02-23S シャハーン・アウラングゼーブ 施薬院合格
「今回は致し方ない。」
驚いたことにアフザル・フマーユーンも十月の施薬院試験に不合格であった。
事前に集められ合格確実と予定されていた我々の中で実際に合格したのはモローク・タージョッ嬢だけであり、それも四人中の四番目であったという。
「予定外の者が受験したのだ」
呆然としているアフザルに話を聞けば、九月末に施薬院入講試験資格を得たばかりの者が十月の試験に願書を出したのだという。
施薬院医師資格を得るための学問所の試験は月末に実施され、その結果の発表は翌月一日となる。
故に九月末に資格を得た者が十月の資格試験を受けることは、書類上は可能なれども現実にはほぼ不可能な話となる。
何となれば事前準備だけで時間を要する施薬院試験にわずか数日の準備で挑むことになり合格など望めるはずはないからだ。
それでも合格するとなれば施薬院入講資格試験の前から施薬院の試験に備えていたという話になるのであるが、これもまた有り得ない話であろう。
そうであれば、それはつまり施薬院入講資格の試験は余裕で受かるほどの学力があったという事であるから、私が既に行ったように故郷の学問所の履修証を提出すれば事足りるからである。
ところが、今回は正にそのような有り得ない受験生がそれも同時に三名出現したことにより施薬院試験は大混乱に陥っていたのだという。
聞くところによれば三名の内二名は牙族の留学生とのことで、これは何とも前代未聞の話であった。
何となれば牙族は体格頑健にして勇猛なれど理論的推論を行う知能と広範な知識を蓄積する記憶力に著しく欠ける者達であり、第一帝政時代の神話を除けば彼らの中から医者が現れ出でたことは無いからである。
牙族は主として呪術的な祈祷と伝統的迷信に基づく奇妙で得体のしれない邪法で自らを治療しており、人族の医学をそも根本的に忌避し、医師の診察を受ける事すら拒むものが大半なのである。
そんなだからカゲシンの施薬院が開設されてから牙族の者が施薬院試験に合格したという記録はなく、試験を受けた者ですら稀であったのだ。
それが十数年振りの受験者が現れたというだけでも事件であるのに、それが二人であり、しかもそのまま二人共に合格したというのであるから驚天動地としか言い様がない事態である。
有力な商会が後援しているとの話であったから施薬院に金銭的に多額の支援を行ったのであろうことは想像に難くない。
聞けば二人は夫婦であるとのことで牙族界隈では、牙族の間では医師と言う存在がそも忌避されているにも拘らず、ちょっとした騒ぎになっているという。
残りの一人もまた不可思議な人物で没落貴族の子弟とされるが試験の時点での身分は平民という齢十五歳の少年である。
平民が施薬院試験を受けるというのは前例が無いわけでは無いと言うが、その多くは裕福な商家の息子など限りなく貴族に近い身分の者であったと聞く。
それが今回の少年に関しては天涯孤独の身であり何がどうして施薬院試験にまでたどり着いたのか不思議としか言いようがない話なのである。
カゲシンのとある有力貴族が後援に当たっているとされ、実際そうでもなければ、そも願書を出す事すらできなかったであろうことは理解に難くない。
このような人物が施薬院試験を受けたとして合格など有り得ぬと思われるのだが、あにはからんや、今回の首席合格者が彼であったという。
