02-17 捕まりました
遠征実習から戻ったオレを待っていたのはハニトラだった。
埴輪の虎じゃなくて、ハニートラップの方だ。
・・・すまん、自分でもグダグダだと思う。
でもさー、久しぶりに家に帰ってきたら、誰もいない筈の家に半裸のブ〇ース・スプリングスティーンがいるってどうなの?
オレ、予定より一日早く帰って来たんだけど、なんでいるの?
確かに、先に学問所に帰着の届け出は出したけどさ、それで、これって、もう誰を信じていいのか分からない。
顎髭まで蓄えたブ〇ース・スプリングスティーンが、何故か男性器が付いてないお股を、クパァって、クパァって、してたのを見てしまったオレの精神的ダメージを察して欲しい。
人の顔見て、ニッコリ笑って、クパァだよ。
トラウマ半端ない。
玄関からUターンして衛兵所に駆け込んで、衛兵引き連れて戻ったら誰もいなかったのは、まあ幸いだったのか、・・・幸いだったと思おう。
ダミーの薬剤サンプルは無くなってたけど。
そして翌日はまた美人局。
アーガー・シャーフダグ君、君さあ、もういい加減にしてくれないかなぁ。
もう、何回目だろう?
しかも中途半端に筋肉質な男、じゃなくて女が、ライデクラート隊長ばりの低音ヴォイスでシャウトし続けるって、おまえは、ブ〇ース・ディッキンソンか!
調達できる女性に限りがあったのだろうけど、根本的に間違っている。
そんで家に帰れば、日雇い家政婦が家探ししてた。
買収されたらしい、・・・いや、もう、いいけどさ。
こちらの悪だくみも進んでいる、・・・うまくいくのかな、いや行くと信じよう。
遠征実習については、あれから特に話すことは無い。
三日目はずっと施薬院にいて術後患者の処置と、後回しにされていた軽症患者の対応で終わった。
帰り道はバフシュ講師の計らいで施薬院の馬車に乗ることができ、おかげで一日早く帰ることができたのだ。
一日早く帰れば、少なくともその日は大したことは無いと計算していたんだけどね。
予定は未定とはよく言ったものだよ。
そんなんで、オレはまた夜中に屋根の上を飛び跳ねていた。
これも、何回目だろう。
もう、飽きた、青森、岩手。
・・・だめだ、本当にだめだ。
疲れすぎだよ、精神的に。
こんな事考えちゃいけない。
まだ、口に出さないだけマシか、・・・はて?
えーと、囲まれてますかね、オレ。
・・・ここ、屋根の上だよね。
まあ、せいぜい二階建ての街並みだからそんなに高さは無いけどさ。
何でこんなとこで囲まれてんの?
しかも、オレ、音は消してるし、光も遮断している。
つまり、聞こえるはずないし、見えるはずもない。
そりゃ、子細に見ればオレのいる場所は光が通らないから、不自然に見えるだろう。
でも、今、夜中だよ。
・・・しかしだ、周囲は、明らかにオレがいるという前提で包囲網を形成している。
そのように動いている。
誰だ?
かなり能力が高いよね、・・・えーと。
「すいません。
降参しますので許してください。
怪しい者ではありません。
単なる夜の散歩です」
光学迷彩と遮音壁を消した上で、両手を上げて宣言する。
「あんたねぇ・・・、怪しくない者がなんで夜中に屋根の上で散歩してるのよ」
「だって良い月じゃないか」
「はい、撤収、撤収。この馬鹿、連れて撤収」
「あれ、解放してくれるんじゃないのかなぁ・・・。
ひょっとして怒ってる、のかな?」
シマちゃんは、何故か不機嫌だ。
不機嫌な顔もかわいいが。
タイトなミニが似合ってます。
その格好で屋根の上跳んでると下着見えるよ。
・・・オレが注意する必要は無いな。
「あのさ、私らここ十日以上、毎晩、連れ込み宿界隈の屋根の上を張ってたんだけど。
この苦労、分かる?分かるわよね?
