02-04S モローク・タージョッ 側室の娘として

「あら、タージョッ、帰ってきたの?

 無駄な、お勉強はもうやめたの?」


「ファウズィーイェお姉さま、タージョッをいじめないであげて。

 彼女は勉強するしかないんだから」


「ビントフォアー、私は親切で言ってるのよ。

 そうでしょう、タージョッ。

 勉強なんかしたっていい所に嫁げるわけないじゃない。

 せっかくそれなりの容姿なんだから、もっと、母親に倣って男に媚びる修行したら?」


「確かにタージョッのお母様は、男に媚びる技術だけは素晴らしいですものね!」


「やめなさい。彼女は、それだけでなくベッドでの変態行為でも優れてるって聞いてるわよ」


 異母姉二人の言葉に他の客がドッと笑う。

 困っていたら、長兄の第一正夫人が、横に行けと手で合図してくれた。

 彼女の表情からは決して好意だけではないと読み取れるが、それでも助かる。

 私は、そそくさと中庭を横切り、建物に入った。

 失敗した。

 まさか、こんな時間に中庭でパーティーをしているとは思わなかった。

 それも、よりによってあの二人が帰ってきているとは。

 私の部屋は、屋敷の隅にある。

 正門から中庭を突っ切るのが早い。

 こうと知っていれば通らなかったのだが。


 世の中は不平等にできている。

 生まれた場所、種族、親の地位や財産、そして個人の能力。

 平等な方が少ない。

 私はカゲシトの町に大僧都の娘として生まれた。

 大僧都というのはマリセア正教独自の僧侶貴族の位階で、諸侯では伯爵相当とされる。

 その娘だから平民から見ればお嬢様だろう。

 だが、母は正夫人ではない。

 側夫人、側室だから、その子供である私は一段低く見られる。

 つまり、僧都家相当、諸侯で言えば子爵の子相当ということだ。


 母に言わせれば私は変な子供らしい。

 小さいころから勉強ばかりして、女の子らしいことに関心を示さなかったからだ。


「女の子はきれいでお淑やかならそれで充分なのよ。

 中途半端に勉強しても良いことなんて無いのだから」


 私に古臭い名前を付けてかわいがってくれた曾祖母はしばしばそう言って私を窘めた。

 私は母のたった一人の子供で、曾祖母のたった一人のひ孫だった。

 私の母は側夫人で、その母も側夫人で、そのまた母、つまり曾祖母も側夫人だった。

 曾祖母に、そして祖母や母に言わせれば側夫人でいるのが、最も賢い生き方らしい。

 下手に正夫人の座を狙っても苦労ばかりで良いことは少ないと。


 世の中は女性が多く、男性は少ない。

 貴族は上級になればなるほど少ないけど、上級貴族は多くの夫人を抱える。

 だから、大僧都家の娘は大僧都家の第一正夫人には成れない。

 大僧都家の正夫人には、僧正家や少僧正家の娘が下って来るからだ。

 僧正家や少僧正家の正夫人には宗主様の娘が下って来るからだ。

 だから、大僧都家の娘は、良くて大僧都家の第三正夫人ぐらい。

 普通は僧都家の第一正夫人、第二正夫人ぐらいだろう。

 貴族の娘が上の階級に嫁ぐのは、かなりの付加価値が無いと無理だ。

 有名な、ガイラン・ライデクラート様のように、類まれな美人で武人としての才能も有り尚且つガイラン大僧都家の跡取り娘という飛びぬけた人で初めてクロスハウゼン少僧正家に嫁ぐことができる。

