04-10S ベーグム・レザーワーリ 初陣(一)

 帝国歴一〇七九年三月、私の初陣が決まった。

 場所はゴルダナ西部、レトコウ伯爵領の地龍回廊と呼ばれる場所である。

 この日より私の日常は極めて慌ただしいものとなった。


 父の言によれば、私はもっと興奮すべきらしい。

 武家の息子として生まれたのだから、初陣が待ち遠しくてならないというのが正しい反応だと。

 実際、父はそうだったし、兄もそうだったのだという。

 だが、持って生まれた性分なのか私はどうしてもそのような気分になれなかった。

 手柄を立てるよりも失敗が恐ろしく、敵を撃ち倒すことよりも、捕虜にされないか、殺されはしないか、傷を負わないか、期待よりも心配ばかりが募った。

 だから、当たり障りのない地味な任務、補給部隊かなんかに配属されたらいいのにと思っていた。

 初陣の若造の意見など通る訳が無いから、任務から鎧から武器から全て父や兄に決められたのであり、それなりに目立つ装備と格好で第一魔導大隊の所属という形になってしまったが。

 如何ともし難い話である。

 幸いなことに、私は元から人目を引く容姿ではないから、黙っていればそうは目立たない。

 可能な限りひっそりとしていようと心に決めた。




 私は父の庶子として生まれた。

 男子であった事、魔力量がそれなりだったことから、父の第一正夫人であるチュルパマリク様の養子となり、正式にベーグム家の一員となった。

 私の生母は父の側夫人ですらない使用人の一人であったが、私が物心ついた時には既にベーグム家を辞し、とある少僧都家の正夫人に入っていた。

 私はろくに面識が無いので良く分からない。

 問題は私の体格が貧弱だったことだ。

 ベーグム家と言えば身体魔法で有名な家だ。

 身体魔法は牙族が良く使うことで知られるが、体にマナを循環させ常人の何倍もの身体能力を発揮する魔法である。

 魔力量が多ければ多い程、増強量が大きくなるから強さが増す。

 従って魔力量が多いことが絶対的に必要だが、魔力量が同じならば筋肉量が物を言うのも当然だ。

 そういうことで、身体魔法を使う者は基本となる体力増強にも努めることになる。

 ベーグム家には体を大きくし筋肉を強くする鍛錬方法、食事方法が秘伝として伝わっており、一族の者は幼少期から鍛錬に励むことになる。

 ベーグム流の育成方法であれば、子猫も虎にできるというのが一族内での常識だった。


 だが、私はダメだった。

 そもそも、幼少時から骨格が細かった。

 それでも父は肉を食わせて運動させれば体が出来ると考えていたようだが、私は胃腸も弱かった。

 無理に食べれば吐くか下痢。

 食事量が少ないから体格は貧弱なまま。

 成人式を迎えるころには根性論の塊だった父も諦めた。

 そんなことで、私は投射系の魔導士を目指すことになった。

 ベーグム師団にも魔導大隊はあるから投射系の魔導士も必要度は少なくない。

 十三歳を少し超えたころ、父は私を師団の魔導大隊長に預けた。

 幸い私は、少なくとも魔力量だけは父に認められる程度は有ったので、正魔導士の資格は直ぐに取れたし、何年かすれば上級魔導士は堅いだろうと魔導大隊長は保証してくれた。

 だが、良くも悪くもそれだけであった。

 将来は優秀な魔導大隊長、軍人としてならば決して悪い話ではない。

 一般的な軍事貴族であれば鼻が高いだろう。

 だが、軍系の少僧正家の息子としてはそう褒められたものでもない。

 カゲシンでの魔導士の階級は、上から順に、国家守護魔導士、守護魔導士、上級魔導士、正魔導士、従魔導士、風魔法使い、となる。

