2-10

「アオイちゃああんっ……!!」


 野中が、青八木を見るなり抱き着く。

 その頭を撫でながら青八木が言う。


「彩ちゃん。なんか、久しぶりだね」


「よかったよぉ、来てくれたんだねぇ……!」


「……どうしたの?そんなに泣きそうな顔になって」


「ホントは、アオイちゃんが寺島の家に来なかったとき、もう一緒に遊べないのかもって思ってたんだぁ。だから嬉しいの、また来てくれて」


 俺は早く、玄関のドアを閉めたいのだが……。


「そっか。でもだいじょうぶ!」


 青八木が胸を張る。


「私、もうフリーだから!」


「え?フリーって?」


「どこのグループにも居ないの、だからまた彩ちゃんと遊べるよ!」


「そ……それって……」


 直後、急に野中がずかずか俺の方に来てから、青八木に背を向ける。


「え……なんだ?」


「もしかしてアオイちゃん、高木ちゃん達と喧嘩したのかな……?」


「いや、分からんが多分……」


「どう思う?……なんていうか、テンションも普段と違くない?」


「それは、まぁなんというか……」


「きっと友達を失ったショックで、気が動転してるんだ……かわいそう……」


「いやそうじゃなく……」


「でもわたしは、これを機にもっとアオイちゃんと仲良くなる!」


「おう頑張れ」


 向こうで青八木が不思議そうな顔をしている。


「あれ……私なにか変なこと言った?」


「多分大丈夫だよ、青八木さん」


 太知が冷静な態度でそう言う。こいつの方は、青八木になにか思う所はないのだろうか?

 その後……時間をかけるまでもなく、青八木は再び野中と仲良くなっていった。

 俺はなんとなく、それを眺めながら過ごしていた。

 そういう中で話は、「近いうちに花火をしよう」という内容になった。青八木が言い出したことだった。


「夏祭りで大きいのを見たけどさ、手元でできるやつもやっておきたいじゃない」


「たしかに!いいねいいねっ」


「でも、それならどこでやろっか?公園でやったら怒られるだろうしなぁ」


「俺んちの庭を使えばいい。広いから余裕もある」


 結局次の日の夜に、うちの庭で花火をするという。そういう約束になって、その話は終わった。 

 その日の夕方、庭をおもに管理している裕子さんに確認を取ると……了承が貰えた。

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