 それでも、第三正夫人だけど。

 我が家の場合は、跡取りである長兄の第一正夫人は僧正家第二正夫人の娘だ。

 異母姉のファウズィーイェは大僧都家の第三正夫人、ビントフォアーは僧都家の第一正夫人。

 二人とも母親は正夫人だ。

 母親が側夫人の私は、大僧都家の娘でも一段階下だから、少僧都家の第一正夫人が定位置になる。

 少僧都家は諸侯で言えば男爵ぐらいだけど、カゲシンの世襲貴族としては最下位。

 貴族と言っても少僧都家では経済的に苦しい家も多い。

 更に少僧都家の娘となると、嫁ぎ先は平民、それも中堅以下の商人がせいぜいだろう。


 だから、わざわざ正夫人になる意味なんて無いというのが曾祖母たちの意見だ。

 パーティーの仕切り、夫の仕事の補佐、家計のやりくり、正夫人になれば求められることが多くなる。

 僧正家とかならともかく、少僧都家でそれをやっても悲しいだけだと。

 側夫人で求められるのは、美しさと従順さ、あとベッドの中での技巧ぐらいだ。

 そして、側夫人であれば身分による影響は少ない。


 母は大僧都家の側夫人の娘として生まれ、大僧都家の側夫人に入った。

 祖母も同様だ。

 曾祖母は僧都家の側夫人の娘として生まれて大僧都家の側夫人に入ったという。

 曾祖母が祖母や母に尊敬されているのはこのためだ。


「少僧都家の第一正夫人よりも、大僧都家の側夫人の方が良い生活が出来るのですよ。」


 曾祖母は常々そう言っていた。




 それでも私は拘った。

 今となっては恥ずかしいけど、学問所に入るころの私は漠然と自分は特別だと思い込んでいた。

 とにかくすごい人間になって僧正家の嫡子とか宗公子様に見初められて、その第一正夫人になると。

 根拠がゼロだったわけじゃない。

 私は勉強が出来た。

 年上の兄弟、親戚、使用人、みんな私より下だった。

 私は家族で一番成績が良かったのだ。


 でも、学問所に入り体が大きくなってくると、夢の方はだんだんと小さくなっていった。

 単純な勉強の成績ならば私は悪くない。

 定位置は同年齢で五番以内。

 帝国内で最も大きいカゲシン教導院学問所で五番以内は誇ることが出来る成績だと思う。

 だけど、特別じゃない。

 そして、特別がいた。

 マリセアの内公女、ネディーアール殿下。

 世の中には教科書を数回読んだぐらいで全部覚えてしまう人がいる。

 彼女はそれだった。

 私の半分も勉強しないのに解答は完璧。

 絶望的な差だった。

 困ったことに差が有るのはそれだけじゃ無い。

 彼女の母親は帝国随一と噂される美人で、彼女も幼くして類まれな美形だった。

 私も周囲から見栄えは良いと言われていたけど、彼女の横では引き立て役だ。

 加えて運動神経は抜群で、剣を握らせれば講師が絶賛。

 魔法に至っては、帝国国家守護魔導士の祖父に似たらしく、魔力量が多すぎて講師が持て余す有様だった。


 一方の私と言えば、魔力量は中の中。

 自護院に入れば頑張って従魔導士だと魔法科の講師は言った。

 一応魔導士が名乗れる程度に魔力は有るけど、その他大勢の魔導士という意味だ。

 そして、私は走るのが遅い。

 私はいわゆる筋肉系の女ではないから体格も貧弱。

 自護院には向いていないと講師にはっきり言われた。


