08-14 周囲の視線が痛いです (一)

「カンナギ・キョウスケ!

 ネディーアール殿下から手を引け!

 其方のような変態素行不良者にはネディーアール殿下の伴侶どころか愛人の資格もない!」


 いきなりオレに声をかけてきた集団はそう言い捨てると脱兎のごとく逃げ出した。

 場所は学問所から施薬院に向かう廊下。

 一〇代後半から二〇台前半と思しき男性一〇数名、従者を含めると五〇人を超える集団が待ち構えていて、オレの姿を認めるなり集団で叫び、そして返答も聞かずに逃走。

 恰好からすれば宗教貴族の一団だろう。

 なんなんだ?


「ネディーアール殿下って、やっぱり人気なんだよね。

 評判の美人で、同世代の男性からは憧れの的だよ。

 そんな女性が平民出身で変態として有名なキョウスケを選んだことが気に喰わないんだと思う」


 隣にいたゲレト・タイジがしたり顔で解説する。

 いや、それは分かっているから。

 つーか、変態、言うな。


「それならオレから『手を切る』って言質を取らないとダメだろう。

 叫んで逃げるだけって」


「そりゃ、ガーベラ会戦の英雄に喧嘩を売る度胸は無いよ。

 でも、一言だけは言っておきたかったんだろうね」


 それだけ水面下の反発は大きいんだよ、とタイジは続ける。


「・・・オレとネディーアール殿下の関係だが、もう、そんなに知れ渡ってるのか?」


「そりゃね。

 殿下があれだけくっ付いてたら話題にならない筈がない」


 ネディーアール殿下だが、外出時にはオレと同行する事を希望し、同行すれば必ずくっ付いてくる。

 腕を組んで露骨に胸を押し付けてくるのだ。

 ・・・できるだけ人目に付かないようにしていたが、徒労だったらしい。


「下着の件も評判になり始めてる。

 今のところは牙族中心だけど」


 モーラン一族、熱狂し過ぎだよな。

 つーか、タイジ、知ってるんだな。


「あと、デュケルアール様との件も話題になってきてるよ」


 タイジが露骨に溜息をつく。


「あれだけ目立つ出入りをしてればバレるよね」


 デュケルアール様との件だが、実はあれから毎日通っている。

 だって頼まれたんだから仕方がないじゃないか。

 妙にエロイ母娘に『ご主人様、お体が大丈夫なら明日もお願いしますね』とか言われたら仕方がないじゃないか。

 それでだが、どうせ通うのならと、女性集団の『種付け』にも協力してもらうことにした。

 デュケルアール様は妊娠しているわけで、つまり『妊娠可能精液』が出し放題なのである。

 魔力量は娘と同等だから『特濃』精液を出しても大丈夫。

 そんなことで、デュケルアールに妊娠可能精液を連続中出しして、それを注射器で吸い取って注入。

 朝夕二回、各二人分、合計一日四人に注入している。

 今までの苦労が何だったのかと思うほど簡単に妊娠してくれます。

 流石に一〇〇パーとは行かないが八割以上の成功率。

 おかげで、モーラン集団も、捕虜集団も、接待押し付けも、それぞれ順調に妊娠。

 懸案が一つ片付いたと言ってよいだろう。

 え、朝夕二回は、って?

