05-05S インタールード 修行
━━━第四帝政ではマリセア正教を介しての統治が行われたが、その最大の特徴とされたのが『修行制度』である。宗教行為に伴う修行は数多くの宗教で取り入れられているが、宗教が政治の中枢であった第四帝政では、『宗教修行』が政治的出世に強く影響した。━━中略━━厳しい宗教修行を達成した者が高い宗教位階を得る事はそれなりの合理性があるだろう。だが、宗教修行を達成した者が、政治家として、あるいは官僚として優秀なのかは、その様な者も存在はするだろうが、はなはだ疑問である。だが、第四帝政では、これが同一視された。━━中略━━第四帝政の制度は、官吏が腐敗にまみれた第三帝政の反省から採用された面もあり、実際、第四帝政における役人腐敗は極めて少なかったとされる。しかし、一方において、第四帝政の役人、官僚は実務能力に乏しい傾向にあったのも事実であった。━━中略━━第四帝政後期では、実務能力に長けた者を採用するために、宗教修行が一部緩和されたが、これは、議論を呼ぶこととなる。━━━
『ゴルダナ帝国衰亡記』より抜粋
特別大隊のカゲシン帰還に伴い、クロスハウゼン師団では、その論功行賞、正確にはそのための査定が行われていた。
論議の中心となったのは、勿論、カンナギ・キョウスケが率いた分遣隊であり、カンナギ自身である。
勲功第一は間違いないが、若手ばかりで、客観的に評価できる者がいない。
隊長のカンナギからして新参者であり、しかも、現在は『百日行』の修行中である。
故に、師団は、極めて異例であるが、兵員同士の相互評価を集めることとなった。
分隊長以上の全ての兵員から聞き取りを行ったのである。
「とにかく、すごかったのは、キョウスケなんです。
僕なんか、ホント、何もしなくて、・・・ただ、トゥルーミシュさんが言う通りに魔法を撃ってただけで、・・・だから、僕らが生き残ったのは、全部、キョウスケのおかげなんです」
基本的に自分の手柄を主張する兵員の中で、ゲレト・タイジの証言はいささか変わっていた。
「いや、其方も、数十発の魔法を放ったと聞く。
充分に勝利に貢献したと言って良い」
クロスハウゼン師団長カラカーニーは、何故か大量に冷や汗をかいているゲレト・タイジの証言を訂正した。
カラカーニーは、ゲレトに他の者の評価も聞き取っていく。
だが、残念ながら彼からはカンナギとトゥルーミシュ以外の評価は聞けなかった。
どうやら、他は全く見ていなかったらしい。
魔導士としての才能は充分だが、これでは指揮官としては厳しいだろう。
どうしたものか。
一方、ゲレトの証言でもトゥルーミシュはかなり頑張っていたことが分かり、カラカーニーは安心する。
ゲレトによれば、トゥルーミシュは最前線で戦いながら、ゲレトや他の者に指示を出していたという。
初陣とは思えない出来である。
だが、その活躍もカンナギには大きく劣る。
彼の活躍は驚異的だ。
カンナギの配下にいた小隊長たちは、皆、カンナギを絶賛している。
魔導士としての能力もさることながら、指揮官として傑出しているとの報告には驚嘆するしかない。
長年、軍人をやっているカラカーニーであるが、指揮能力のある高位魔導士というのは、自分の身内以外で見たことが無い。
その身内にしても、幼少から厳しい鍛錬を施しての結果である。
平民上がりのカンナギが、どこでこのような技量を身に着けたのだろう。
身内の小隊長たちは、全員がカンナギをクロスハウゼン師団に取り込むべきとの意見だった。
確かに、そうすべきだろう。
「それより、僕、キョウスケが心配なんです」
一通りの証言の後、やや、冷や汗が収まったゲレトが自ら話し出した。
タイジの冷や汗が収まったのは、横にいたライデクラートが中座したためなのだが、カラカーニーには分からない。
少しは落ち着いて来たのかと安堵する。
「キョウスケは、レトコウから早馬でカゲシンに戻ったと聞いています。
それでいきなり百日行なんて大丈夫なんでしょうか?