 十三歳になるころには私の『大物』計画はかなり切羽詰まっていた。

 姉たちは私を痛々しい目で、いや、馬鹿にして呆れていた。


 私は必死で考えた。

 自護院での出世は無理。

 真っ当に行くのなら宗教本科だけど、これはとんでもなく厳しい。

 宗教本科で出世するとしたら、宗教の儀式魔法を極めるか、修行をするか、になる。

 私の魔力量では儀式魔法は無理だから修行になるけど、これがとんでもない世界だ。

 カゲシン本山での修行は厳しく数も多い。

 基本となるのは三種類、百日行、五百日行、千日行だ。

 修行は誰でも行える。

 魔力が無くても可能だから、とても公平な開かれた制度だ。

 だけど、求められる信仰心、気力、体力、根性が半端ない。

 帝国中から修行僧がやってきて、大半が挫折して帰っていく。

 最高難度の千日行は十年に一人達成者が出るか出ないかという厳しさ。

 千日行を達成すれば庶子の娘でもマリセア正教の中枢、国家の中枢に出世は確実なのだけれど。

 最初の百日行でも、成功者は何人もの補助者を引き連れて達成しているのが現実。

 事実上、金が無ければ達成できない状況だ。

 しがない側夫人の娘では、まず無理だろう。


 メジャーな道がダメであれば脇道だけど、調べてみれば脇道は所詮脇道なのだった。

 出世コースの一つと言われる『算用所』。

 だけど、トップは少僧正家。

 この時点で宗教本科や自護院より下。

 しかも、算用所のトップは宗教本科からの任命だ。

 算用所内部からの叩き上げは最高でも『僧都』、子爵相当だ。

 算用所が出世街道と言われるのは、平民や貴族の庶出の男子など貴族ではない者の自立の道だからだと思う。

 でも私にとっては意味が無い。

 そして、算用所にはそれだけを極めた者が集まる。

 私、算数は不得意ではないけど、特別得意というわけじゃない。


 そんなことで、私が選んだのはもう一つの脇道、施薬院だ。

 施薬院のトップは大僧都だけど、施薬院内部から選ばれる。

 算用所を卒業しても勤め先は役所関係しかないけど、施薬院で優秀な成績を収めれば収入は十分。

 独立した医師として生きて行くことが可能だ。

 カゲシンを出てどこかの土地持ち貴族と結婚というのも可能だろう。

 そして、何よりの決め手は私に医者としての才能があった事だ。


「手先が器用で、マナの取り扱いもうまい。

 魔力量が多いとは言えぬが、其方はそれなりの医者になれるであろう」


 ある日、我が家を訪れた施薬院のトップ、シャイフ・ソユルガトミシュ主席医療魔導士は、私をそう評した。

 シャイフ・ソユルガトミシュは私の母の兄、つまり私の伯父になる。

 とは言っても私の母は庶子で、ソユルガトミシュ様はシャイフ家の家長、第一正夫人の息子だから普段は『伯父』と呼ぶことは憚られる立場だ。

 だけど、母はシャイフ家の末子で、年の離れた異母兄のお気に入りだった。

 母がモローク家の側夫人に入ったのも、伯父の斡旋によるらしい。

 伯父がモローク家を訪れる際には母と私が呼ばれることが多かった。


 私は、その場で施薬院入りを父と伯父に直訴した。

 庶子の娘を学費の高い施薬院に入れることを父は躊躇っていたけど、伯父がその場で私を試し、『本人の努力次第で金色を狙える』と話したことから、私の施薬院受験が許可された。


