07-29 ヘロン 十一月九日午前 (二)

 第二歩兵連隊司令部を後にしたオレは魔導連隊直属中隊を率いて、ジャニベグとシャールフ率いる第一魔導大隊に合流した。


「敵は四〇〇〇人の重装歩兵部隊だ。

 大盾にプレートメールと重装備だが、重いから進む速度は遅い。

 耳も聞こえず、視界も悪いから、そうそう方向転換もできないだろう。

 魔導砲にとってはいい的だ。

 敵指揮官、とにかく目立つ鎧の奴を狙え!」


 動揺していることを悟られないよう、出来るだけ平静な表情を作って命令する。

 同時に、第二第三魔導大隊に対しても命令を送る。

 リス型牙族のスクワ族伝令が小さな体に巨大な尻尾をフリフリ走っていく。

 ちょっと、なごむ。

 魔導砲は三個大隊合計で五四門。

 四〇〇〇人の敵に対して圧倒的に少ない。

 可能な限り敵指揮官を狙い撃ちして士気崩壊を狙う。

 いや、戦列歩兵部隊って総司令官と一兵卒しかいないって話はある。

 中隊長とか小隊長とかは平時のまとめ役でしかないらしい。

 でも、それぐらいしか思いつかない。


 敵重装歩兵が整然と隊列を組んだまま第一線陣地を越えてくる。

 その前には味方の第一歩兵連隊が敗走一歩手前の状態で後退してくる。

 幸いなことに、速度は圧倒的に味方が早い。

 味方歩兵は、皮鎧にクロスボウと短剣だけ。

 プレートメールと大盾、長剣の敵兵とは装備重量は倍以上違う。

 逃げ足が早いことは朗報と取っておこう。

 敵に追いつかれて白兵戦で殲滅されるのは避けられそうだ。


 味方が陣地線に入ったところで魔導砲の砲撃を始める。

 敵はゆっくりと、だが着実に前進してくる。

 密集隊形だから、当てるのは簡単だ。

 そして、当たれば敵兵は倒れる。

 しかし、期待していたような効果は無かった。

 轟音と共に一発で数人の兵士がなぎ倒される絵面を期待したのだが、基本、一発で一人しか倒れない。

 うまく行って二人。

 人間が身に着ける鎧なんて、二号戦車よりも装甲が薄いと高をくくっていたが、考えてみれば、鎧の前後で二枚、盾も含めれば三枚の装甲板があるわけで、装甲板の間には人体と言う緩衝材もある訳で、二人目の貫通は難しいってことだろう。

 更に、兵士が倒れても、周りの兵士がそれでパニックになって後退するなんてこともない。

 倒れた兵士の穴を後続が素早く埋めて、隊列は保持され、そのまま前進してくる。

 恐るべき練度。

 考えてみれば、フルフェイスの兜で視界が悪いから、隣はともかく、隣の隣ぐらいになると分からないのかもしれない。

 視界が悪く、耳が聞こえないってーのも、悪いばかりではない?

 素晴らしいというか頭が痛すぎるが、敵だから笑えない。

 それでも撃つしかない。

 魔導砲は少なくとも当たれば敵を倒せるのだから。

 クロスボウ部隊も射撃を開始する。

 塹壕線が斜めだから、常にどこかは側面攻撃が出来る。

 できるのだが、・・・これ、効いているのだろうか?