 クロスハウゼン家のバフラヴィー殿は十五歳の時に守護魔導士として認定され、現在は国家守護魔導士だ。


「将来は魔導大隊長としてニフナレザーを助けるように」


 父は私にそう命じた。

 落ちこぼれではないが自慢の息子でもない、私に対する父の評価はそんなところらしい。

 第二歩兵連隊長から聞いたのだが、実を言えば私はうれしかった。

 自分に自信が無かったから、落ちこぼれで無いというだけで十分だったし、自慢の息子でないのであれば隅でひっそりとしていられるからだ。




 師団の出陣は急遽決まった。

 ただ、出征の場所は元々ベーグム師団の担当範囲で有ったから、何とか少しでも兵を出せるように色々と根回ししていた。

 師団としては出陣を取り戻し、利権を取り戻した形だから、急遽ではあったが準備は万全だったようだ。

 私を除いて、だが。

 私は、自分の出陣など無い方が良いと考えていたから、周囲の喧騒を無視して、文字通り何の準備もしていなかったのだ。

 であるからして、個人的にはかなり大変なことになった。

 準備は欠片もしていなかったし、そもそも、どう準備すればいいのかすら分からない。

 父からは兄を見習いその指示に従うようにと言われたが、困ったことにその兄が色々と大変だった。


 出陣が決まる直前の三月十日、カゲシン武芸大会の決勝において、我が兄、ベーグム家嫡男ニフナレザーは惨敗した。

 私から見れば決勝に進出しただけでも充分だと思うのだが、兄は、そして父も優勝が悲願だった。

 負け方が悪かったのは否定できない。

 決勝の相手は月の民の娘だったが、十六歳と兄より三歳も年下で、体重は半分以下だった。

 そんな彼女に兄は剣の打ち合い、力で敗れたのである。

 一分も持たなかったのだ。

 ベーグム家伝来の剣を叩き折られ、兜をへこまされての敗北だった。

 兄は荒れた。

 父も周囲の者も、敵対的な関係にある貴族も正面だって兄を誹謗したわけではない。

 むしろ、『災難だった』という慰めの方が多かったのだが、それが逆に兄のプライドを傷つけたらしい。

 私など慰めの言葉すらかけられない状況だった。




 武芸大会について深刻なのは、これが兄の結婚問題と繋がっていたことだろう。

 実は、兄、ニフナレザーにはまだ子が無い。

 嫡子を得ているかどうかは別として、名門貴族の十九歳の嫡男に子供が一人もいないのはかなり異常だろう。

 勿論、結婚はしている。

 兄の第一正夫人はカゲシンの内公女、ゴルデッジ侯爵系、それも第四正夫人本人の娘である。

 政治的にはこれ以上ない、というか他に有り得ない女性だ。

 問題は、彼女の魔力量が少ないことだろう。

 実を言えば今代のゴルデッジ侯爵も魔力に乏しく、その娘たちも魔力量は低い。

 結果としてゴルデッジ系の内公女は魔力に乏しい傾向にある。

 普通の貴族ならば魔力量は大きな問題ではないが、武家であるベーグム家では由々しき問題だ。

 個人的には師団長は指揮管理能力が有れば問題ないと思う。

 だが、現実問題として兵士は指揮官に強さを求める。

 魔力量が少ないというのと、弱いというのは、これまたイコールではないとも思うのだが、兵士たちはそうは考えてくれない。

 対外的な見栄えという物もある。

 そんなことで、父はカゲシン宗家と交渉し、『ベーグム家の跡取りは第二正夫人の子供でも構わない』、という言質を取った。

 これは兄の第二正夫人に魔力量の多い娘を迎え、その者にベーグム家の次代を産んでもらうという話である。