好きなだけ吸ってください、一リッターぐらい吸っちゃって構いません、とか言うでしょ、普通」
「いや、一リットルはないだろう。つーか、オレ、何の罪も犯してないぞ」
「まあ、いいから。
いいから、うちに来なさい。
それとも何、ここで話す?」
「すいません、明日も早くから予定が、・・・いや既に今日の予定が、・・・」
懐中時計を確認すると午前二時だ。
ブ〇ース・ディキンソンの事情聴取に時間を割き過ぎた。
「あんた、珍しいもん持ってるわね」
「あ、時計の事?」
「携帯用の時計なんて高価なもん良く持ってるっていうか、それ、結構古いでしょ」
取り上げられました。
「帝国の初期型じゃない。
こんな状態いいの初めて見たわ。
アンティークとしての価値も高そう。
なんでこんなの普段使いにしてるの?」
単に知らなかっただけです。
つーか、『神様の御使いィ』基準では古くも無いんだろうな。
「それは、兎も角、事情聴取には後日応じるから、今日は見逃してくれると嬉しいんだが、・・・」
取り返した時計をしまいながら、交渉する。
「ホントに来る?」
「シノさんに直接弁明させてもらえるなら必ず行くよ」
「・・・あんたたち、先に帰ってシノに連絡しといて。
私はコイツにざっと話を聞いてから帰るから」
何故か、困った顔でシマが周りに指示を出した。
彼女の指示で手近な屋根に二人並んで腰かける。
シマは身長一五〇センチちょっと。
ここらの平均身長は男女問わず一六〇ちょっと。
シマは小さい方だが、これぐらいの者はけっこういる。
ただ、座るとメチャ小さい。
妙に手足が長いので、座高がウルトラ低いのだ。
ついでに頭も小ぶりだから、座ると十歳ぐらいに見える。
黙っていれば、すんごくカワイイんだが。
膝の上に座らせてナデナデしてあげたい。
ついでに、そのまま背面座位で下から突き上げてやったら、さぞ、いい声で、・・・なんて考えちゃいかんな。
「はい、じゃあ、手」
「じゃあ、手ってなんだよ」
「融通利かせてあげたんだから、お礼を差し出すのが礼儀でしょ。
五〇〇ミリリットルぐらいでいいわ」
「まて、何で血を吸わせる前提なんだ。
前の時も一〇〇ぐらいだっただろ」
「あのさぁ、さっき言ったでしょ。
私たち交替で十日以上、ここらを張っていたわけよ。
なんでか分かる?」
「えーと」
「うちの戦闘訓練は夜にやるんだけど、訓練の途中で、『不審な人影がカゲシト民家の上を飛び跳ねている』って話になったわけ。
音も光も遮断して、そんで高速で屋根の上を移動している謎の人影。
カゲシンの関係者じゃあり得ない。
正体を隠してカゲシトに潜入してる高度な術者、つまり敵だろって話になったわけ。
具体的にはセリガーかフロンクハイト。
それで、うちの総員でパトロールよ。
まさか、こんな落ちだったとはねぇ」
うんと、・・・そんなに何度も屋根の上跳んでたかな?
何回やったっけ、・・・合計、・・・九回、か。
必ずしも安宿まで配達していたわけではないが、それなりの回数ではある。
「シマさん、あの一〇〇でいいでしょうか?」
降参して腕を差し出す。
「まあ、いいでしょ」
しばらく吸って、満足したらしく、ちっちゃな女の子は機嫌よく、唇を放した。
「それで、どうよ」
「それでって?」
「何か理由があってこんなことしてたんでしょ。
ついでだからお姉さんが相談に乗ってあげようじゃない」
「いや、オレの方が年上だろ」
「一か月だけじゃない。同い年でしょ」
「だから、年上じゃないってことだろ」
「あー、うん、でも、そうね。
知性と教養と道徳は私の方が上だから相談に乗ってあげようじゃない。
大体、あんたが何でこんなことやってたのか、分かんないで帰れるわけないでしょ」
まー、それもそうか。
つーか、素直に相談するのもいいかもしれない。
知性と教養と道徳が上かはともかく、彼女は馬鹿じゃないし、この国の国民でもない。
そういう意味では公平な意見が聞けるだろう。
「ふーん、それで、『美人局』の女性を捕らえて安宿に連れ込んで手籠めにしていたと」
「いや、何時そんなこと言ったよ。手籠めにはしていない。尋問しただけだ」