 元々、ネディーアール殿下が朝夕二回なので、それに合わせているだけだ。

 他意は有りません。

 いや、まあ、仕方がないよね。

 だってさ、部屋に入ったら美人母娘が絡んでて『ご主人様ぁ~早くぅ~』とか言うんだよ。

 反応しないのは男として終わってると思う。


 問題は、女性を朝夕五名ずつ引き連れていることだろう。

 モーラン系列の女性、ケイマン族ラト族の女性捕虜、何れも身体魔法系の戦士だから、やたらと体格が良い。

 ボブ・〇ップ系とか、アーノルド・シュ〇ルツェネッガー系とか、まあ、目立つ。

 行きはまだいい。

 立って歩いてるから。

 問題は帰り。

『事後』だから、基本、失神している。

 失神したスティーブン・セ〇ールを台車に乗せて運ぶわけだ。

 それも、五人。

 話題になるのは分かる。

 ちなみに五名連れて行くのはまだ一度もヤッていない女性が残っていて、彼女らもスルターグナ方式で一度は失神させる必要があるからだ。

 あと、妊娠率一〇〇パーセントは対外的に拙いので、それの対策でもある。


「つって、キョウスケ、デュケルアール様にも手を付けちゃったんでしょ」


「え、いや、まあ、その、・・・」


「ジャニベグさんの時にも思ったけど、キョウスケって女性の趣味が偏ってて、趣味でない女性にはとっても冷淡だけど、逆に趣味の女性には滅法弱いよね。

 絶対に拙いって女性でも手を付けちゃう」


 う、それは、・・・そんなことがあるわけ、・・・ないよね、多分。


「デュケルアール様って僕でも知っているぐらい政治背景がグチャグチャじゃない。

 それに手を出すとか、精霊が手を出さない所に手を付けるようなものだよ」


 それは、・・・重々承知して、・・・いなかったかなぁ、・・・どうしよう?


