08-27 ホントにいいの? (二)
「実はバフラヴィーの息子、二人とも魔導士としては今一つなのだ」
「いや、ちょっとまって下さい。
確か二人とも生まれたばかりだったと思いますが」
「まだ分からぬ、これからの成長に期待、という話か?
それは確かにそうだ。
亡くなったナーディル家の継嗣セイフッディーン殿のように二五歳過ぎで国家守護魔導士になった例もある。
だが多くの場合、優れた魔導士は『生まれる』のだ。
国家守護魔導士の大半は二〇前に認定される。
日々の鍛錬は勿論大事だが、持って生まれた素質がものをいう世界だ。
私は生まれた直後から正魔導士程度の魔力量があったという。
私が泣き出すと無自覚に『威圧』を撒き散らすため平民の侍女には抱かせられなかったと聞く」
カナンでは『正魔導士』が魔法使いの基準とされる。
一般に『威圧』で相手を完全に従えるには五倍の魔力量が必要とされる。
仮に正魔導士の魔力量を一〇〇とすると、国家守護魔導士は四〇〇程度。
従魔導士は五〇前後で、風使いと言われる最下級の魔法使いが二〇から三〇。
魔力量が完全にゼロの者も稀だが、魔力量二〇以下は一般人とされる。
正魔導士は一般人を威圧出来て、国家守護魔導士には威圧されない存在だ。
であるから基準とされる。
極一部の強力な魔導士には威圧されてしまうが、それは例外だ。
「バフラヴィーやシャールフも似たような状況だったそうだ。
だが、残念ながらバフラヴィーの息子は二人ともそうではない。
おじいさまの見立てでは、ハルダムサルは良くて守護魔導士、カリーシャムスはせいぜい上級魔導士だと。
バフラヴィーとスタンバトア殿の男子なら守護魔導士以上は期待できたのだがな。
おじいさまはヌーファリーンの子に期待をされていた」
確か、スタンバトア姉御の子がカリーシャムスで、ファラディーバーの子がハルダムサルだったはず。
ハルダムサルはガイラン家の跡取り候補だったと思う。
子供の魔力量は両親の魔力量の平均値と俗に言われるが、個体差は大きい。
残念ながらバフラヴィーの子は二人とも期待値より下なのだろう。
「ヌーファリーン様って妊娠されてましたっけ?」
「いや、まだの筈だ。
だが、あの三人の中では最も魔力量が高い」
「あの三人?」
「其方、時々抜けるな。
バフラヴィーの正夫人三人だ。
三人の中でヌーファリーンが最も魔力量が高い」
「似たり寄ったりの気もしますが」
「いや、・・・其方から見ればそうかも知れぬが、結構差はあるぞ。
スタンバトア殿は上級魔導士では上の方、ファラディーバーも同じだがスタンバトア殿よりは多少多い。
対してヌーファリーンは、スタンバトア殿の手前正規には資格を取っていないが守護魔導士の魔力量がある。
女性としては最高級クラスだな。
ガーベラ会戦の時の穴掘りもヌーファリーンが大半を担ったと聞く」
そうだったんだ。
未だに魔力量の微妙な差が分からん。
「なるほど、それでヌーファリーン様に希望を。
あれ、仮にヌーファリーン様が魔力量の高い男子を産んだ場合、クロスハウゼンの後継ぎはどうなるのですか?」
「そこだ」
ネディーアールが深刻な顔になる。
「クロスハウゼンでは従来、次代で最も魔力量の高い者を後継者として当主が指名していた。
基本的に正夫人の子で最も魔力量の高い者が選ばれるが、側夫人の子や分家の者が選ばれた例もある。
正夫人の序列や長幼の順は考慮されない。
同程度であれば、年上や高位の夫人の子が優先される程度だ。
一族の長は最も強き者でなければならないからな」
あー、なんとなく分かってきた。
「スタンバトア様はクロスハウゼンの風習に納得していないのですね?」
「そうだ。
スタンバトア殿はマリセア宗家からクロスハウゼンに降嫁した初めての例だ。
おじいさまはスタンバトア殿がバフラヴィーの嫁になった時に、クロスハウゼンの家の風習に従うことを約束させたという。
だが、スタンバトア殿はこと後継ぎに限ってはそうではないと考えている。
おじいさまは、そしてクロスハウゼン一族の考えとしては、クロスハウゼンの当主は最も強き者でなければならない。
だが、スタンバトア殿は自分が産んだカリーシャムスは宗家の血筋だから魔力量に拘る必要は無いと言っている。