「でも、がっちり『威圧』して洗いざらい話させて、また『威圧』して忘れさせたんでしょ」
「まあ、それはそうだけど。
そうしないと、騒がれて面倒になるじゃないか」
「それで、その間にやっちゃったんでしょ。
いいわよ、別に隠さなくても。
この国の住民は毎日やり狂ってるから、今更驚きもしないわよ」
「いや、本当にやってない。大体好みじゃない。相手も、シチュエーションも」
シマにこれまでのあらすじを話したら、こうなりました。
あ、亜空間ボックスの件だけは話してないです。
「この国のって、お前たちの国に比べてこっちは結構『お盛ん』なのか?」
「あー、そっか。
あんた、元はこの国の人間じゃないもんね。
まあ、すごいわね。
私たちは結婚してるか、それに準じた契約をしてるとか、決められた相手としかセックスはしないんだけど、こっちは見境なしだもん。
一応、未成人や結婚してる人は制限がかかるみたいだけど、抜け穴はいっぱいあるみたいだし。
結婚してない成人は自由恋愛で、もう好き放題という感じよ。
結婚に備えてお互いのマナの相性を見るため、とか言い訳はあるみたいだけど、・・・私たちから見ればぶっ飛んでる感じかな。
こっちの人は、『性病』って物もある筈だけど、どうなってんのかしらね」
うーむ、そうか。
何かホッとした。
こいつが男漁りしてたら幻滅だもんな。
あ、女同士は別カウントなのかな、・・・まあ、いいか。
「まあ、個人差はかなりあるから、貞淑な人もたまにはいるみたいよ。
私も、ここに来て一年ちょっとだから、そんなに詳しくないけど」
「じゃあ、センフルールでは、男性が相手をするのは正式な夫人だけで、使用人とかには手を付けないんだな」
「いや、正式な使用人とはしなきゃダメでしょ。使用人を雇う時点で義務だもの」
「あ、そうなの?」
・・・大して変わらんような。
「あのな、ここらでは、男性一人に女性四人の比率って聞くけどセンフルールでも同じなんだよな?」
「まあね」
「だったら、一人の男が相手をするのは女四人だよな?」
「あんた、バカぁ?
平民の能力が低い男だと女二人ぐらいしか養えないでしょ。
経済力と能力のある上位の男性が多くの女性を引き受けないと多くの女性が困るじゃない。
あんたみたいな魔導士は人族では千人に一人って聞くわよ」
貴族の男性は正夫人、側夫人、使用人と十人程度抱えるのは普通らしい。
帝国でもセンフルールでも変わらないらしい。
頭痛い、・・・でも『あんた、バカぁ?』が聞けて良かった。
やはり『あんた、バカぁ?』は美少女に限る。
・・・最近、他でも聞いたような、・・・どこの誰だったっけ?
「そんで話を戻すと、あんたの遭遇している『美人局』の波状攻撃だけど、こっちの貴族の常識からすれば引っかからないのは有り得ないってことだと思う。
確か、身分が上の独身女性から誘われたら下位の男性がそれを断るのは礼儀に反する行為なのよ。
お見合いなんかでは大概そう。
個人的な誘いでもかなり問題になると思う」
お見合いは既にやらかしてるが、こっちもなのか?
「いや、ちょっと待て。
今の話だと、身分を笠に着た『美人局』はオートで成功することになる。
そんなのおかしくないか?」
「そうだね。
実際、そういう話も聞いたことあるし。
でも、なかなか成立しないみたいよ。
女性が部屋に男性を誘う時点でそういう意味だから、男性がその気になっても仕方が無いってのがこちらの常識。
あと、聞いてて思ったんだけど、少なくとも最初は『美人局』じゃなかったんじゃないかなぁ。
身内の女性と関係を持たせて、女性経由で情報を聞き出そうとしていた可能性が高いと思う。
あるいは、こっちに来ればこの女をあげるよー的な。
それをあんたが、全部ぶちぎってるから、こーなってるわけ」
じゃあ、なんだ?
アーガー・シャーフダグ君とその他大勢は『女性の先払い』をしようとしてたって事か?
「まあ、あんたが断って直ぐに強硬手段に切り替えてるから、最初からそっちの想定もしてたと思うけど。
何にしろ軽く見られてるのは間違いないわね」
うん、そうだよな。後悔して損した。
「しっかし、あんた、いい加減、結婚したら?