それも書面上は誤答が皆無であり、つまり満点であったという話であったから、瑕疵の付けようが無いのだという。
彼がどこでどのように学を成したのか不可思議としか言いようのない話であるのだが、アフザルによればその知識については疑うべきところは無いという。
「実技試験の二次試験で一緒になったのだが、確かに稀有な才能であることは間違いない」
打ちのめされたような趣でアフザルが話し出した。
「二次試験の前に試験官の一人が彼に話しかけたのだ。
実は私の一族の者なのだが、あまりにも試験の成績が良いので何らかの不正を行ったのではないかと疑っていたという。
雑談の形でさり気無く彼の知識を確認したのだが、逆に学識で圧倒されたのだそうだ。
既に施薬院の金色並みの知識が有るのではないかと驚愕していた」
アフザルの親類が聞き込んだ所によると、既に高度な手術も執刀しており、その手術を見た貴人から医師資格試験に推薦されたのだということであった。
「どうやら最初から注目されていたらしい。
今回の実技二次試験にはシャイフ主席医療魔導士殿が臨席していたのだ。
こんなことは聞いたことが無い。
試験内容も従来とは全く別物だった。
誰もろくに結果を出せない中、彼は事も無げに試験を終わらせていた。
あれは自護院の正魔導士、あるいはそれ以上の魔力だろう。
あれで十五歳というのだからね。
何とも、とんでもない存在が現れたとしか言い様が無い」
「それは不可思議な話だが、試験の成績が多少良い平民や、多額の寄付を行っただけの牙族を合格させ、我ら由緒ある貴族を不合格にするとは、現在の施薬院は色々と問題が大きいのではないか?」
「・・・いや、合格は普通に成績だと思うが。
貴族でも能力のない者に施薬院資格を与えたらだめだろう。
患者が死ぬよ。
その患者が宗家の方々とかだったらどうする?」
私の常識にのっとった疑問に、アフザルは怪訝な顔で答えた。
アフザルは由緒ある医療貴族出身とのことであったが、どうも、彼を含めたカゲシン施薬院が間違った方向に進んでいる気配が感じられる。
残念なことであろう。
あまりにもアフザルが平民を賞賛するものであるから、私は学問所に彼を探しに行った。
学問所食堂で彼を認めたのであるが牙族の者と行を共にしているようであった。
恐らくは今回同時に合格したという牙族であろう。
彼はテルミナス系というよりはどちらかと言えばゲインフルール系の肌をしており、茶色の髪と不気味な黒い瞳を有していた。
背は私よりも高く肌は高位貴族女性のように滑らかで、確かに単なる平民の出とは思えない外見である。
平民で、私より背が高い者などまず存在しない。
鼻筋が通った社交向けの容貌をしていたが、その言動は粗野で洗練されているとは言い難く、特に横にいたタージョッ嬢に対する態度は庶出とはいえ高級貴族を出自に持つ者に対するそれとしては下劣とすら言って良い酷さであった。
だが何より驚嘆すべきはこの者が従者をただの一人も連れていなかったことであろう!
成人した一人の男性が女を連れずに栄えあるカゲシン学問所の構内を闊歩していたのである!
確かに、学問所の規定に従者なしの男に対する罰則はない。
だが、そんな当たり前の世の理を乱す者が出るなど誰も想定しなかっただけであろう。
そも、女なしで、夜の生活は、夜の社交は如何するのか?
後日、聞いたところでは、何とこの者は、女と交わるよりも男の欲望を己一人で処理するのが好きだと、人前で公言する痴れ者であった!