しかし、上級魔導士程度ではクロスハウゼンの大半は納得しないだろう」
「バフラヴィー様は?」
「波風を立てたくなかったのであろう。
まだ判断は早いとして、後継ぎの選定は数年後と延期した」
「その状態でカラカーニー様が亡くなったわけですか」
「クロスハウゼンの当主がおじいさまからバフラヴィーに移る。
これだけならそう変化は無いが、問題はクロスハウゼンの女性の序列第一位がスタンバトア殿になる事だ。
スタンバトア殿の権限がより強くなるわけだ。
マリセア宗家もクロスハウゼン継嗣にカリーシャムスを推すだろう。
揉めるのは確定だ。
おじいさまはそうなる前に、自分が当主の内にカリーシャムスを後継から外したかったのだろう。
だが、こうなっては、それも難しくなった」
「つまり、これからヌーファリーン様が魔力量の高い男子を産んだ場合、クロスハウゼンの後継者争いが激化すると」
「それだけではない。
ジャニベグ殿がシャールフの子を、男子を産んだ場合、その子の魔力量はカリーシャムスを超える可能性が高い。
シャールフとバフラヴィーでは魔力量に大きな差は無いが、ジャニベグ殿はスタンバトア殿どころかヌーファリーンよりも魔力量が多いのだ」
あーうん、そうか。
ジャニベグ、・・・オレが好きにヤレるように魔力量を伸ばしちゃったような、・・・今更か。
「対策は、・・・難しいですか」
「スタンバトア殿が二人目の男子を産んで、その子の魔力量が高ければあるいは、だが。
正直、確率は低いであろうな。
スタンバトア殿はバフラヴィーとの寝屋の回数を減らしている」
「ああ、男子を産んだから、ですか」
カナンでは一夫多妻が基本で、男性は病気でない限り毎日女性の相手をする。
基本的に男性がその日どの女性を相手にするのか決めるのだが、第一正夫人の了解を取るのが慣例だ。
男は勝手にヤレないのである。
このため基本的に序列上位の夫人の回数が多くなる。
つまり第一正夫人が最も夫の寵愛を受ける事になるのだが、例外がある。
上位正夫人が男子を産んだ場合は、自分の分を下位の夫人に回すのが上位夫人の品格とされるのだ。
カナンは女性が多い世界であり、一生結婚できない女性も少なくない。
結婚できても子供が産めない女性の方が多い。
子供を産む、特に男子を産むことは女性の最高の幸せとされる。
故に、男子を産んだ上位の夫人は下位の夫人にその幸せの機会を分け与えるべきとされている。
現宗主シャーラーンとその同母弟フサイミールのように同母の兄弟はそれなりにいるのだが、男二人ならともかく三人になると狭量とか、吝嗇とか、束縛が強いとか、色々と言われるらしい。
バフラヴィーの正夫人ではスタンバトアとファラディーバーがそれぞれ男子を産んだので、現在は第三正夫人ヌーファリーンが優先して寝屋に入っているという。
「バフラヴィーも夜の相性はヌーファリーンが一番いいらしい。
ガーベラ会戦のころからヌーファリーンの時以外はおざなりだとファラディーバーが溢しておった」
「そー言えば、デュケルアール様がバフラヴィー様の趣味について言っておられましたね」
バフラヴィーは『聖水プレイ』好きで三人の正夫人ではヌーファリーンだけがそれに応じているとの話だった。
「実はスタンバトア殿とバフラヴィーは最初から微妙に夜の相性が悪かったらしい。
スタンバトア殿はウィントップ系の内公女。
ウィントップ家と言えば鞭打ちと前立腺マッサージだが、スタンバトア殿は特に鞭打ちが気に入っていて婚姻前から将来の夫のために技を磨いていたという。
なんでも狙った所に自在に鞭を当てられるそうだ。
だが、バフラヴィーは鞭に打たれるのはいやだと初夜の儀で拒否したという。
立ち会ったナイキアスールが宥めて、その場は何とかなったらしいが」
「えーと、鞭打ちはさせなかったのですか?」
「そうだ。
バフラヴィーも一回ぐらい鞭で打たせても良かったと思うのだが」
「そー、です、かー」
前にレニアーガーに教えてもらったところでは、女性のMは普通だが、男性のMは変態に入っていたと思う。
レザーワーリの時もスタンバトア姉御は『変態』と断言していた。
尿道ガーベラは変態だけど、鞭に打たれて喜ぶ男性は変態ではないのだろうか?