 そうこうするうちに、施薬院に到着する。

 施薬院、シャイフ教室の一室に少なくない人数が集まっている。

 シャイフ・ソユルガトミシュ主席医療魔導士を筆頭にバフシュ・アフルーズ、モローク・タージョッ、セヴィンチ・カームラーン、アフザル・フマーユーンもいる。

 それぞれ従者を従えているから結構な人数だ。

 今日はこれから『ハイアグラ』講習会なのである。

 先着していたスルターグナとサムルの二人により既に資料が配られている。

 講師役はオレとタイジ、補佐はスルターグナとハトンとサムル。

 ネディーアール殿下とアシックネールは他で忙しく来ていない。

 戦勝記念祝賀会に出席を強制されているのだ。

 ネディーアール殿下はバャハーンギールとピールハンマドと並んで座らされているらしい。

 宗家一族で、ケイマン・オライダイを討ち取った英雄。

 宗家の箔付けに良いのだろう。

 ちなみにオレは呼ばれていない。

 タイジも、レニアーガー・フルマドーグも呼ばれていない。

 邪魔なんだろうな。




「ふむ、従来の精力剤は精力の前借だったが、これは純粋に精力が増えるのだな」


「代わりに魔力を消費します。

 何も無しに精力だけが増えるわけではありません」


「つまり、単純に言えばマナを精液に変えるということか」


 オレの説明にシャイフが唸る。


「これ、とんでもねーな。

 従来の精力剤は一日にヤレる回数は増えたが翌日に反動が来る。

 トータルでは減ったからな。

 これなら三日間ぶっ続けのブンガブンガもイケる」


「それよりも後継ぎに悩んでいる貴族への供給が優先では?」


 目を輝かせて語るバフシュ・アフルーズにセヴィンチ・カームラーンが冷静に突っ込む。


「正にその通りだ。

 既に一日でも早く欲しいとの要請が来ておる」


 セヴィンチの言葉にシャイフが同意する。


「戦争でも有用です。

 男性魔導士の総魔力量の一割前後を消費することで女性魔導士二名を完全に回復できます。

 勿論、個人差は大きいですが。

 クロスハウゼン・バフラヴィー様や、モーラン・バルスボラト殿は戦略物資として備蓄したいと話しておられました。

 抗生剤や鎮痛剤は兵士を死なせないために重要ですが、ハイアグラは戦いに勝つために必要だと」


 タイジの説明に皆が大きく頷く。


「大雑把に言えば魔力を精力に転換する物ですので、使用時の魔力量低下は必至です。

 また、注意すべき副作用としては心臓の負担増大が挙げられます。

 心不全患者には禁忌です。

 高齢者も注意すべきでしょう。

 五〇歳以上は使用注意です。

 ここだけの話ですが、ベーグム・アリレザー殿が倍量使用して、行為中に亡くなられております」


「うーむ、そうか。

 と、なると宗主猊下には使用できぬな。

 従来の精力剤も無理ではあったが」


 オレの説明にシャイフが厳粛な顔で考え込む。


「いや、むしろ、スゲーだろ。

 アリレザー殿の腰の手術をしたのは俺だ。

 アリレザー殿の一物はしょうべんする以外に使用できなくなっていた。

 お気に入りの美少女にしゃぶって貰ってもピクリとも反応しなかったんだぞ。

 それが一時的にでも使用可能になったってことだろう。

 スゲー効果だ」


 バフシュは前向きだ。

 カナンのこの辺りの感覚は地球でのアメリカに近い。

 日本だと効果よりも副作用が問題になることが多い。

 アメリカでは逆だ。

 こちらもそうで、効果があれば副作用は致し方ないとの意見が多い。


「顧客は、まずは後継ぎのいない貴族、次が自護院か。

 いや、一般人にも売れるはず。

 男にも女にも売れる」


 バフシュ・アフルーズがぶつぶつと計算する。


「他の副作用として、男性ホルモンが陰部に集中し、体の他の部分に行かなくなる、というのがあります。

 ただこれは、第二次性徴が終了している成人男子、特に十八歳以上では、ほぼ関係ないでしょう。

 連用すれば髭が薄くなるとかあるかもしれませんが。

 ただ、第二次性徴が終了していない男子、特に十五歳未満では身体の発育に支障が出る可能性があります」


「流石に『成人の儀』前の男子は使わぬであろう。

 念のため注意はしておく」


 シャイフの言葉に皆が同意する。

 普通はそうだよな。

 やっぱ、シャールフって色々な意味で普通じゃないと思う。


 ざっとした説明の後、オレが実演。

 丁寧にゆっくりと五回ほど行う。

 使用している魔法と理論はプリントにして既に配布済みだ。

 まあ、オレの『高級医薬品講座』に出ていないと理解できないけどね。

 実演の後は実技指導。

 皆が一斉に練習に入る。

 あっさりと成功させたのはシャイフとバフシュ。

 なんだかんだ言って流石である。

 二人とも魔法の分析能力と理解力が高い。

 続いて成功したのはタージョッ。

 彼女も分析能力と理解力に優れるが、基礎魔力量が足りない。

 器用さでは、シャイフ、バフシュよりも上かも知れないが、パワーが足りないので苦労した。

 結局、成功したのは三回目、魔力量ギリギリである。

 魔力量が同じ程度で以前から仲が良いスルターグナが付きっきりで指導したのが功を奏したのだろう。


「あー、私も苦労したからねー。

 毎日作ってるんだけどー、未だに一日四回が限度だよー

 ターちゃん、三回で出来て優秀だよー」


「・・・ターちゃんって私の事?

 マリセア、・・・うう、気を抜いたら出る」


 タージョッがスルターグナの言動に戸惑う。

 スルターグナ、最近とみに言動が二次元になっているからな。

 しかし、タージョッの『マリセア』癖、まだ治ってなかったのか。


「えー、タージョッだから、ターちゃんでしょ。

 あるいは、そう、タージョリーナとかどう?

