1-2
その次の日もまた俺は、外に出た。
この町には、海がある。
町から出て、二車線の道路を渡ればそこが海だ。だから正確には町の近くにある、と言うのかも。
十分ほど歩いてそこまで行く。着いたら、焦げた白色の砂浜に座りこむ。
そして、繰り返し寄せる波を眺めるのだった。
天気がいいので、海面は透き通った色をしている。
それからたまに、砂をいじってみたりもする。
「……うーん……」
…………つまらん。暑い。
一人で海に入るわけにはいかないし、ここでの時間の潰し方はこれしかないと思う。それなのに、これじゃあまりに面白みに欠ける。
そしてこの砂浜も、いつまでも居られる場所じゃあないのだ。
じきに隣町にある大学のやつらがこっちの海に遊びに来るだろうから。昼前には逃げないと、俺はとてもみじめな男になってしまう。
◇
道路を渡って、町に戻る。
……ちなみにこの道路を進んで行くと、海と山肌に挟まれて、延々と歩くことになる。まあ一時間くらい歩いたら、隣町に着くんじゃないだろうか。
反対側に進めば、何度も長いトンネルを通る羽目になる。
町の、市役所の前の掲示板に貼ってあるポスターにはこう書いてあった。
(山々と海に囲まれた、自然豊かな町)
……まぁ、その通りなんだろうが。
そんなのは観光客向けの文句で(観光客なんて見ないが)、地元の人間からすれば、ただの閉鎖的な町だった。
今こうして、浅い山道を歩きながら思うのは、木陰が多くてわりと涼しいなぁ……ということぐらい。
まあセミがうるさ過ぎて、プラマイゼロなんだが。
ある程度登ってきた山道で、振り返る。
そうすると町全体が見渡せる。
小さい町だから、ある程度登れば全てを眺める事ができるのだ。
そんな小さなこの町には、海と、山と、畑と住宅街。
…………それ以外には何も、ない。
あるとしたら無駄に広い公園と、個人経営の床屋と居酒屋が一軒ずつくらい。
こうして見渡しても、畑が七割、住宅街が三割で、何もないことは歴然だ。
本当はもう、時間を潰せる場所なんてなかった。
それでも、家に居るよりはいいと思ってこの山道を歩いていたのだ。
(……おとなしく、家に帰って宿題するかな)
これなら部活でしごかれる方が、まだ有意義だったかもしれないなぁ。
ため息をついて、山を下り始めようとしたその直後。
町の片隅に、黄色く映える場所があるのに気が付いた。
(……ああ、そうか。……もう咲いてたのか)
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