こんな破廉恥極まりない者の入講を許可するなど、施薬院も世も末であろう。
ところが、更に驚いたことに、そんなで有るにも拘らず、タージョッ嬢が彼に多大の関心を寄せている態度を示していたことである。
多少は才能があるとしても、破廉恥で、常識が無く、貴族として医師として最も重視されるべき社交に疎い男が、医師として大成することは有り得ない話である。
タージョッ嬢が何故に斯様な男に惑わされたのかは不明だが、勉学のみで社交経験が充分でない所以であろう。
私は必ずやタージョッ嬢をこの歪な男から救い出さねばならぬと、彼女に夜の社交を教授するのは自分であると、マリセアの精霊に誓ったのであった。
そのようなことで私は十月も社交と勉学に勤しみ、十一月の試験結果を待つこととなったのであるが、あにはからんや又も不合格なる通知が届いたのであった。
「シャハーン、悪いが君は試験成績が悪いのだ。
以前と同じ問題の部分でも八割程度の正答率しかないし、新規問題はゼロだ。
これではテルミナスからの推薦があったとしても如何ともしがたい」
私の抗議に対して謝罪に訪れたのは今回の試験で合格したアフザルであった。
尤もその態度は謝罪としては不適切と言える内容ではある。
問題の選択肢を入れ替えるような姑息な改変はすべきではないと以前にも強く申し入れているにも拘らず一向に改善が認められない事や、そもそもシラミを拾うような教科書の隅から設問を作る姿勢に問題が有る事、何より今回は急遽合格人数が減らされたのが問題であると強く言いつのったのであるが、彼は私の正当なる反論を一顧だにしなかったのである。
「はっきり言うが、君は勉強が足りない。
問題に不平を言うのは勝手だが、そのような問題なのだからそれに応じた勉強をするしかないであろう。
合格人数が急遽減らされた話は聞いている。
確かに急な話であり私もその理由は聞かされていない。
だが、毎月の合格者数は公式には発表されてはいない。
内々のものであるから変更されたとしても文句を言える筋合いではないのだ。
忠告するが施薬院の学問を否定せず、まずは勉学に勤しみたまえ。
いい加減パーティーに出るのは控えるべきだろう。
聞くところによれば毎晩のように朝まで社交と称して女と遊んでいるそうではないか。
しかも、その夜の社交とやらの評判も芳しい物ではない」
私は、勿論、社交だけでなく勉学にも力を入れている事、二日に一度は一時間近く教科書に没頭しているのであり、これ以上の勉学は限界である旨を事細かに伝えたのであるが、彼はただ一言『少ない』と切って捨てたのである。
これ以上、どう勉学すればよいというのであろうか?
更に、私は貴族にとって医師にとっての社交の重要性、特に夜の社交技術の鍛錬は一日たりとも休むことはできないし、休むべきでもない事を改めてアフザルに教え諭したのであるが、彼は頑迷で少なくともこの時期には社交よりも勉強だろうと根本的に間違った意見に固執するだけであった。
このようにアフザル・フマーユーンには否定されたものの、私の社交は着実に成果を上げていた。
多くの貴族と懇意になることが出来たし、その中には当然のことながら施薬院関係者も含まれていた。
医師として大成するにはより多くの医療呪文を覚える必要が有るが、中でも有用な呪文は一族の秘伝として伝授される。
施薬院の教科書に載るような医師ならば誰でも知っているような呪文は、医学の基礎を知らない素人であれば意味はあるのであろうが、私のような由緒ある伝統を受け継いだ師匠に師事した者には無意味なのだ。
知るべき、教わるべき呪文は個人的に親しくなり、信頼できる人間であることを認めさせたうえで、何らかの見返りを提示することによって初めて伝授してもらう事が出来る。
個々にいくら才能が有ろうとも伝統ある医療貴族が何代にもわたり蓄積してきた知識には到底及ばないのであり、この理を知らなければ医師として大成など出来ようはずがないのである。
九月十月の二か月間で私が知己を得ることに成功した施薬院講師は十四人を数えた。
中でも施薬院講師であり、上級医療魔導士であるバフシュ・アフルーズ師の知己を得ることが出来たのは、精霊のご加護によるものと言うしかないであろう。
バフシュ講師は施薬院でも有数の知識と技術の持ち主として知られ、特に施術の腕前では、シャイフ主席医療魔導士に衰えが見られる昨今では、事実上の最上位と言って差し支えない存在とされる。