 いや、・・・効いてはいる、・・・ようだ。

 敵兵の何人かが足を引きずって脱落している。

 しかし、・・・千人単位で射撃して数人って。


 射撃、砲撃を続けるが、敵の隊列は全然崩れない。

 あっという間に敵が目前に。

 歩兵部隊が退却を開始する。

 少しだけマシなのは、塹壕線がジグザグなので、退却するのは敵が接敵し始めた場所だけという事。

 部分、部分で退却していく形だ。

 退却する部隊の横の部隊は留まって側面攻撃を行える。

 とは、言うものの、現実には一か所が接敵され退却すれば、その横も次々に退却を強いられる。

 気が付けば魔導砲部隊も退却を強いられる位置に。

 魔導砲部隊だが、三個の大隊を横一線ではなく、前後位置を変えて配置している。

 一度に三個の大隊が退却を強いられる状態になるのを避けるためだ。

 一個大隊が退却中でも残りの二個大隊は砲撃を継続できる。


 現状、一番前にいるのが第一魔導大隊、二番目が第二魔導大隊で、最後方が第三魔導大隊である。

 第一魔導大隊は第三魔導大隊の後ろまで一気に後退する予定。

 問題は魔導砲部隊の後退には時間がかかるという事だ。

 魔導砲は引き綱をつけたまま配置されており、馬匹を繋げば直ぐに後退できる体制にはなっている。

 だが流石に、クロスボウ一丁の歩兵部隊ほど迅速には後退できない。

 敵も、魔導砲を重要目標と認識したらしく、追及も厳しそうな雰囲気。

 そんなことで、オレの魔導連隊直属中隊の出番である。

 直属中隊が牽制攻撃をかけて、その間に魔導砲を後退させるのだ。




「中隊、前進用意!」


 号令をかけるが、いざとなってみれば、皆、ガチガチだった。


「やることは、昨日と同じ。

 側面から切り込んで、敵指揮官を狙う。

 敵の隊列を乱し、前進がとまったら直ちに退却だ」


 オレの言葉に、兵士たちが硬い表情で頷く。

 つーか、見れば、オレの横のモーラン・マンドゥールンとネディーアール殿下までガチガチ、顔色が悪い。

 シノ、シマのコンビも緊張している感じ。

 ハトンとメイド隊もかなりダメ。

 リタは、・・・変わらんな。


 ちなみに、ネディーアール殿下、マンドゥールン、シノ、シマ、そしてリタはプレートメールを装着している。

 ただし、兜はフルフェイスタイプではない。

 視界と聴力を確保するため開口部が大きい。

 決められた経路を真直ぐ突進するだけなら防御力の高い、開口部の小さいフルフェイスでも良いが、オレの部隊のように臨機応変に移動する場合は、完全フルフェイスは無理だ。

 だが、防御力の低い鎧で、防御力の高い敵とまともに戦うのは怖いのだろう。

 オレ自身は皮鎧なんだけどな。


「昨日と違う所だが、後方の正魔導士は、ファイアーボールは禁止だ。

 全員、ライトニングボルトだけ使用しろ。

 敵隊列内に突入するまでは、魔法を使わず、盾で耐えろ。

 敵隊列内に突入したら、各個にライトニングボルトを放て。

 上級以上はライトニングロッドの射程内に入り次第、各個に攻撃を許可する」


 マンドゥールンがおずおずと手を上げる。