真剣に分らん。
そもそも、将来の夫のために鞭打ちの練習をしていたってなんだ?
分かるように努力すべきなんだろうか?
「そんなことで、あの二人に二人目の男子が生まれる可能性は低いのだ」
「それは、・・・如何ともしがたいですね」
そうか、クロスハウゼンの未来は鞭打ちと聖水にかかっているのか。
仲裁?
うん、諦めよう。
少なくともオレには無理だ。
仲裁の手掛かりすら思いつかん。
「あれ、思ったんですが、ジャニベグが魔力量の高い男子を産めば、ある意味解決になりませんか?
クロスハウゼン家の跡取りはカリーシャムスにして、クロスハウゼン軍閥の跡取りはバフラヴィー様からシャールフ殿下、そしてその子供にすればスムーズかと」
「ああそうだ。
それが一つの解決だな」
ネディーアールが良く分かったなという顔になっている。
「私もその流れが良いと思う。
だが、ここで私が其方の子を産んだらどうなると思う?
私は男子を産むつもりで、現状ではそれが可能となっているが、その子供はカリーシャムスどころかシャールフとジャニベグの子よりも魔力量が高いぞ」
「えーと、しばらくは男子を作らない方向にするしかないですか」
「手遅れだな。
既にシャーザクは男子でほぼ決まりだ」
あー、宗主が死んだ後にデュケルアールが子供を産めば、その子供は母親の実家の子供として、つまりクロスハウゼン家の子供として育てられるんだっけ。
「母上がクロスハウゼンに戻ってシャーザクを産んだら、おばあさま達やナイキアスールは驚喜するだろう」
おばあさま達、カラカーニーの第一第二正夫人は二人ともネディーアールの祖母になる。
デュケルアールの子供はほぼ男子で、名前がシャーザクかどうかはともかくとして、魔力量はデュケルアールよりも上だろう。
つまり、カラカーニーよりも魔力量が多いわけで、・・・スタンバトア姉御は面白くないだろうな。
盛大なお家騒動になりそうだ。
「私としては、今回のアルダ=シャールの件が終わったら、できるだけ早く独立すべきだと思う。
個人的には、おじいさまの葬式には出席したい。
宗主の死とおじいさまの葬式のどちらかを利用して母上をカゲシンから脱出させ、速やかに離脱するのが良いと思う」
デュケルアールが子供を産む前に離脱って話か。
ハードスケジュールになりそうだが、それが無難かもしれない。
「分かりました。
基本、その線で行きましょう」
ネディーアールが頷く。
これで話は終わったと思ったのだが、彼女はまだ話を続けた、
「それで、そうなるともう一つ問題が出る。
アシックネールをどうするか、という話だ」
アシックネールを?
「すいません。
良く分かりませんが。
アシックネールは問題が無い訳では無いですが、魔力量も高いですし、文官としての能力は傑出しています。
ネディーアール様とも懇意でしょう?」
「それは、そうなのだが、・・・いや、私の親友であるのは確かなのだがな」
ネディーアールはしばらく逡巡した後に言葉を続けた。
「実は前回、密かに出陣する前に、おじいさまに其方の事を相談したのだ。
思えばあれが最後の歓談であったが。
その、其方を私の婿に迎えることについての話だ」
「それは、・・・結構前の話ですね」
ネディーアールはガーベラ会戦の後、彼女の婚姻候補者が全滅したからオレと結婚との話をしていた。
今の話だと他の候補者が生きていたころからオレとの結婚を考えていた事になる。
「まあ、それはそれとして、だ」
真っ赤になっているのがかわいい。
「その時におじいさまは、かなり考えて『悪い話ではない』と結論された。
おじいさまは其方を極めて高く評価されていたのだ。
特に上級魔導士試験で其方がバフラヴィーと共に私を取り押さえた事を、な。
おじいさまは其方が実力を隠している事を見抜かれていた。
あの段階で国家守護魔導士の魔力量があると、自分に準じる程度の魔力量があるだろうと。
私を内公女からおじいさまの養女にして其方と娶せると、その時には言われていた。
宗主関係など色々と面倒な点は多いが、実現すればクロスハウゼンにとってメリットは大きい。
私をクロスハウゼンに留めることが出来るし、其方を確実にクロスハウゼンで抱えることが出来ると」