僕なら絶対に目を回して倒れています」
正直すぎる発言に苦笑してカラカーニーは質問を行う。
「其方、カンナギには既に会ったのであろう。具合はどう見た?」
「・・・びっくりするぐらい普通でした」
左右非対称の耳をピクピクさせながらゲレトが答える。
「驚くほど普通で、・・・大変だけど一年目だから仕方がないとか、これで出世できるし出世すれば下をこき使える身分になるとか、医者に成った一年目は平均睡眠時間が四時間だったからそれよりはマシだとか、下が出来たと思ったら研修医制度ってなんだとか、一年目で九時五時とか医者舐めてんのかとか、良く理解できないことを言ってましたけど、・・・やっぱり、ちょっとおかしくなってるんじゃないかと、・・・」
ゲレトの言葉の半分はカラカーニーも理解できなかったが、取りあえず無視した。
キョウスケの言葉は、地球時代の愚痴であり、特に彼が医者に成った数年後に始まった『研修医制度』という新米医者の奴隷解放制度により、結果としてキョウスケの世代は上の奴隷時代を経験し、やっと解放されたと思ったら何もできない下の尻ぬぐい奴隷になっていたという、ナイトメアー世代なのであり、その愚痴などタイジにもカラカーニーにも理解できる筈がない。
「考えてみれば、キョウスケって性病騒ぎの時も平気で病棟に何日も泊まって、ほとんど一日中仕事してましたから、・・・仕事の仕方が変かもしれないんですけど、・・・」
「いや、危急の時には当たり前の対処ではないか?」
「まあ、普通であろう」
タイジの言葉をカラカーニーが否定し、横にいたバフラヴィーもそれに賛同する。
実は、軍隊、特にエリート軍人は医者以上にブラックだ。
カラカーニーもバフラヴィーも、師団長の試練と言われる一連の課題をクリアしている。
一日五〇キロの徒歩行軍連続十日間とか、三日間不眠不休で訓練とか、素っ裸で山中に十日間放置されるとか、それなりに大変である。
強行軍で指揮官が脱落したら話にならない。
戦争で修羅場になったら数日間寝ずに指揮を執る必要がある。
物資が不足することもしばしばだ。
そのような事態になっても大丈夫なように事前に鍛えておく。
クロイトノット・ナイキアスールが、そして、バフラヴィーがキョウスケに課した駅馬での長距離移動だが、一日二〇〇キロ程度ならば、クロスハウゼン師団の連隊長以上は全員が可能だ。
ナイキアスールは、バフラヴィーがキョウスケを連れてくるものと考えていたが、バフラヴィーはキョウスケならば一人で可能だろうと送り出している。
実を言えば、この移動自体がキョウスケの佐官資格試験の一つであった。
バフラヴィーはナイキアスールの命令をこれ幸いと利用したのである。
短時間長距離移動は、上位指揮官に求められる技能の一つだ。
特にキョウスケのような高位魔導士兼指揮官は必須と言って良い。
危ない場所に、強力な火力を持つ高位魔導士を送り込めばそれだけで戦況を改善できる。
キョウスケが長距離移動の後にそのまま文句も言わずに百日行に突入したのも良い。
これは長距離移動した直後に現場で過酷な戦闘を行う能力があると証明したことになる。
「カンナギがどこで教育されたのかは分からぬが、かなり質の良い訓練をうけているようだな」
カラカーニーが満足気な笑みを漏らす。
レトコウからカゲシンへの長距離移動が、指揮官には必須の技能と聞かされ、タイジが目をむく。
「驚いているようだが、ゲレト、其方も何れ同じような訓練を受けてもらうぞ。
其方も将来はモーランで魔導部隊の長になるのだからな」
タイジは驚いているが、軍隊では一見理不尽と思える命令など有り触れている。
それに耐えられなければ軍人、特に上位指揮官にはなれない。
現代日本の自衛隊でも猛訓練後の夜中に叩き起こされて山の上まで行軍とか普通に行われている。
緊急事態が何時来るか分からないためだ。
その辺りの理不尽訓練を説明されたタイジは呆然とする。
バフラヴィーの言葉にゲレトは緑色の球体と化し、呼ばれた従者に引きずられていった。
カラカーニーは、ゲレトの状況に落胆したが、まあ、これが普通かと気を取り直す。
カンナギが特殊なのである。