「あの、・・・兄貴、オレはどうすれば、・・・オレの攻撃があれに通じるとは思えん」


 ああ、分からんか。


「盾で敵を押さえつけて、剣で相手の兜をぶん殴れ。

 止めを刺そうと考えるな。

 敵重装歩兵は転倒させた時点で、こちらの勝ちだ」


 まだ、分かっていない。


「敵重装歩兵は、防御力は高いが動きは固くなる。

 一旦転倒すれば、起き上がるのは困難になる」


「いや、プレートメールは、意外と動けるぞ。

 皮鎧ほどではないが、転倒しても起き上がるのは五秒もかからん」


 ナディア姫が反論する。


「単独の兵士が平時でならその通りです。

 ですが、戦場の喧騒の中で、隊列の中で起き上がるのは至難の業です。

 後ろからは後続の兵士が前進してきます。

 後続の兵士もフルフェイスの兜です。

 足元など見えませんし、音もよく聞こえません」


「そうか、後続の兵士に踏み潰されるわけか」


 ネディーアール殿下が納得したように頷く。


「この様な重装歩兵の集団など、誰も経験していないと思うが、其方、良くわかるな」


 地球の知識があるからな。

 オレは改めて兵士たちに向き直る。


「ともかく、敵の最大の弱点は、視界と聴覚の悪さ、途中での作戦変更が困難という事実だ。

 敵兵士は後ろから殴り倒せ。

 敵の膝を狙うのも効果的だ。

 敵の攻撃を受けたら、相手の視界の外に出る事を心掛けろ。

 乱戦になったら、こちらの勝ちだ!」


 下手に隊列を維持されたまま白兵戦になったら、大盾の圧迫で何もできないままやられちゃうってーのもあるのだが、それは言わないでおく。


「いくぞ!」


 号令と共に指揮官先頭で飛び出す。

 敵重装歩兵集団の左側面から突進する。

 敵は第一歩兵師団第一歩兵旅団第二歩兵連隊の第一歩兵大隊。

 思った通り、と言うか、敵は側面攻撃に対して対応できなかった。

 直前まで近づいたところで、敵の最右翼、こちら正面の一列が向きを変え、盾を構えるが、一列だけだ。

 オレはそのまま、突っ込んだ。

 肩掛け三七ミリで、敵兵士の腹に穴を開け、そこに躍り込み、左右の兵士の兜を殴り飛ばす。

 オレの剣は鈍器モードにしているが、それなりの力で殴ったら、兜は半分以上潰れた。

 間違いなく絶命しているだろう。

 オレに続いてナディア姫とマンドゥールンが突入する。

 二人は、・・・取りあえず撃ち負けてはいない。

 二人の外側のシノ・シマコンビは相変わらず『竜』で無双している。

 シノさんの『火竜』とシマの『水竜』、それぞれ両手遣いの二刀流。

 敵プレートメールでも殲滅速度はさして変わらないように見える。

 オレの後ろからはリタが嬉しそうに肩掛け三七ミリを連射している。

 どうやら、ハトンが協力して発射用ファイアーボールを交互に担当し、発射速度を上げているようだ。

 至近距離だから、面白いように当たり、当たれば一撃だ。

 うまく盾を避けて、同時に二人撃破も成功させている。

 リタ、極めて楽しそうだ。

 キャハ、キャハと、・・・戦闘狂だろうか?