 タージョッって名前いやだったんだよね?」


「・・・気に入ってはいなかったけど、勝手に改名なんて出来ないわよ。

 マリセア、・・・また、やっちゃった、・・・」


「だーかーらー、真名よ、真名。

 魂の名前なのよ。

 私の事は『グナ』って呼んで。

 師匠に名付けて貰ったの。

 ターちゃんにも色々と教えてあげるから。

 おねーさんがいい資料を見せてあげる」


 貴族世界なのに『真名』で呼び合うって完全に痛い奴だ。

 タージョッがどーなってんのって顔でオレを見る。

 うん、無視しよう。

 スルターグナは既にオレの手に負えんのだ。

 許せ、タージョッ。


 ハイアグラ授業から腐った世界への勧誘に変位した二人を放置して他に回ると、セヴィンチ君が成功していた。

 セヴィンチ・カームラーンは器用さではタージョッやスルターグナに劣るが、魔力量は多い。

 彼は自護院にも所属している正魔導士なのだ。

 その一方でセヴィンチ君の横で頑張っているアフザル・フマーユーンは苦戦している。

 いや、全然できていない。

 アフザル・フマーユーンはアフザル教室を代表してここに送り込まれてきた。

 ハイアグラは施薬院全体で話題になっており、シャイフ教室だけで独占するのは政治的に無理だったらしい。

 それだけの圧力が他の教室からかかったという事だ。

 シャイフは施薬院主席医療魔導士であり立場上独占は難しいと判断したのもある。

 だが、現実問題として『ハイアグラ』は『高級医薬品』であり、基本的に正魔導士かそれ以上でなければ作製は困難だ。

 従魔導士でも作れなくはないが、極めて精密なマナ操作が必要となる。

 タージョッもスルターグナも従魔導士だが、元からマナ操作が器用であり、更にオレが付きっきりで指導した。

 アフザルにはそれがない。

 聞けばアフザルは、高級医薬品はアスピリンしか作れないらしい。

 それでハイアグラは無理だ。

 無理だが、アフザル一族では他に高級医薬品を作れる者はいないという。

 実を言えば、施薬院全体で見ても『高級医薬品』を作れる医師は数人だ。

 だが、彼らもここには出てこない。

 以前バフシュが語った所では、変態の若造に教えを乞うなど出来ないってことらしい。

 あと、出てきて作れなかったらプライドが崩壊するからとも。

 そーゆー意味ではアフザルは何とかしてやりたいが、残念ながら今すぐは無理だ。

 タージョッも何日もかかったからなぁ。




 アフザル以外の参加者が成功したところで『ハイアグラ講習会』は終了した。

 アフザルには時間があるときに皆で教える約束をしたが、・・・なかなか難しいと思う。

 シャイフは早々に退出した。

 なんだかんだ言って施薬院主席医療魔導士は激務である。

 特にシャイフのような律儀な性格だと適当にサボることもできないのだろう。


 シャイフがいなくなった途端、オレに近づいてきたのはバフシュ・アフルーズである。


「カンナギ、聞いたんだがお前、デュケルアール様とヤッたんだって?」


「いえ、デュケルアール様の所に出入りしているのは事実ですが、あくまで治療のためで、・・・」


「それで、デュケルアール様のパンティーは何枚手に入るんだ?」


「ナチュラルにパンティーが手に入る前提で話を進めないで頂きたいのですが。

 オレだって一枚も貰っていませんから」


 パンティー、パンティーって、タージョッ他の視線が厳しいんだが。


「お前、デュケルアール様の所に出入りして、未だに一枚のパンティーも貰っていないのか?

 それ、よっぽど、下手なんだろ」


 誰が、下手、だと!


「そんなわけ、・・・じゃなくて、パンティー貰ってどーすんです!

 頭から被るんですか!」


 危ない。

 あやうく誘導尋問に引っかかる所だった。


「牙族じゃねーんだから、被るわけねーだろ。

 このカゲシンでデュケルアール様と一発やったってーのは一流貴族、一流男性の勲章だ。

 その中でもデュケルアール様を満足させてパンティーを貰った奴は最高級の男って話なんだぞ。

 デュケルアール様を十分に満足させた男だけがパンティーを貰える。

 常識だろう。

 知らんとは言わさん!」


「いや、普通に知らなかったんですが。

 ここだけの話ですがデュケルアール様は最近までまともに話すことも困難な状態でした。

 つまり、デュケルアール様が主体的に贈答先を決められる状態ではなかった筈です。

 オレが現在通っているのも、その治療のためです」


「話せない、・・・へっ、・・・そうなのか?