色々とバレていたって話だな。
流石に自分よりも上だとは思わなかったようだが。
「だが、その時におじいさまは幾つか条件を付けられた。
一つは、私と其方の間に男子が生まれたら、その子をバフラヴィーの養子にしてほしいということ。
そして、もう一つが、アシックネールを戻して欲しいという事だ」
「養子というのは先ほどの話で分かりますが、アシックネールを戻して欲しいというのは?」
「あの時点で、ファラディーバーとヌーファリーンではスタンバトア殿を制御できないことがはっきりしていたからだ。
更に言えばバフラヴィーもスタンバトア殿を制御できているとは言い難い。
おじいさまは、クロスハウゼンがスタンバトア殿に引きずられるのを恐れていた。
スタンバトア殿は悪い方ではない。
だが、後継ぎの魔力量問題などを見ても、従来のクロスハウゼンとは考えが異なる。
おじいさまが生きているうちは良いが、おじいさまの死後はスタンバトア殿がクロスハウゼンの女性の序列第一位となる。
同年代でスタンバトア殿を制御できるのは、できるとしたらアシックネールだけだろう、というのがおじいさまの、いや、おじいさまだけでなく、おばあさまたちの意見でもあるらしい」
「アシックネールを戻してバフラヴィー様の第四正夫人って話ですか?」
「それか、シャールフの第一正夫人にして、シャールフをクロスハウゼンに引き取るとの構想だったようだ」
「なるほど、あの時点ではそれもありましたか。
ですが、・・・色々とおかしくなりましたかね?」
「うむ、シャールフがああなっているとは、あの時には誰も気づいてはおらなんだからな」
ネディーアールが腕組みして唸る。
「だが、現状はある意味当時よりも悪い。
クロスハウゼンのためを考えるのならば、そして我らの安寧を求めるのであれば、我らは早めに独立すべきであろう。
だが、私としては我らが去った後のクロスハウゼンが内紛で崩れていくのは見たくない」
バフラヴィーの正夫人と息子問題、シャールフとジャニベグ問題、カゲシンとの軋轢にセリガーとの外交。
独立と言うだけなら簡単だけど、現実は厳しい。
それは、これから独立を考えているオレにも言える事だけど。
「アシックネールを残せばそれを回避できると?」
「断言はできぬが、現状考えうる最善ではあると思う」
オレが独立を考える上ではアシックネールの文官能力は重要なんだよな。
アシックネールはどこにいってもそれなりに活躍できる能力を持っていると思う。
ただ、その能力は帝国貴族社会で最も輝くのも事実だろう。
オレたちは、アシックネール問題は何れ適当な時期に本人も交えて相談すると結論した。
「ところで、其方、独立先は考えていたのか?」
「以前から少し調べていたのですが、西方のバグノットはどうでしょう?」
「バグノットか、面白い所に目を付けたな」
褐色肌に紺色の髪の美少女が興味深げに微笑んだ。
ライデクラートと面談した翌日。
オレは朝一番で、・・・正確にはデュケルアール寝室で朝の務めを済ませて直ぐに、施薬院に向った。
勿論、情報収集のためである。
情報収集と言っても一般貴族や商人からのそれではアシックネールやハトンに全くかなわない。
オレが狙うのはピンポイントだ。
従者はナユタたちとサムル。
これから合う相手を考えて、アシックネールとハトンは外した。
幸い、相手は直ぐに見つかった。
「すまない。
忙しいのは分かっているが、小一時間くれないか?
情報交換をしたい」
モローク・タージョッは、一瞬怪訝な顔になったが、オレの表情を見ると直ぐに手近な部屋に入った。
一対一の話し合いが理想だったが、それは拒否される。
「悪いけど、現在の私の立場では男性と二人きりで部屋に入ることはできないの。
バャハーンギール猊下に疑われるのは避けないと」
止む無くそれぞれ従者を付ける。
タージョッにはコニ。
タージョッの以前からの腹心だ。
オレの従者にはサムルを選んだ。
タージョッがオレの所にいた時分に一緒にいた女性はハトンとサムルだけである。
このうち、ハトンはタージョッと妙に相性が悪い。
スルターグナはタージョッの親戚で懇意だが、そもそも今回の話をしていないし、現状することもできない。
「そちらは、どうだ?