 諍いを避けるため、第二正夫人に跡取り息子ができるまでは第一正夫人との間でも子供を作らないという取り決めもなされた。

 次代のベーグム家トップには是非とも『守護魔導士』以上が欲しい。

 従って、兄の第二正夫人には守護魔導士、少なくとも上級魔導士で上位の者が欲しい。

 魔力量に乏しい両親から優秀な魔導士が生まれることも極稀には有るが、優秀な魔導士は優秀な魔導士の両親から生まれるのが大半である。

 第一正夫人にとっては屈辱だと思うのだが、ベーグム家にとっては致し方ない話なのだ。


 問題は、そこまで取り決めたにも拘らず、兄の第二正夫人が決まらなかったことだ。

 そもそも魔力量の多い女性、それも、上級魔導士以上という時点で困難である。

 絶対的に数が少ないのだ。

 一族内にはいない。

 ベーグム家の現在の苦境は一族に高位の魔導士が少なくなっているのが一因だ。

 一族内に魔導士が少ないから、増強する必要が有るわけだが、そうなると外部から招くしかない。

 しかも、ベーグム家嫡男の『実質的第一正夫人』であるから、それなりの家の娘であることが望ましい。

 だが、高い魔力量の女性を、それも複数、外に出せるぐらい抱えている貴族家となると帝国内でも限られる。

 カゲシン貴族では、クロスハウゼン家かナーディル家、諸侯ではウィントップ公爵家かクテンゲカイ侯爵家ぐらいだろう。

 どれも政治的に疎遠な家だ。

 カゲシン宗家を通してベーグム家存続のためにと頼めば何とかなるとは思うが、そうなると政治的にかなりの譲歩が要求されるだろう。

 折角懇意にしているゴルデッジ侯爵家やバャハーンギール殿下とも関係が悪くなりかねない。

 それは避けたかったので、兄は自分の個人的な魅力で何とかしようと考えた。


 客観的に言って兄は女性に人気だ。

 逞しい体躯を持った名門貴族の嫡男なのだから当然とも言える。

 実際、武芸大会では終始黄色い歓声に包まれていたぐらいだ。

 兄が最初に目を付けたのはクテンゲカイ侯爵家の令嬢ジャニベグ殿だった。

 年齢は兄より一歳下と年回りも良い。

 結構な美人で、魔力量は兄よりも多いぐらいだ。

 優秀な努力家の魔導士だが、素行に問題が有り、父親のクテンゲカイ侯爵は嫁ぎ先に苦慮していた。

 そんな女性だから、自分が引き受けると言えば本人も父親も喜び、政治的譲歩も少なくて済むだろうと目論んだ。

 だが、あっさりと断られた。

 丁度、一年ほど前の話である。


「弱い男性には興味がない」


 ジャニベグ嬢はそう言って兄の誘いを断った。

 実は昨年も兄は武芸大会に出場していて、そして決勝で敗退していた。

 センフルールの黒髪の姫に魔法で打ちのめされたのだ。

 ジャニベグ嬢は武芸大会で優勝したクロスハウゼン家のバフラヴィー殿を理想としていて、準優勝の兄を下に見たのだ。

 兄は、断られた事、バフラヴィー殿と比較された事に酷く憤っていたが、横で見ていた者としては彼女が言ったもう一つの理由の方が大きかったように思えた。


「あなたは、お母様にしか興味が無いのでしょう。

 お母様と添い遂げれば良いのでは?」


 世間一般には知られていないが、兄が実母であるチュルパマリク様を妄信し、チュルパマリク様も兄を溺愛していることは一部貴族の間では有名になっていた。

 兄はその後、クロスハウゼン一族ガイラン家のトゥルーミシュ嬢にも声をかけて断られたのだが、その時にもチュルパマリク様の件を指摘されていたから間違いないだろう。

 私は兄にチュルパマリク様と距離を取ることを進言したが、兄は一顧もくれなかった。

