2-17

 それからの四日間は、皆がうちに遊びに来たり、来なかったりで過ぎて行った。

 日曜日で、親父も裕子さんが家に居た日もあった。

 家に青八木と野中がやって来ると、親父が勘違いして妙な事を言う。

 うちの息子はモテるだの、俺に似て罪な男だの。

 裕子さんも、少し的外れな勘繰りをしている節があった。なので俺は内心どぎまぎしていた。

 一方野中は、裕子さんに、ひそひそと恋愛相談をしているようだった。

 俺と太知は静かにオセロをしていた。

 親父は多分、青八木に俺が小さい頃の話をしていたと思う。

 青八木はたびたびそれで笑っていた。

 その度に、俺は親父をにらんだ。

 ……恥ずかしい事すんな……。

 昼は裕子さんが作った料理を食べた。

 六人で食卓を囲んでいると、それはそれはにぎやかだった。

 特に、親父と野中が。 

 けれどその数日のあいだ外では、ずっと晴れていた空の揺り戻しのように、雨が良く降っていたのだった。


 ◇


「……どうした?」


 ある時青八木が窓の外を見て、しばらく黙っていたので声をかけた。


「ん、いやぁ……雨、やまないね」


「ああ、……そうだな」


「このままやまないで、夏休みが終わったらいやだなぁ……」


「なんか予定でもあるのか?」


「んん、予定はないよ。……でもねぇ」


 そうしてまた窓に目を向けて、静かになる。

 シトシトという、軽くも響くような音が鳴り続く、四日間だった。


 ◇


 そうして残り少ない日々が、過ぎて行った。

 たしかにこのまま、天気がすぐれないままで休みを終えるのは忍びない、そう考えて眠りにつく。

 だって、明日が夏休みの最後日だったからだ。

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