レトコウ紛争の査定が終わると、クロスハウゼン首脳は次の話に入った。
現在進行中の百日行の話である。
ネディーアール殿下の百日行達成は、既にほぼ既成事実として語られ始めていた。
宗主一族としては極めて珍しい百日行達成、それも『正緑』である。
波紋は大きい。
特に、クロスハウゼン一族への波紋、恩恵と余波は大きい。
「夏の天候魔法、雨ごい依頼だが、同時にネディーアールによる祝福の儀式を行ってほしいとの問い合わせが殺到している」
カラカーニーが、分厚い依頼書の束をバフラヴィーに投げてよこす。
この世界には天候魔法という物がある。
具体的には、気流を操り大規模な上昇気流を発生させる、つまり人工低気圧を作り出すことで、降雨を促す魔法である。
現代地球の降雨法と同様に、ある程度の雨雲が無ければ成立しないが、それでも有益な魔法である事は間違いない。
特に、用水路の老朽化が著しい昨今ではその要望が多い。
だが、現実にある程度の降雨を起こせる魔導士は限られている。
具体的には守護魔導士以上、それも投射系の魔導士だけだ。
帝国内でそのような魔導士を抱えているのは、諸侯ではウィントップ公爵家、クテンゲカイ侯爵家ぐらい。
カゲシン中央では、三個師団の中枢だけ。
現在はベーグム師団に有力な投射系魔導士がいないから、クロスハウゼンとナーディルだけとなる。
このため、夏場になるとクロスハウゼン家当主は雨ごいに駆り出されるのが通例となっていた。
各地を巡って、高度な魔法を使い、更に、『接待』を受ける、という過酷な旅である。
通常、接待される、女性を斡旋され性的奉仕を受けるというのは光栄なことだろう。
だが、数が数だ。
更に相手は、その行為で女が妊娠することを期待している。
高位魔導士の精を受け、能力の高い子供を期待するのだ。
一回二回なら、確かに『接待』だが、一日二回三回、連続十日以上ともなると『苦行』だろう。
過酷だが、これ目当てで、クロスハウゼンの寄子となっている地方中小諸侯は多い。
クロスハウゼン家としては大切な夏場巡業である。
カラカーニーは二年前から、これをバフラヴィーに任せていた。
一方、『祝福の儀』だが、『成人の儀』、『婚姻の儀』など、あるいは『六〇歳誕生日』など人生の節目で、高位僧侶に祝福を行ってもらう儀式である。
祝福の儀を行えるのは高位僧侶限定だが、百日行を終えたネディーアールはその資格を満たすことになる。
「想定以上ですな」
「今まで、雨ごい魔法は魅力だが、地縁血縁で、宗教系貴族の寄子を継続していた家が、雪崩を打っている。
クロスハウゼン家ではなく、ネディーアール内公女に祝福してもらったと言えるからな」
宗教貴族の寄子、特に没落貴族の寄子では、マリセア正教本流とは言い難い軍事貴族に寄り親を変更することに躊躇していた家が少なくない。
だが、今後はマリセアの内公女に帰依したと言えるのだ。
また、単純に美人の内公女に祝福して欲しいとの要望も多い。
バフラヴィーは改めて『百日行を達成した内公女』の威光を実感した。
「流石に全部は無理ですが、回れる限り回る必要がありますか。
可能であれば祖父上にも近場は回って頂ければ有難いのですが」
「こちらには、ネディーアール関連で宗教貴族からの会食の申し込みが殺到している」
百日行を達成した内公女の取り扱い、そして、同母弟シャールフの今後について、話を聞きたい貴族が多いらしい。
「そんなことで、手伝いはできぬ。勢力拡大のまたとない好機だから、可能な限り務めることだ」
バフラヴィーは頷きながらも、顔を顰めた。
確かに高齢の祖父に無理は言えない。
「ネディーアールに天候魔法を教えてやれ。あれは、それであれば嬉々として学ぶであろう」
ネディーアールは、軍事系、あるいは実用系の魔法が大好きだ。
「どちらかと言えば祝福の儀を覚えこませる方が問題ですな」
孫のボヤキに祖父が笑う。
周囲の者も笑った。
ネディーアールの儀式嫌いは有名である。
続いて議題となったのがカンナギ・キョウスケだ。
キョウスケの代坊官、諸侯で言う所の少佐への任官はほぼ決まりである。