「殿方は、賢し気な女性を好まないのですよ」


 曾祖母は例によって反対したけど、驚いたことに母はそうでもなかった。

 後で聞いたところでは、母も施薬院受験を目指した時期が有ったのだという。

 シャイフ家は代々の医療貴族だから、家の中に医学書は勿論、受験のための参考書も多数あった。

 言われてみれば不思議ではない。

 丁度、シャイフ家の先代、つまり私の母方の祖父が死去した時期で、諦めざるを得なかったのだという。


「現実問題としては妥当な選択だと思うよ」


 幸いなことに年の離れた長兄、モローク家の跡取りも私の選択を認めてくれた。

 長兄は第一正夫人の息子で、親子ほども年が違う。


「施薬院は、金はかかるが、身内に医者がいるのは何かと便利だ。

 勿論、行くからには金色を取って貰わねばならぬが、其方なら大丈夫だろう」


 接点らしい接点が無いのだが長兄は私の努力を知っていたらしい。


「正直、百日行に挑みたいとか言われるより遥かに良い。

 アーガー家の若君の話を聞いているだろう」


 アーガー家はマリセア宗家の傍系の僧正家、諸侯で言えば公爵級の家柄だ。

 過去に何人も宰相を出している。

 だけど、今の当主はあんまり評判がよろしくない。

 更に評判が悪いのがアーガー家の継嗣だ。

 何でも、百日行に何度か挑んだけど五日と持たずに挫折しているとか。

 素行も不良で悪い噂が絶えない。

 そんな、アーガー家の継嗣が施薬院に入ったのは少し前の話だ。

 何でもコネと金で無理やり入ったとか。

 シャイフの伯父が何度もぼやいていたから良く覚えている。


 長兄も賛成してくれたので、施薬院に入構すれば十八歳までは家から学費を出してくれることになった。

 私が礼を述べると、長兄は上機嫌で、「うまく金色が取れたら、少僧正家の側夫人になれるように今から根回ししておこう」と言って、私を微妙な顔にさせた。

 同時に長兄の子供たちの勉強を見て欲しいとも言われたが、これは喜んで引き受けた。

 教導院学問所に入る前、あるいは入った直後の教育は上位貴族では家庭教師が雇われる。

 家庭教師代は高額だから、貴族でも男性だけとか第一正夫人の娘だけしか付けないことが多い。

 身内が家庭教師を行えば結構な節約になるのだ。

 私が家庭教師として有能ならば、学費が停止されることも追い出されることも無いだろう。

 ちなみに、私自身は勿論、家庭教師など付けてもらってはいない。

 姉の教科書を借りての独学だ。

 こうして、私は施薬院に入り「金色」を目指すこととなった。


 施薬院の金色とは、一流医師の称号である。

 医者は、はっきり言えば自由業だ。

 ある意味、誰でも名乗れるし、名乗ったその日から仕事をしても良い。

 それで患者が来るかどうかは別だけど、医者をすること自体に問題は無い。

 医者っていうのは、すっごくたくさんの流派が有るから、それぞれやり方が違って統一できないそうだ。


 勿論、多くの医者は、先達に弟子入りして医者になる。

 でも、そんな見習い制度では医者の質は保証されないし、医学の発展も無い。

 何より、軍隊に必要な医者が足りない。

 そういうことで、国母ニフナニクス様が現行の施薬院制度を作られたと聞く。

 教導院学問所の中級課程には医者になるための科目が幾つかある。

 これを全部履修して合格すれば、医者をして良いらしい。

 だけど、国に医者として認めてもらうには、施薬院徽章が必要だ。

 これには施薬院入講試験に合格しなければならない。

 学問所中級規定を何倍も難しくした試験に合格しなくちゃならないし、薬の種類と使い方の試験も受けなくてはならない。

 つまり、多くの資料と教えてくれる人がいないと無理だ。

 建前としては図書館で本を読み漁れば合格できるとされてるけど、現実はそんな甘い話ではない。

 私は母を通じてシャイフの伯父から資料を借りた。

 分からない所は、最近施薬院に入ったばかりの伯父の孫、つまり私の従姉妹の子供に教えてもらった。


 スルターグナは可愛い美人で私より二歳年上、施薬院の一年目、医療貴族ルカイヤ僧都家の娘だ。

 立場的には私とよく似ている。

 スルターグナも施薬院入講を勝ち取るまでには、色々と苦労があったらしい。

 私達は直ぐに仲良くなった。

 立場も考え方も目標も似ているからだろう。


「いい、私達の立場を支えてくれるのは成績、成績だけよ」


 スルターグナは甲高い声で力説した。

 彼女は私よりも年上だが背は私より低い。

 既に成人しているけど、不当に幼く見られるらしい。