少なくともまともな使用人を雇いなさいよ。
女を連れて歩いていれば『美人局』は大幅に減るはずよ」
それが、一番、ハードル高いです。
って、・・・あれ?
「今、気付いたんだが、お前たちの所にも使用人がいるよな?
人族の使用人もいたように思うが?」
「そりゃ、普通にいるけど」
「確か、留学生は全員女性で、男性はいないんだよな?
でも、人族の従者も普通に雇っている」
「まあね」
「女同士で、性的な繋がりが無いのに裏切られないのは、何でだ?」
シマが整った顔を傾げる。
「えーと、よくわかんないけど、あんたは、性的関係の無い、かつ、信頼できる使用人が欲しいってこと?」
首を縦に振る。
「あのさ、取引しない?
良ければそれなりの家政婦を提供してあげてもいいわ」
「家政婦って、お前の、センフルールのとこのって意味か?」
「正確には、うちで取引している商店からね。
少なくとも口入れ屋のとこよりはマシなはずよ」
「良く分からんが商店が雇った家政婦は信頼できるのか?」
「大きな商店だと、使用人も多くなるのよ。
性的関係の無い、でも、信頼できる家政婦が必要になるの。
村というか地域と契約を結ぶんだって。
長い年月にわたって特定の村や地域から使用人を雇う訳。
田舎の子供なんてろくに読み書きもできないから、そのまま都会に出ても最底辺の仕事しかない。
でも、都会に出たい子はたくさんいる。
それで長年なじみの商店にお願いするわけ。
田舎の子供は商店に入ればそこそこの給料がもらえて、読み書きぐらいは教えてもらえる。
頑張れば出世も可能だし、お金をためて故郷に帰って結婚というのも有り。
悪い話じゃないでしょ。
店の側から見れば、給料は高めになるけど比較的質が良くて何より忠誠心の高い人材が手に入る。
村長とかが取りまとめ役だけど、村側としては貴重な就職先だから、選りすぐりの人材が選ばれるんだよ。
そして、村単位で就職するから裏切りにくい。
一人が問題を起こしたら、村全体の問題になるからね」
「成る程、地縁血縁で縛るという奴か」
下手なことしたら故郷の家族が村八分って訳だ。
それなりに有効そうなシステムだろうか。
「それは、大変ありがたいが、・・・見返りは?」
ちょっと怖い。
「えーとね、血が欲しい」
「血、って、・・・ひょっとして定期的に血を吸わせろってことか?」
「うん」
「確か、お前が血を吸うのは、緊急時のマナ回復とか言ってたよな。
それを定期的にって」
「あのさ、これ、シノっちにも内緒にして欲しいんだけど、・・・春に、ここの練成所で武芸大会があるの。
あたし、来年のに出たい。
出て、優勝したいの」
「定期的ってことは、それの訓練に必要ってことか?」
「うん。それと当日も。
訓練はすればする程いいけど、マナに限りがあるでしょ。
回復手段があればそれだけ訓練を増やせる」
はて、・・・良く分からん。
「お前、結構強いだろ。
そんなに強い奴が出るのか?」
自護院全体ならばともかく、練成所となれば学生だけだろう。
このちっちゃいのはフロンクハイトの一五〇歳に勝っていた。
今回の模擬戦でもこいつの相手になりそうな奴などいなかった。
「単純に一対一だったら、まず負けないよ」
「つまり、単純じゃないってことか?」
「今年の大会はシノちゃんが出て優勝したんだよ。
でも、月の民に優勝杯を取られるのは恥ってことで、目一杯嫌がらせされた。
トーナメントの戦いなのに、シノっちだけ六連戦だったんだよ」
はい?