社交にも極めて積極的且つ優秀であり、その交友は施薬院に留まらずカゲシン宗家の方々、更には各地の諸侯の上位にまで及ぶと聞く。
真に尊敬すべき医師と言えるであろう。
幸いにもバフシュ師の知己を得た私は師との社交に力を注いだのであるが、最大限の労力を注いだにも拘らず、接待しようとして接待されているという体たらくであった。
バフシュ師が私に宛がってくれた女は、師の女たちの中ではさして上位とは言えない者であったにも拘らず、その容姿は平均をはるかに上回り、その接待技術は極上という一言以外有り得ないものであり、片や私が接待に差し向けた二人はあべこべに師に接待技術を教授されていたというのである。
特に手指や腰の技巧については全くの未知の技が含まれ、驚愕、驚嘆することしきりであった。
社交と接待技術にはそれなりの物を自負していた我等であったが、どうやら成牛を見ずして子牛を大きいと言っていたのだと恥じ入ったものである。
そうして改めてバフシュ師をカゲシンにおける公私に亘る師匠として尊崇すべきと肝に銘じたのであった。
そのような事で、十一月の施薬院試験の後においても、バフシュ師と同席した際に、その見解を尋ねてみたのである。
「ああ、今月の合格者数を減らしたって話は聞いてる。
その分は来月に回すとかって話だな」
バフシュ師は流石に施薬院の事情に精通しており、アフザルよりも数段上の事情を知っていた。
「何でもシャイフのジジイが言うところでは、施薬院入講試験の基準を変えるという話になってるな。
話半分に聞いてたから良く分からんが、必要魔力量の基準を引き上げるんだそうだ。
それから、これまでは魔力や学力が低くても入学枠が空いてれば入れていたが、今後は取りやめにするって話もしてた」
「何故そのようにいきなり変わったのですか?」
「さあ、何でか分らん。
ただ、前回の試験を視察した際に、随分と問題が多いって怒ってたからそれと関係が有るんじゃねーか。
筆記試験なんかも設問の使い回しが多すぎるって言ってたな。
三〇年前と同じ問題が出てたとか言ってたぞ。
確かに、そりゃ、問題が問題だわな」
バフシュ師はそう言って大声で笑っていたが、私には穏当な内容とはとても思えなかった。
私が施薬院試験の受験者の一人であることを伝えると、それならば試験内容があまり変わらないうちに合格する方が良かろうと助言されたが、変わると言ってもたかが知れているから焦る必要は無いとも言われたのであった。
その後も、バフシュ師には色々と尋ねたのではあるが、師は施薬院試験に関わる会議には出てはいたものの、それに関心は薄いようで、それ以上の情報は得ることは出来なかった。
私はやむなく最も事情を知りそうな人物に助けを求めることにした。
彼は大叔父の長年の知己であり、実を言えばあのアフザルの一族でもあり、現在はカゲクロで医業を営むもののカゲシン施薬院に多くの縁故を持ち、その意味では極めて頼りになる人物なのであるが、吝嗇と言う厄介な業も併せ持つ、交友に癖のある扱い辛い人物でもあった。
「うむ、その話は聞いておる。
施薬院学問所の試験部門は今それで右往左往の大騒ぎになっておる」
老アフザルはそう言って太鼓腹を揺すり、大きくため息をついた。
「此度の改変は性急に過ぎ、無意味な改悪とすら言える。
シャイフ師は確かに卓越した技を持つ方ではあるが、世の一般的な医業というものには疎遠であられる。
シャイフ師のような御業はカゲシンの宗主一族や諸侯の当主辺りでなければ必要とせぬものばかりじゃ」
彼が大きく首を振ると顎周りの肉もタプタプと揺れた。
裕福であることの証である。
「普通ならば一月掛かる病を三日や四日早く治したとて、巷では何も変わらぬ。
半年で亡くなる死病を二カ月延ばしたとて何になる。
確かに公爵のお命が二カ月延びるのは意味があるのかも知れぬが、男爵の妻が二カ月早く死んだとて何も変わらぬ。
そんな技を磨いても市井では患者は集まらぬ。
そんなことよりも社交の方が大事であろう」
私は大きく頷いた。
全くその通りであろう。
「だが、困ったことにシャイフ師は、過度な知識と技術にばかり偏重しておられる。
本来、施薬院資格とは、適切な師匠の下で十分な修練を積んだ者全てに与えるべきものであろう。
