05:公爵家の場合




 たかが筆頭公爵家が、王族の血を引く公爵家を馬鹿にしているのか!

 うちの娘が嫁入りした侯爵家を陥れる為に、わざと婚約破棄してきた。

 しかも侯爵家三男の有責で、だ。


 勿論、すぐに王に苦情を入れた。

 しかしそれは、受け入れられなかった。

「常にオリヴィア嬢をけなす発言をし、お茶会などの交流もほとんどせず、学園に入学してからは男爵令嬢を側にはべらせていたとなれば、婚約破棄されて当然だろう」

 甥のくせに、叔父を何だと思っている!


侯爵家長男グレイシアンにうちの孫娘が婚約破棄された時も、公証人に浮気現場を見られたからどうしようも無いと言っていたな。

 ウィッキーを筆頭公爵家に捩じ込む時には、嬉々として協力したくせに、だ。

 自分の金にならない事には、とことん協力しない銭ゲバだな。



 侯爵家が慰謝料で破産しようが、後継者に逃げられようが、わしには関係無い。

 問題は侯爵夫人であるファーラの名誉を回復してからの離婚でなければ、再婚が難しくなる事だ。

 必然的に三男の婚約破棄は、筆頭公爵家側の有責にしなければならなくなる。

 そのため、ファーラには積極的に噂を流すように言っておいた。


 金儲けに夢中の筆頭公爵家は、あまり社交に熱心ではない。

 噂をこちらの都合の良いように流せば、世論はうちに付くだろう。

 たかが歴史が古いだけで筆頭公爵家になった、金儲けしか興味の無い家だ。

 王族の血を引く公爵家に逆らうとどうなるか、思い知らせてやる。




「隣国の王子……だと!?」

「しかも、二人です」

「下位王子を二人引き取る事で、後ろ盾にでもしたのか?!」

「いえ、別々の国からの婿入りのようです」

「ど、どんな小国からだ?」

 きっと聞いた事も無い程の国なのだろう?

「それが……」

 情報を仕入れてきた諜報員か言い淀む。

「何だ!知らなくても構わん!早く言え!」


「隣国の##と@@です!」

 叫ぶように報告する諜報員の言葉に、思わず息が止まる。

「どちらも大国ではないか……」

 それこそ、うちの国よりも。

 ##は軍事力にまさっている大国で、@@は経済大国だ。


「見捨てられたような王子とかか?」

 望みを掛けて聞く。

 厄介者の、メイドなどに生ませた王子や、問題を起こした王子などを他国に出すのは、ままある事だ。


「いえ、どちらも優秀と定評のある、##の第三王子と、@@の第二王子です」

 諜報員が泣きそうな声で報告してくる。

 泣きたいのは儂の方だ!



 王家主催の、貴族全員の参加が義務付けられているパーティーで、筆頭公爵家の後継者に会った。

「社交がパーティーやお茶会だけだと思ってますの?古い考えですわね」

 扇の影で笑っている女狐め!


「オリヴィア、私も挨拶した方が?」

「お会いした事が有るような、無いような」

 女狐の両脇の男がこちらを見て言うが、その目はどう見ても見下していた。

「貴方達が挨拶する価値もない人よ。だって、来年のパーティーにはいらっしゃらないもの」


 その言葉の意味を理解出来ない程の無能では無い。


「全力で叩き潰す」


 そう宣言されたのだ。

 大国二国を後ろ盾にした、筆頭公爵家に。


 由緒正しき公爵家が儂の代で終わる?

 侯爵家三男と出戻ったファーラを差し出せば、何とかなるか?

 いや、そんな事で許されるなら、今頃侯爵家は健在だっただろう。


 筆頭公爵家後継者が大国と婚約を決めた情報を仕入れた時点で、ファーラは侯爵と離婚したので、その後の侯爵家を知らないし、興味もなかった。

 今日のパーティーに侯爵家は居ない。

 だろう。



「いくらでも僕を使って」

「うちも協力する」

 と囁かれた言葉が聞こえたが、それよりも

「こんな些末さまつな事、私だけで充分よ」

 女狐のこの台詞に、恐怖を覚え、フラフラとその場を離れた。




 いつの間にか、公爵家は遥か遠縁の男が当主になっていた。

 領民に寄り添った善政をいて税収も上がり、筆頭公爵家との共同事業も成功しているという噂を、メイドの一人もいない狭い屋敷で聞いた。

 ファーラは贅沢がしたいと伯爵家へ後妻に入ったが、その後の行方は知らない。金はあるが評判の良く無い伯爵家だ。

 後妻が五人目という事をファーラも知っていただろうし、自己責任だ。


 公爵家は、儂の代で潰れる事もなく、更なる発展をした。




―――――――――――――――

王は、公爵家当主の姉の息子です。

侯爵家婦人の兄は、まだ次期当主だったのです。

王族の血が入っているのは、何代か前の当主が王弟だった為です。

見事な老害ですね、公爵家当主(笑)


国名を考える余力がありませんでしたw

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