トーナメントで六連戦って、・・・。
「つまり、何か、シノさんの試合だけが意図的に残されていたと」
「うん、戦いの後、次の戦いまでは普通は二時間以上空くんだけど、シノっちだけは十分も無かった。
闘技場が整え終わったら次の試合って感じ。
連戦で消耗させて、五戦目か六戦目で倒す計画だったみたい。
まあ、シノはそれでも勝ったんだけどね」
それはハードだ。
「それで訓練が必要で、当日も血が欲しいってことか」
「最初の方は一撃で倒すぐらいじゃないと厳しいと思う。
当日も、水を飲む時間ぐらいはあると思うから、血が飲めるととっても嬉しい」
多分、下の方の相手は露骨にスタミナ消耗させるように指示されるんだろう。
「それ、シノさんは何て言ってるんだ?」
「一年待ったらって言ってる。
少なくともあと二年はここにいる予定だから焦る必要はないって。
シノっちが優勝したのは十七歳の春で、私は来年の春には十六歳。
だから、次の大会で優勝できなくても私の才能が低いわけじゃないから安心していいって。
でもさ、シノちゃんは十六歳の時に出ても勝てたと思う」
「そっか、少しでも追いつきたいんだな」
「あのさ、いきなり頭、撫でないでくれる」
怒られました。
「分かったよ。月に二回ぐらい、一回一〇〇ミリリットルでいいか?」
「もう、ひと声」
「じゃあ、十日に一回。代わりにその時に魔法を教えてくれ、特に戦闘系の」
「わかったわよ。それでいいわ。
じゃあ、うちの戦闘訓練の時に呼ぶことにするわ」
一応、握手する。
「ところで、何で、オレなんだ?
オレみたいな正体不明の魔力が有るか無いか分からん奴より、もっとちゃんとした貴族に頼めばいいじゃないか」
「月の民に血液を飲ませてくれる貴族なんている訳無いじゃない」
「そうなのか?
それなりに付き合ってる貴族もいるんだろう」
「カゲシンの貴族、特に男性は月の民の女に血液を与えちゃいけないって決まりがあるみたい。
詳しくは分からないけどさ。
それに、あんたの血、結構マナ濃いし。
あと、正直なところ、あんたが一番信頼できそうなのよね」
「・・・お前、意外と友達少ないんだな。
オレよりよっぽど社交的な性格してるのに」
「残念ながら、そうなのよ。
特に、男の貴族はねぇ、いろいろあって」
しけた顔でシマが答えた。
「ついでに教えてほしいんだが、さっき話したオレの『悪だくみ』についてはどう思う。
感想を教えてくれたら有り難いんだが」
「ああ、あの薬の話ね。
『悪だくみ』って程の内容じゃないでしょ。
成功確率三割ってとこかしら」
「あー、やっぱ、そーかー」
「上級貴族相手にインパクトが足りないわよ。
もっと、ガツンとやらないと。
私だったら、・・・あー、そうか、この話、うーん」
何故かいきなり考え込まれてしまった。
「あのさ、あんた、この際だから、薬でもうちと提携しない?」
「薬については値段とかシノさんと打ち合わせたぞ」
「あの時はまだあんたが本当に薬を作れるのかどうか、はっきりしてなかったし、作れるとしてもそんなに多くは無いだろって話だったのよ。
今、あんたの話聞いてると普通に量産できるんでしょ。
あと、あんたがこれから育てる『弟子』と彼らが作る『薬』の話もある。
それなら色々と相談した方が良いと思うのよ。
私たちもそうなんだけど、薬を作っても、それを売るのは結構な手間でしょ。
あんたが少ししか薬を作れないなら自分で高く売る方がいいけど、たくさん作れるなら誰かに捌いてもらった方が楽で収入も多いでしょ。違う?」
「いや、正しい。
オレも販売は誰かに任せたいと考えてたから。
しかし、そうか。
お前たちもそんなに量は売れてないってことなんだな」
「効果があれば売れるってわけじゃないからね。
施薬院の権威は大きいんだよ。
私たちだって施薬院に籍を入れてるのにね。
じゃあ、こっちの話はシノちゃんと相談しとくね。
後日、また相談ね」
「よろしく頼む」
「それで、提携を踏まえての助言だけど、さっきの作戦、もっと薬をたくさん作れそうな人材を確保すべきだと思う」
「いや、そういう人材はいない訳じゃないけど、お偉方が受け入れる人間じゃないとだめだろ」
「だから、いるでしょ。才能ある我儘が」
「才能ある我儘って、・・・ひょっとしてアレ?
・・・いや、でも、無理じゃね?」
「そうでもないと思うわよ。良かったら私が繋ぎを取ってあげようか?」
「お願いいたします」
可能ならば最善だ。
オレは土下座した。
屋根の上だが。
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