 ちょっと、心配。

 フキ、フト、ハナの三人はライトニングロッドで着実に敵を屠っている。

 いや、正確には屠っているのかは分からない。

 ただ、ライトニングボルトが直撃した敵はほぼ倒れているので、充分だろう。

 後続の魔導士たちも似た感じ。

 何とかなりそうなので、そのまま敵戦列を斜め後方から前方に向けて縦断する。

 敵第二大隊からその隣の第一大隊をかすめて敵の前に出る。

 出る直前に目くらましとして大型のファイアーボールを敵第一大隊に打ち込む。

 プレートメールの兵士相手だから殺傷効果は期待できないが、爆風でかなりの人数が転倒したので、足止めにはなる。

 中隊を率いて味方戦線に戻る。

 突撃開始から撤収まで十分も経っていない。

 時間は短いが、敵は結構倒したし、一時的ではあるが敵の突進を止め、魔導砲退却の時間を稼げたから十分だろう。

 そのまま、第二魔導大隊の所まで移動して休憩だ。


 第二魔導大隊ではタイジが悲壮な顔で指揮を、・・・執っていなかった。

 大隊の指揮を執っていたのはタイジの妻であるテスナとオルジェイトのコンビ。

 二人ともタイジと同年代だが、テスナはスラウフ族長の娘、オルジェイトはモーランの娘。

 それぞれ指揮官としての教育は受けているらしい。

 引きつった顔で懸命に指揮を執っている。

 タイジは長砲身魔導砲一門を専用にして、ひたすら砲撃を繰り返していた。

 まあ、これは、これで良いのだろう。

 オレは例によって待避所でしゃぶられて吸われた。

 しゃぶるのと吸うのを同時にする必要はないんじゃないかなぁ。

 そりゃ、ここでしゃぶっているのはハトンだけだけど。

 リタ君、一緒にしゃぶろうとするのは止めよう。

 とか思っていたら、早々に呼ばれてしまった。

 第二魔導大隊がそろそろ危険だと。

 休憩に入ってから十分たったかどうか。


「あと、三分!」


 妻の一人に突っ込んだ状態のモーラン・マンドゥールンが悲鳴を上げる。

 他の兵士も大慌てで『出して』、そして整列。

 順番を待っていた女兵士が恨めしそうな顔で敵を睨む。

 女、らしいが、顔がごついから極めておっかない。


 それにしても、敵第一軍団の突進力は半端ない。

 逆に言うと、両脇の第二第三軍団はまだそれほど前進出来てはいないようだ。

 それを利用して、突進する敵第一軍団の東側面、敵の右側に回り込む。

 そこからは、さっきと同じ。

 今度の敵は第二歩兵師団第三歩兵旅団第五歩兵連隊の第一大隊だ。

 やはり斜め後方から突入して、敵前方まで突破し、最後に大型ファイアーボールをかまして引き上げる。

 味方の喝さいを浴びながら、今度は第三魔導大隊の所に移動する。


「もうさー、カンナギ殿たちが敵の中をグルグルしてればそれで勝てるんじゃないですかねー」


「そうそう、その方が僕らも楽だしー」


 レニアーガー・フルマドーグとアスカリ・アブルハイルは例によって他人事だ。

 ただ、まあ、顔色は二人とも芳しくない。

 相当、消耗しているようだ。


「もう、あいつら、なんなんだ?

 魔導砲で吹っ飛ばしても後続が平気な顔して前に出てくるんだよー。

 倒れた味方を平気で踏んづけて前進してくるんだよー。

 牙族ってヤッパ人間じゃないよねー」


「そうは言うが、俺たちはもう戦うしかないんだぞ」


 涙目で不平をこぼすアスカリにレニアーガーが苦言を呈する。


「俺たちは魔導士だ。

 降伏してもフロンクハイトに連れていかれて吸血鬼にされちまうだろう。

 ベーグム・ニフナレザー様を見ただろ」


「あー、僕、泳げるから、いざとなったらヘロン河を泳いで逃げようかと」


 カゲシン貴族で泳げるのは少数派だ。

 つーか、現代地球でも義務教育で水泳をやる国は少数派らしい。

 中世レベルだと、港町とかでなければ大半は泳げないだろう。


「言っとくがヘロン東方だと、ヘロン河北岸は絶壁だ。

 二〇メートルぐらいの崖を降りることになるぞ」


 オレの言葉にアスカリは絶望的な顔になっていた。

 そうこうするうちに、また敵が迫ってくる。


「一回の休憩で一人にしかできない。

 部下の回復が間に合わん!」


 マンドゥールンが吠える。

 いや、十分に満たない休憩時間、それも戦場で一発やれるマンドゥールンが凄いだろう。

 訓練だとは思うが、良くそーゆー気分になれるものだ。

 いや、オレも出してるし、吸われてるけど。

 しかし、ハトン君、毎回、しゃぶる必要はあるのかな?

 シノさんも毎回吸う必要はあるのかな?