バャハーンギール殿下とはうまく行っているのか?」
「まあ、それなりに、ね。
私、女としてすごくイイらしいのよ。
その、そっちの方面で。
特に魔力の吸収量、吸い込み具合は上級魔導士並だって話よ。
一回、寝屋を共にした男性の全員から求婚されてるぐらい。
バャハーンギール猊下からも絶賛されているわ」
そー言えばコイツ、オレと別れてからお見合いしまくってたらしいんだよな。
こっちのお見合いって、女が経験者だと夜の相性まで確かめるらしい。
双方の合意が前提だが。
「そういうのが嫌でキャリアを積み上げてきたはずの私が、そっちの方面で評価されるのは複雑だけど」
「医者としての実績がなければそもそもバャハーンギール殿下の声が掛からなかったんじゃないのか」
「そう言ってもらえると嬉しいけど。
女としての性能も最初の男の調教のおかげみたいだけど」
「へー、そーなんだ。
良かったな」
タージョッって誰に調教されたんだろう?
少なくともオレは調教なんてした覚えはないぞ。
コイツとのセックスでは毎回最低限の精液を出すという綱渡りで苦しんだ覚えしかない。
「あんた、今、素で言ったわね」
何故かジト目になっているタージョッ。
「これは、ネディーアール殿下も苦労するわね」
何で遠い目になる?
まあ、今は詮索している暇はない。
「オレ以上にそちらに時間が無いと思うから、本題に入る。
今回の陰謀、クチュクンジ殿下がアルダ=シャール要塞で蜂起した件について教えて欲しい」
宗主侍医主任補佐は溜息をついた。
「その話は、かなり拙い話なのよ。
あんたには世話になったから可能なら力になってあげたいけど、それは流石に無理」
「やっぱりそうか。
だが、この話はネディーアール殿下をバャハーンギール殿下の第一正夫人にって話と連動している。
タージョッもネディーアール殿下がバャハーンギール殿下第一正夫人になるのは避けたいんじゃないのか?
諸侯出身以外の正夫人の枠は恐らく一つだけだ。
こちらも、それなりのネタは持ってきた。
話だけでも聞いてほしい」
「確かにネディーアール殿下がバャハーンギール猊下の正夫人になるのは私にとっては良くない話だわ。
いいわ、それで、そちらの話は?」
「実は男女の産み分け法を開発した。
確実ではないが約八割の確率で男子が生まれる。
かなり精密なマナ操作が必要だがタージョッなら可能だろう。
この場でも教えるが、ここにいるサムルを付ける。
暫くの間、お前の従者として使ってほしい。
施薬院の全金徽章獲得のために修行中なんだ」
オレの発言にタージョッは絶句して目をしばたたかせた。
「それは、カゲシンのお山が噴火するインパクトね。
いいわ、なんでも聞いてちょうだい」
「お嬢様!」
タージョッ侍女のコニが慌てて止めに入る。
「本当に宜しいのですか?
多分、機密に属する話になると考えますが。
それに、男女産み分けの話はこれまで何度も囁かれてきましたが本当だった例はありません」
「その通りね。
私もこの話をしたのが他の者であれば笑って席を立ったと思うわ。
でも、このカンナギ・キョウスケって男はこれまでも医学的に有り得ない業績を上げてきたのよ。
つい先日の『ハイアグラ』にしたって、そう。
キョウスケが真剣に望めばシャイフの伯父様の次の施薬院主席医療魔導士は決まりだわ。
ライバルなんて誰もいない」
「でも、その、変態、ですし、・・・」
「それも含めて、よ。
変態であっても業績は超一流」
変態は確定なのか?
「キョウスケはこの手の事では嘘はつかないわ。
そして、男女産み分けの技術は私にはとても大きな武器になる」
タージョッがオレに向き直る。
「サムルの件は了解したわ。
私も有能な助手が欲しかったからむしろ助かると思う。
全金徽章が取れるように助力もする」
サムルが頭を下げる。
「あと、情報が私から出たとは言わない事。
情報源が私だと分からないように使用して頂戴。
それでいいわね?」
「了解した」
「お嬢様、ホントによいのですね?」
コニの確認にタージョッが頷き、密談が始まった。
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