レトコウ紛争での武勲、更に、レトコウからカゲシンへの長距離移動を期限内で達成したことから、クロスハウゼン内部の異論は出ないだろう。
マリセア正教では代坊官以上に宗教査問があるが、百日行達成であれば査問そのものが免除だ。
議論は次の段階、彼の結婚問題である。
レトコウでは、クテンゲカイ侯爵のゴリ押しで危うくカンナギを取り込まれるところだった。
キョウスケが目先の女体に惑わされて、手を出してしまったのが原因だが。
カンナギを取り込むには、カンナギが納得する報酬を与える必要がある。
勿論、レトコウ紛争での報奨金は渡している。
カンナギの報奨金は、第一位である。
昇進もさせる。
だが、本人にも周囲にも、分かりやすい褒美は一族の娘を与える事だろう。
クテンゲカイ侯爵家の介入を防ぐためにも、クロスハウゼン本家の娘を与える必要がある。
候補は二人、アシックネールとトゥルーミシュである。
アシックネールは、クロイトノット家の娘だが母親はカラカーニーの同母妹であるナイキアスール。
カラカーニーの養女として嫁がせるのに問題はない。
本人も以前より乗り気である。
トゥルーミシュは厳密にはカラカーニーの孫だが、公的には実娘である。
実は、つい先日まではトゥルーミシュが第一候補だった。
キョウスケをトゥルーミシュの婿にしてクロスハウゼン家の有力分家、ガイラン家を継がせるという案である。
だが、ここ数日で状況が変わっていた。
バフラヴィーの第二正夫人であるファラディーバーが男児を出産したのである。
ファラディーバーはガイラン家の娘、ライデクラートの同母妹である。
これにより、トゥルーミシュはガイラン家の女跡取りではなくなった。
だが、トゥルーミシュはそれでもカンナギの嫁になりたいとの意見を変えない。
どうやらレトコウ紛争で共に戦ったのが琴線に触れたらしい。
本人は、キョウスケは自分に惚れていると自信たっぷりだ。
そして、カンナギの嫁問題は紛糾した。
カナンは、表向き男性社会だが、女性の権力は馬鹿にできない。
人口の七割以上が女性なのだ。
故に当主のカラカーニーとはいえども、女性陣の意向は無下にはできない。
特に、このような将来一族の中枢に入ってくる者の嫁取り問題ではそうである。
トゥルーミシュを推すのは実母のライデクラートと、カラカーニーの第一及び第二正夫人。
カンナギは少々変態の気があるので厳格なトゥルーミシュに叩きなおして、・・・もとい、制御してもらうのが良いとの意見である。
更に、カラカーニー第一正夫人があけすけに語ったのが、ライデクラートの将来の落ち着き先だ。
ライデクラートは優秀な軍人である。
だが、カラカーニーとは親子ほど年の差がある。
カラカーニーの死後、まだ若いライデクラートが性欲を持て余し、下手な男とくっつくのは拙い。
クロスハウゼンが優秀な軍人を失うだけでなく、醜聞となってしまう可能性もある。
「カンナギはライデクラートの受けもよいですから、将来はトゥルーミシュと一緒にライデクラートの面倒もカンナギに見させましょう」
キョウスケが聞いたら、それこそ瞬時に逐電しそうな話だが、世間一般では、ライデクラートとトゥルーミシュ母娘は美人母娘として有名である。
カラカーニー第一正夫人には悪気の欠片もない。
むしろ、カンナギにご褒美ぐらいの気持ちだ。
一方、アシックネールを推す筆頭はバフラヴィーの第一正夫人であるスタンバトアである。
実母のナイキアスールも、意外とキョウスケを買っていて、娘を推している。
「ジャニベグさんが簡単に諦めるとは思えません。
彼女を追い返す、あるいは制御できるとしたらアシックネールしかいないと思います」
スタンバトアの言葉もまた説得力があった。
アシックネールは、一族内では『ギリギリの女』として知られている。
彼女は、色々と物議を醸す行動で知られるのだが、貴族としての許容範囲内にギリギリ収めるという、何とも微妙な、ある意味卓越した技量の持ち主なのだ。
例えば彼女の初体験の相手はバフラヴィーである。
男性は成人の儀があるのに、女性に無いのはおかしいとか言い出して、事に及んだ。