「当然です。マナ補給は重要です」


「ネディーアール殿下は自然回復だけでなんとかしていますよ」


「ネディーアールは『竜』を使っていないではありませんか。

 燃費が違います」


 オレの疑問にシノさんは平然と答えていた。


 三回目の出撃だが、今回はこれまでとちょっと勝手が違う。

 第一魔導大隊は敵第一軍団の左側西側に位置していた。

 第一魔導大隊が砲撃を停止し退却している間にオレの中隊が突撃していたわけで、左翼から回り込んで攻撃できた。

 第二魔導大隊も敵の右側東側だったから、右側から回り込めた。

 だが、第三魔導大隊は敵第一軍団の真正面に位置している。

 第三魔導大隊は砲撃を中止して退却を開始しているが、両脇の第一第二魔導大隊は砲撃を継続している。

 そんなことで、左右から回り込むことはできない。

 そんなことで、正面攻撃。

 そんなことで、趣向を変えた。

 迫りくる敵に対して、まずは『地中爆発型ファイアーボール』を連発。

 オレだけでなく、シノ、シマ、ネディーアールの四人である。

 四人で数十発発射して、敵前線を転倒させた後、一般魔導士集団がファイアーボールを一斉投擲。

 それを目くらましに、上級以上二十人ほどだけで敵に突っ込んだ。

 敵に突っ込んで、ぐるっと百八十度回転して味方陣地に戻る。

 派手だが、時間にして、五分に満たない。

 乱した敵隊列は四~五列。

 稼げた時間は十分あるかないかだろう。

 今までの出撃より戦果はかなり少ない。

 だが、それで十分、というか致し方ない。

 正面攻撃でできることは限られているし、敵中央後方にはフロンクハイトの魔導大隊が控えている。

 これと関わるのも問題だろう。


 第三魔導大隊の後退は、クロスハウゼン旅団の第二塹壕線の崩壊を意味していた。

 既に第二歩兵連隊の大半は第四塹壕線に退却している。

 オレたちも第三塹壕線に退却する。

 第二塹壕線から第三塹壕線へは縦に交通壕が掘られていて、そこを経由して後退できる。

 頭上には左右から第一第二魔導大隊の魔導砲が乱射され、後退を助けてくれる。

 一部の敵が、交通壕に入って追撃してきたが、これも想定内だ。

 オレが最後方になり、退避壕の出口で待ち構える。

 退避壕、オレたちが休憩していた圧縮レンガ製の屋根がある所だ。

 敵が退避壕に入ったのを確認してこちら側のドアを閉める。

 ドアは急造の木製だが、それなりに頑丈。

 閉じたところで紐を引っ張る。

 紐は退避壕内の圧縮レンガに繋がっている。

 内側から要のレンガが抜けると圧縮レンガの屋根が崩落するわけだ。

 二十人ほどレンガの下敷きにしたのを確認してオレも第三塹壕線に退却する。




 第三塹壕線には、休憩できた、と言うか、第一陣地でろくに戦っていない第一歩兵連隊が待ち構えている。

 魔導部隊は引き続き戦闘だが。

 戦闘開始二時間弱で第二塹壕線まで突破されるのは想定外だが、取りあえず、一息は付ける筈だ。

 敵にそれなりの損害を与えている、・・・与えてるよね、・・・だし、・・・何より、敵重装歩兵は活動限界の筈だ。

 突撃開始から二時間。

 全身プレートメールにフルフェイスの兜では体力の消耗が著しい。

 魔道具の鎧だから魔力の損耗も厳しい。

 正魔導士でも限界だろうし、従魔導士クラスはとっくに限界を超えている筈。

 帝国軍では魔法防御を施されたプレートメールは上級魔導士以上が推奨されている。

 ネディーアール殿下やモーラン・マンドゥールンのように魔力量が豊富な者でも結構疲れているのだ。

 敵軍も休憩が必要だろう。

 絶対的に、少なくとも二時間以上は。

 そんなことで楽観視というか、一息つけるだろうと考えていたのだが、・・・敵陣を見てオレは、いや帝国軍全軍が驚愕した。


 第二塹壕線を超えたところに整列していたのは無傷の敵戦列だった。

 旗は第一歩兵師団の第二歩兵旅団と第二歩兵師団の第四歩兵旅団。

 先頭の四個大隊は、総員プレートメール装備。

 てっ、梯団方式ですか?

 成程これなら、重装歩兵の稼働時間が短いという欠点を補って、突進力を維持できる。

 じゃなくて、重装歩兵八〇〇〇人って、いくら金掛けたんだよ!

 概算でも国が傾くレベルじゃねーのか?

「人型最終決戦兵器の修理費じゃねーんだから。

 ケイマン族長って本気で馬鹿だろう!」


「馬鹿かどうかは、どーでも良かろう。

 それより、どーするのだ!」


 ナディア姫の言葉に我に返る。

 しかし、そーは言われても、・・・。


 二時間後、第三塹壕線は完全に蹂躙されていた。

 四時間弱で、基本五線の塹壕線のうち三線が突破されたのだ。

 まだ、昼前なんだが。

 どーしろと?

 ・・・やっぱ、ハトンを亜空間ボックスに突っ込んでセンフルール勢とヘロン河を渡ることになるんだろうか。

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