 あ、麻薬、・・・」


「その話は大声では言わないで頂ければと」


「ちょっと待て、あれ、・・・」


「デュケルアール様関連の『贈り物』でしたら宗主猊下が決めていたようですよ」


 戸惑うバフシュにタージョッが横から口を出す。

 こいつ『宗主侍医主任補佐』だからな。

 色々と見てきたんだろうな。


「え、宗主が決めてたのかよ。

 興覚めだな」


「じゃあ、いらないですね」


「いや、それでも物は欲しい。

 アレを持ってるとブンガブンガでモテるんだ!」


 ブレないな、この人。


「つーことで、一枚頼む」


「だから、なんで、つーことで、なんですか?

 仮にオレがそれを持っていたとして、先生に提供するメリットがないんですが」


「え、そんな、俺とお前の仲じゃないか。

 今までも色々と便宜を、・・・あれ?」


「うん、そーですよね。

 ここしばらく先生に便宜を図ってもらった覚えはありません」


「いや、でも、・・・頼むよ、なあ、キョウスケ。

 デュケルアール様の下着を持っているかどうかで男の格が問われるんだ。

 モノも小さければテクニックも無い男があれを持ってるってだけで、でかい面してんだぞ!

 殿下なんて二枚も持ってる」


「殿下って、フサイミール宗主補殿下ですか?」


「そうだ。

 まあ、殿下は技巧派だけどな」


 フサイミールも相変わらずだな。


「じゃあ、そうだ。

 デュケルアール様の麻薬、・・・じゃなくて使っていた薬を調合してた男を教えてやる。

 シャイフの爺も知らねえ情報だ。

 それで、どうだ?」


「デュケルアール様の薬ですが、ほぼ治っています。

 今は薬が無くても問題ないですよ」


 セックス依存症は治っていない、本人も治す気が無くて、薬が無くても満足できるようになっただけだが、薬から脱却したのは嘘じゃない。


「え、そうなのか?」


「それより、その話、シャイフ先生も探してましたけど、知っていて伝えてないのは拙いんじゃないですか?」


「え、いや、それは、・・・だな、・・・」


 オレの指摘にバフシュが詰まる。

 ここに居るのはオレとバフシュだけではないのだ。


「あー、分かった。

 カゲクロに住んでるピールディって奴なんだが、・・・」


「ああ、うちの一族のアフザル・ピールディでしたら、もうカゲクロにはいませんよ」


 アフザル・フマーユーンが横から口を出す。


「え、そうなのか?

 休業にしてるって聞いてたが?」


「完全に逃げたようです。

 逃亡先は、・・・恐らくテルミナス」


 バフシュが呆然としている。

 アフザル・フマーユーンはオレの方に向き直った。


「ピールディはうちの一族の鼻つまみでね。

 年齢はもう四〇過ぎ、五〇に近い筈なんだが、どうにもこうにも。

 医者としての実力はあって、若いころはシャイフ先生と次の施薬院主席医療魔導士候補に挙げられていたぐらいだったらしい。

 でも、金に汚くてね。

 裏で非合法の薬を売り捌いてカゲシンから追放になった。

 普通、カゲシンから追放されたらカゲクロやカゲサトもダメな筈なんだが、何故かカゲクロに住んでた。

 確定ではないけどエディゲ宰相家と裏で繋がりがあったみたいでね。

 裏の仕事を請け負う代わりにカゲクロでの居住を認められていたって話だよ」


「それが、もう、いないと」


「機を見るに敏過ぎたんだよ。

 クチュクンジ政変では、真っ先にクチュクンジに媚びを売ったらしい。

 エディゲ家の情報を持って、ね。

 それで、クチュクンジがカゲシンを追われると、居場所がなくなった。

 実際、バャハーンギール政権からは指名手配されている」


「それで、逃げたと」


「カゲシンから破門。

 うちの一族からも破門だよ」


 アフザルが処置無しという顔になる。


「なんでぇ、俺が損しただけじゃないか」


 バフシュ・アフルーズは悪態をつくと、それでも「もし、手に入ったら一枚」とオレにしつこく言って去っていった。

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