無制限に資格を与えるべきではないという意見は尤もだが、だからと言って無意味に難解な試験を課すことが適切とは思えぬ」
「施薬院内部には、反対する者はいないのでありましょうか?」
「勿論、おる。
だが、いささか不利ではある。
施薬院の筆記試験に二〇年、三〇年前と同じものが含まれておったのは、昨今の進歩を取り入れぬ停滞の象徴だとの意見が大勢を占めておるのじゃ。
医学の本質は二〇年、三〇年経過しても変わることは無い、むしろ古の伝統こそ重視すべきと言う穏当且つ正当なる意見は残念ながら少数派だという」
私は愕然とした。
カゲシンには腐敗と堕落が蔓延しているとは聞いていたが、まさか施薬院の中枢がこのように堕落しているとは流石に考えもしなかったからである。
自分達の趣味だけのような医学の本質から外れた研究を延々と続けるだけに飽き足らず、それを多くの善良な医師たちにまで強制するとは、これを堕落と言わず何と言うべきか。
「施薬院試験を改革するのであれば、むしろ社交能力の試験を取り入れるべきではありませんか。
治療呪文がある程度行き渡った現在において医師に最も求められる能力は社交でありましょう。
社交により普段から患者と親密に接し、その親愛と信頼を勝ち取る事こそが最も重要でありましょう。
しかるに現在の施薬院試験には社交に関わるものが有りませぬ。
これでは現実には医師として通用しない机上の名医を作り出すだけでは有りませぬか」
私の言葉に老アフザルは顔を綻ばせた。
「流石は我が三〇年来の知己が鍛えただけは有る。
そなたは立派な医師じゃ。
じゃが、・・・」
そう言って彼は顔を歪ませた。
「そうではあるものの、ここしばらくは如何ともし難いであろう。
幸い施薬院試験の変更は徐々に行われることになっておる。
改悪が酷くなる前に早めに合格しておくべきと考えるが、どうじゃ、融通を利かせてもらうか?」
私は老アフザルの言葉に頷き、取りなしを依頼した。
実を言えば大叔父は無意味な試験に時間を取られるよりも、最初からこの男に依頼すべきという考えであり、その為の謝礼金も別に用立ててくれていたのであるが、カゲシンまでの道中が長引き予想外に経費が掛かった事と、何よりアナトリスで女性を紹介して貰う謝礼として予定外の出費がかさんだ為、礼金に不足をきたしていたのである。
だが、事ここに至っては如何ともし難く、私は故郷の父と母、そして大叔父に追加の学費を要請すると共に、クテン侯爵家より当座の資金を借り入れ、謝礼金を支払ったのであった。
そうして、十二月試験の十日程前に試験問題文を入手したのであるが、安堵と共に唖然としてしまったのである。
試験問題は以前よりも更に異様に細かく枝葉末節に拘る無意味な内容と成り果てていたのだ。
最早、シラミを拾うどころかシラミを拾ってその足の数を数えるような塩梅である。
後日聞いたところでは、これらの問題はカゲシンでここ十年内に新たに出版された学術書にのみ掲載されている内容であり、それらを購入しなければ、あるいはそれらの講師の講義を受講せねば解けない様になっていたらしい。
すなわち、それらの講師達の利権に阿った内容であり、一般的な医師が必要とする知識とは大きく乖離したものと成り果てていたのである。
そのようなことで、私は手元の学術書を総動員してもこの試験問題の解答を作成することが出来ず、やむなく、伝手を頼って模範解答を作成してもらうことになったのである。
如何ともし難い不要な出費であった。
だが、このような血の滲むような努力の結果、私は十二月の施薬院資格試験筆記試験に合格したのであった。
二次試験も改変されていたが、主として魔力量を見る試験となっていたのは私に幸いした。
私はクテン侯爵に連なる血筋であり、魔力量ではそこらの貴族に後れを取ることは無い。
こうして、私は晴れてカゲシン施薬院の銀色徽章を獲得したのである。
「其方の魔力量は群を抜いている。
筆記試験も優秀であった。
其方には期待しておる」
シャイフ主席医療魔導士は私の手を取って祝福した。
マリセアの正しき教えと精霊に感謝せねばならぬであろう。
帝国歴一〇七八年十二月吉日 シャハーン・アウラングセーブ 記す
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