」


 笑って、更衣室に入って行く青八木。


「やっぱり、前より話す様になってる」


 隣の太知が言う。


「うんまぁ、そうだな」


「これはいい調子なんじゃないの?」


「……そうなのかねぇ……」


 俺はいまだ分かっていなかった。

 これで本当に青八木との距離が近づけているのか、否か。

 だってなんだか、感覚として実感が湧いてこないんだ。去年の夏休みに、彼女と居て感じたものとは、なにか違っている気がしていた。

 それでも時間は過ぎて……気づけばクリスマスまではもう一週間ほどとなっていた。

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