同母姉でバフラヴィーの第三正夫人でもあるヌーファリーンに頼み込んでバフラヴィーの寝室に『見学』に入り込み、隙を見てバフラヴィーに跨ってしまったのである。
「やっぱ、最初の基準として一流を味わっておかないと」
事の後で開き直るアシックネールに、バフラヴィーは、そして、その第一正夫人であるスタンバトアは苦笑するしかなかった。
その後も彼女は、色々と男のつまみ喰いを行ったが、何れも問題が起きにくい相手を選んでいる。
その辺りが、クテンゲカイ家の令嬢とは決定的に異なる。
貴族として許容される範囲を見極めて行動しているのだ。
更に、彼女は物事の仕切りが非常にうまい。
母親のナイキアスールもその辺りがうまい女性で、それ故にネディーアール=シャールフ姉弟の筆頭側仕えとなっている。
アシックネールは、母親以上の才能と言われていた。
規則を掻い潜る能力もまた優れていて、それ故に、ネディーアールの側近一号兼親友でもあったのだが。
色々とあったが、論議は決着がつかなかった。
二人の主ネディーアールにも、修行の合間に意見を求めたが、彼女も決めかねた。
「正直、どちらでも悪くない。
つまり、どちらでも構わないが、優劣をつけるのも躊躇われる」
バフラヴィーは、どちらかと言えばアシックネール推しだった。
「スタンバトアが言う通り、ジャニベグ対策ならばアシックネールでしょう。
あと、トゥルーミシュは、シャールフの第二正夫人が良いと思いますが」
そう言えば、その話もあったかと、カラカーニーは思い至る。
シャールフはネディーアールの同母の弟で現在、十二歳。
もう直ぐ十三歳になる。
第一正夫人は宗家の関係で決まるが、第二正夫人は後ろ盾であるクロスハウゼン家が用意する必要があるだろう。
しかし、・・・シャールフの第二正夫人はアシックネールでも良い、と彼は思う。
それにしても、シャールフと天秤にかけられるとはカンナギの評価も上がった物である。
結局、悩んだ末、カラカーニーは匙を投げた。
決断力があるカラカーニーとしては珍しい結果である。
だが、彼にも言い分はある。
女性同士の微妙な綾は男性には分りづらいのだ。
こうして、キョウスケの第一正夫人選定は本人に委ねられることとなった。
決まったのは、百日行終了前に、キョウスケ本人に選定させること。
そして、百日行達成祝賀会で大々的に発表することだ。
カンナギに興味を示しているのはクテンゲカイ家だけではない。
それを封じるには、迅速な行動が必要だろう。
カンナギがクロスハウゼン家の正式な婿になったとカゲシン世間に告知するのだ。
後は、また、カンナギが目先のジャニベグに惑わされなければ大丈夫だろう。
カンナギは、女の趣味が偏っているが、好みの女性の色仕掛けには極端に弱いらしい。
そして、頭の痛いことに、ジャニベグは美人で、どうやら、カンナギの好みなのだ。
スタンバトアは言う。
「思い返せば、クテンゲカイ侯爵との会食の時からおかしかったのよね。
キョウスケ、隣のトゥルーミシュちゃんを無視してジャニベグさんの胸元だけ見てたのよ」
キョウスケの婚約者のハトンによると、彼は明らかに胸の大きな女性が好みだという。
普段から、胸の大きな女性の話をしており、ハトンにも胸が大きくなるようにと毎日、愛撫しているとの事。
十二歳の少女の胸を毎日、舐めたり揉んだりしているそうだ。
女の好みが偏り過ぎている。
そして、確かにジャニベグは胸が大きい。
デュケルアール程ではないが。
ジャニベグが迫ってきたら、他分、カンナギはまた手を出してしまうとハトンは言っていた。
多分、正解だろう。
本人は、後で色々と弁解するだろうが。
幸い、百日行の間はジャニベグも手を出すことはできない。
そして、百日行終了から、百日行達成祝賀会までは数日。
その間に、カンナギがジャニベグに手を出す時間は無い筈だ。
その後は、・・・カンナギがジャニベグと事に及ぼうと、あるいは結婚を申し込まれようと、カンナギの第一正夫人の座をクロスハウゼンが握っていれば問題ない、筈である。
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