「まずは施薬院入講試験だけれど、ただ合格するだけじゃダメよ。首席で合格しないと」


「首席って、学年で一位ってこと?」


「ううん、その月でいいの。試験は毎月違うからね」


 スルターグナは首席合格の意味を説明してくれた。


「施薬院の金色は最終目標ではないの。施薬院講師が目標よ」


 施薬院入講試験に合格すれば施薬院徽章、つまり医者の国家資格が得られる。

 だけど、これで貰える徽章は通称『銀色徽章』と呼ばれる物だ。

 銀色徽章を獲得すれば医師の国家資格と施薬院で高度な医療を学ぶ資格を得たことになる。

 施薬院学生になるわけだ。

 稀に、銀色徽章を得て直ぐに故郷に帰ったり街中で開業したりする人もいる。

 だけど、多くの学生は四~五年は勉学を続ける。

 専門を決めて必要な講義を受講して履修証を獲得するのだ。

 施薬院の科目は薬術科が十個ぐらい、施薬科と施術科がそれぞれ二〇個ほどで、合計五〇を超える講義が有る。

 十個から二〇個の履修証を得て、施薬院を離れる人が多いそうだ。


 施薬科、施術科、薬術科、それぞれ、それに所属する講義の履修証を全て制覇すると、それぞれの科目の徽章が『金色』になる。

『金色徽章』は一流医師の証で、医師の憧れだ。

『金色徽章』は毎年、五〇人と出ない。

 中でも三つの科目が全て金色の物を『全金徽章』と言うけど、これは多くて年に数人。

 ゼロの場合も少なくない。


「私たちが目指すのは当然、『全金』なわけだけど、これを取るのは簡単じゃあない」


 私は頷いた。

 簡単だったら取る意味など無い。


「筆記試験は教科書と講義で何とかなるわ。

 問題は実技。

 製薬も大変だけど、一番は手術ね。

 最終的には主治医で執刀しないといけない。

 でも、施術科でメインとして執刀するには、助手として何度も手術に参加しないといけない。

 手術に参加するためには手術数の多い、手術のうまい講師の弟子になる必要が有る」


「それはシャイフの伯父様にお願いしてではダメなの?」


 淡い期待にスルターグナは首を振った。


「シャイフ主席医療魔導士は尊敬できる方でとても厳しい方よ。

 身内には特に厳しいわ。

 それなりの成績を取らなければシャイフ一族の恥さらしと見做される。

 だから頑張るしかない」


「じゃあ、有名な講師の弟子に入るのに首席合格が必要って事なの?」


「その通り。

 施薬院に入って二年目ぐらいから簡単な実習が始まるのだけれど、その時には成績が優秀な生徒が優先される。

 首席合格が意味を持つわけ」


 高度な医学知識を理解するためには一連の講義を順番に受講する必要が有る。

 これには最低でも一年半、多くは二年程かかるという。

 講義履修の筆記試験もそれから受けることになる。

 多くの学生は二年目の終わりぐらいから履修試験を受け始める。

 つまり、それまでは学生の成績は差が付かない。

 入講試験の成績上位者が優先して実習を受けられるので、講師の目にも留まりやすいという。


「それで首席合格の話なんだけど、実は九月は結構きついのよ。」


 入講試験は七月八月以外毎月あるから、年に十人首席がいる事になる。

 スルターグナは、取りやすい月に取るべきだと主張した。


「施薬院学問所からは毎月退所する人がいて、毎月入講する人がいるわ。

 でも知っている通り夏に退所する人が多い。

 そして夏に入講試験は無いから入講枠も九月が一番多くなる。

 入講希望者も九月が一番多い」


 夏は旅に最適の季節だ。

 留学生が一時帰郷するのも、退所した留学生が帰るのも、新規留学生がやってくるのも夏が多い。

 カゲシンの学生が地方に遠征するのもだいたい夏だ。

 学生が少ないから、夏場は講義も試験も間引きされる。

 入講試験も行われない。


「学生が多いのなら九月の首席が一番重視されるのではないの?」


「その通りだけど、そんなでもないのよね。大して変わんない」


 スルターグナは頭の上の毛をひょこひょこさせながら答える。


「で、九月だけど留学生が大量に来るのよ。

 カゲシン内部の受験生なら学力は大体わかるでしょ。

 でも地方から推薦状を持って受験する学生は、全く未知。

 数人ならいいけど、九月は留学生が大量なのよ」


 つまり十月に試験を伸ばした方が首席を取りやすい。

 更に、一回目の試験で首席合格が最善という。

 試験に落ちた実績は無い方が良いらしい。

 そんなことで、私は九月の入講試験を受けず、十月に延期することにした。

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