 兄にとっては子供が母親を尊崇するのは太陽が東から昇るのと同じような自然の摂理とのことで、それを否定するなど有り得ない話らしい。

 であるから、女性たちが兄と母親の関係に異を唱えても兄は全く、完璧に気にも留めなかった。

 兄は、断られたのはベーグム家の格を否定され、自分の『強さ』を否定されたためと考えていた。


 ちなみに、兄が声をかけた時点でトゥルーミシュ嬢は、体格は並の成人を凌駕していたが、未成年だった。

 保護者相手ならばともかく、未成年本人に結婚を申し込むこと自体が常識外れだったので断られて当然ではある。

 それでも兄が声をかけたのはトゥルーミシュ嬢があまりにも好みだったから、らしい。

 私は兄の理想の女性はチュルパマリク様だと考えていたのだが、兄にとってのチュルパマリク様は『母』であって、女性ではないという。

 兄が『女性』として理想としていたのは、トゥルーミシュ嬢の母親であるライデクラート殿で、筋肉系の美人として有名な方である。


「漏れ聞くところに拠ると、ライデクラート殿は美しいだけでなく、寝屋でのテクニックも卓越しているらしい」


 兄は以前、そう私に語った。


「なんでも後ろから男性の物を刺激するという。

 高齢のカラカーニー殿が若さを取り戻したと絶賛されていると聞く。

 ぜひ一度、経験してみたいものだ」


 内容は良く分からなかったのだが、兄は憧れの美人の娘に期待していたのであり、そんな彼女に酷く振られたのは心に深い傷を刻んだのだろう。




 兄は、その後も多方面で相手を探していたのだが、なかなか意中の相手は見つからなかった。

 そんな時に、ジャニベグ嬢が次の武芸大会に出場予定との話が入ったのである。

 武芸大会で彼女を打ち破って優勝すれば、結婚問題も解決すると兄が考えたのも道理である。

 その結果は先に述べたとおりだ。

 兄は更に鬱屈してしまったのであるが、それにも増して兄を当惑させたのがチュルパマリク様の変化だろう。

 以前のチュルパマリク様は大層信心深い方で、マリセア正教ニクスズ派を代表する信徒とまで評価されていた方であった。

 ところが、武芸大会の少し前から、どうにも様子が変わってしまっていた。

 きっかけは、あの手術である。

 チュルパマリク様には以前から顎の下に大きなこぶがあり、これがどうにもし難い状況であった。

 それまでも多くの医師たちが「こぶ」を取り除こうと努力し、その結果としてこぶの大半は取り除けたのだが、完全には取り除けず、しかも取り除いた後は醜い傷跡として残ってしまっていた。

 ところが最近、カゲシン施薬院に傷跡の処理がうまいという医師が現れた。

 そこで早速、施術を受けたのだが、結果は驚嘆すべきもので、チュルパマリク様の顎は見事に滑らかな肌を取り戻したのであった。

 ここまでならば良い話なのだが、美しい肌を取り戻したチュルパマリク様は顔貌だけでなく、その行動までもが変わってしまったのである。

 やたらと若い男性を自分の寝所に誘うようになってしまわれたのだ。


 実を言えば、わが父アリレザーとその第一正夫人であるチュルパマリク様の間は冷え切っていた。

 父は、女性の美に付いては独特の審美眼を持っている人で、「女性の美のピークは十五歳」と断言している。

 であるから、第一正夫人であるチュルパマリク様以外の夫人や高級使用人は全て若い。

 二〇歳を迎える前に暇を出されてしまうためだ。

 父もニクスズ派であるから風紀には厳しく、正式に夫人としていない女性や、使用人として雇っていない女性には手を出さないのではあるが、定期的に夫人や高級使用人を入れ替えるというのは、あまり外聞が良い物ではないだろう。

 暇を出した女性には再婚先や再就職先を斡旋しているから、今のところ大きな問題にはなっていないが。

 チュルパマリク様はカゲシンの内公女で第一正夫人であるから離縁されることは無いのだが、父には全く女性として見られていなかった。

 チュルパマリク様が鬱憤をため込んでいたのは間違いない。

 若い男性を引き入れるというのは明らかに父に対する当てつけだろう。


 高位の女性が若い男性を寝所に引き入れるというのは、成人の儀などで性的な手解きがある程度社会的に許容されているとは言え、数には限度がある。

 ところが驚いたことに父はこれを許可した。


「騒ぎにならない程度にしておくのだな」


 父がチュルパマリク様に言ったのはコレだけだ。

 事実上の黙認だった。

 唖然としたが、よくよく考えれば父にとってはどうでも良い問題なのであって、下手に口をだして揉めるよりも互いに黙認する方が得策と考えたのだろう。

 だが、兄はそうは行かなかった。

 チュルパマリク様の行動が派手になるにつれて、兄は見るからに憔悴していった。

 兄は手術時の全身麻酔に不手際があったのだと決めつけたが、客観的に見て、いや、どう贔屓目に見てもこの説は説得力が無かった。

 チュルパマリク様の行動は、若い男を頻繁に誘うという以外は以前のままであって、兄に対する過分すぎる愛情も、そして私に対する無関心も、そのままであったのだから。




 話が少々それてしまったが、私の初陣に出発する直前のベーグム家内部が、かなり、というか極めて混乱していて、私はほぼ何も分かっていなかったにもかかわらず、ほぼ自力で出陣準備をする羽目に陥り、更には実母に取り縋るばかりで仕事の大半を放棄した兄の代理として師団司令部の出陣準備を差配させられる立場に、正確に言えば部下が作成した文書に兄の代理としてサインする事を、つまり何も分かっていないのに責任を押し付けられるという惨めな傀儡の立場に気が付けば陥ってしまっていたという事実は、全く以て致し方なかったのだと分かってもらいたいだけなのである。

 ちなみに、師団の重要事項は父が差配していたから、師団の根本的な活動には何の問題も無かった事は書き添えておきたい。

 ただ、このような状況であるから、師団司令部のテントの種類と数がいつもと違うとか、接待用の酒が足りないとか、あるいは、何時の間にか付いてくることになったチュルパマリク様用の専用テントが彼女指定の高級品でなかったとか、化粧品の手配が間違っているとか、寝所のベッドが特製ではないとか、寝所に配置される愛玩魔獣ディプラーが足りないとか、そのような問題の隠蔽と糊塗と解決といった諸々の雑事を、気付けば私がすることになっていたのである。

 最初の話では私は第一魔導大隊で魔導大隊長の横についているはずだった。

 だが、行軍の初っ端から師団司令部に常駐して、兄の補佐というか代理をさせられ、師団が現地に到着する頃にはすっかり師団司令部の一員として、席まで用意されてしまっていた。

 それも、師団長の息子ということで、父と兄のすぐ後ろという、成人したての十五歳の坊尉には気が遠くなるような場所である。


 更に、現地に到着して、直ぐに昇進までさせられてしまった。

 副師団長、つまり兄の代理が坊尉ではまずいから上級坊尉にするという。

 諸侯の軍ならば中尉から大尉に昇進ということだ。

 はっきり言うが、私は兄の代理をできるような力量も能力も経験も意欲もないのであるから、この昇進は私にとって有難くもなんともない話であった。

 ただ、正直に言えば昇進により給金が増えたのはうれしかった。

 実を言えば、私は結婚していない。

 成人した十五歳の上級貴族の男性で妻が一人もいないというのは、極めて稀だろう。

 私には使用人しかいないのだ!

 それも、兄に嫡子が得られるまでは子を成してはならない、妊娠させてはいけないと父から強く言われているので、最後は後ろの穴で出すことで満足せねばならない!

 友人たちは好きに中に出して、庶子が複数いる者もいるのに!

 実はこれ、兄の第二正夫人が決まらないことの余波である。

 一族内で比較的魔力の多い女性が私の第一正夫人候補なのだが、彼女は兄の婚姻がうまく行かなかった場合の予備でもある。

 つまり、兄の結婚が決まらなければ私は何時までたっても結婚できないのだ。

 自力で外部から調達出来るのならば連れてこい、とは言われている物の、現実にはなかなか難しい。

 だが、昇進して給金が増えれば女奴隷を買う事が出来るだろう。


 容姿の良い奴隷は高価で、上級坊尉の給金程度ではどうにもならないという現実を私が知ったのは、後日の話になる。

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